都道府県別、ハローワークの役割の変化―統計から考える公共職業紹介の再設計④

主任研究員 古屋 星斗

2026年08月04日

ここまで、近年のハローワークの役割の変化を分析してきた。紹介件数・就職件数が長期的に減少し企業に人材を紹介する機能が弱まっていること、その紹介も事務職に偏在しており現場職ではほとんどマッチングできていないこと()、60歳以上が新規求職申込の3割を超え“シニア層”がもはや特別な支援対象ではなく中心的な利用者になりつつあること()、なかでもシニア女性の利用者が急速に増加していること()、等を論じた。
以上のような検証はハローワークの全国統計(厚生労働省,一般職業紹介状況)を用いて分析してきたが、本稿では、ハローワークも含めた求職者の入職経路別統計(厚生労働省,雇用動向調査)、なかでも都道府県別の統計を用いて、ハローワークの役割を俯瞰し地域別の違いを踏まえて検証する。
結論から言えば、近年のハローワーク利用には大きな地域差があり、おおむね地方部ほど利用率が高く大都市部で低い傾向が見られる。ハローワークに求められる役割における地域差が拡大している可能性が示唆される。

入職経路としてのハローワークの縮小

まず、入職者全体の入職経路について全国の数値で推移を確認する(図表1)。入職者のうちハローワーク計(職業安定所+ハローワークインターネットサービス)の割合は2012年、2013年には24%を超えていたが、徐々に低下しており、2024年には16.4%と中長期的に低下傾向を辿っている。
一方で、「民営職業安定所」は2012年2.6%だったのが2024年には7.6%となっている。また、「その他」も増加傾向にある。「広告」「学校(※1)」「縁故」などは横ばいである。
また、図表2には転職入職者を対象として経路の推移を示した。こちらもおおむね全体と同様の傾向を示していると言え、ハローワーク計は26.5%(2012年)から18.2%(2024年)へ縮小している。

図表1 入職経路別入職者数(計)(※2)図表1 入職経路別入職者数(計)
出典:厚生労働省,雇用動向調査

図表2 入職経路別入職者数(転職入職者)図表2 入職経路別入職者数(転職入職者)
出典:厚生労働省,雇用動向調査

ちなみに、図表1・2では「ハローワーク計」として「職業安定所」と「ハローワークインターネットサービス」を合計しているが、図表3では、この2つの入職経路それぞれの割合の推移を集計した。重要な点として、ハローワークインターネットサービスは2012年以降、おおむね横ばい(3-4%程度)であり、近年の減少分のほとんどが職業安定所による入職の減少分であるということである。2012年に23.0%であったものが、2024年には14.5%となっている。

図表3 入職経路別入職者(ハローワーク関係)(転職入職者)図表3 入職経路別入職者(ハローワーク関係)(転職入職者)

出典:厚生労働省,雇用動向調査

なお、ハローワークで次の勤め先が決まった求職者が、既就業者(転職入職者(※3))なのか、あるいは未就業者(新規学卒者以外)(※4)、未就業者(新規学卒者)なのか、状況別の推移を分析した(図表4)。
2024年で既就業者(転職入職者)は73.1%、未就業者(新規学卒者以外)16.1%、未就業者(新規学卒者)10.7%であり、既就業者が7割以上となっている。経年で見ても、大きな傾向は変わらないが、既就業者の割合が増加傾向にあり、直近2024年が2012年以降の最高値となっている。就業している者の転職先や失業後の就職先探しがハローワークの主たる業務であることは変わらず、未就業者向けや新規学卒者向けと比べるとその割合は大きくなっている。

図表4 ハローワーク経由で入職した人の状況別推移図表4 ハローワーク経由で入職した人の状況別推移
出典:厚生労働省,雇用動向調査

都道府県別のハローワーク利用率

この点について、都道府県別に転職時の経路としてハローワークが利用されている割合(ハローワーク利用率、2024年)を図表5に示す。全国平均は図表2のとおり18.2%であったが、都道府県別に見ると非常に大きな差異が存在していることがわかる。
突出して高いのは岩手県であり65.3%、次いで福島県49.3%、青森県47.2%、長崎県46.6%、宮崎県41.5%となる。低いのは、東京都8.9%、京都府9.8%、福岡県10.1%、鹿児島県10.7%、埼玉県11.4%であった。

おおむねの傾向として、人口規模が小さい地域のハローワーク利用率が高い。これは就業者数及び求職者数が多い地域は労働市場の規模が大きく、民間人材会社が進出するインセンティブが高いことが一因となっていると考えられる。いずれにせよ、ハローワーク利用率の高い県は4割から6割以上の水準にある一方で、低い都府県は1割前後の水準にあり、その差異は著しく大きい。

図表5 都道府県別ハローワーク利用率(転職求職者、2024年)(※5)図表5 都道府県別ハローワーク利用率(転職求職者、2024年)
出典:厚生労働省,雇用動向調査

また、民間人材会社とハローワーク利用の関係について図表6に整理した。転職入職者の入職経路について横軸が民間人材会社の利用率、縦軸がハローワークの利用率である。右下がりの近似曲線付近に多くのプロットが位置しており、民間人材会社の存在感が低い地域で、ハローワークが入職経路として大きな役割を担う傾向が見られることがわかる。やや特異な位置を占めるのが岩手県であり、ハローワーク利用率が近似曲線上より著しく上方にあるが、大きな傾向としては図表6の右下(ハローワーク利用率が低く、民間利用率が高い)に政令市等を擁する大都市部がプロットされ、左上(ハローワーク利用率が高く、民間利用率が低い)に地方県がプロットされている。

図表6 民間人材会社とハローワーク利用率(都道府県別)(転職求職者、2024年)
横軸:民間利用率 縦軸:ハローワーク利用率
図表6 民間人材会社とハローワーク利用率(都道府県別)(転職求職者、2024年)

ハローワーク利用の変化

さらに、都道府県別にこのハローワーク利用率がどのように変化したのかを見よう(図表7)。最も上昇したのは福島県で+15.1%pt、次いで山口県+11.4%pt、岩手県+8.3%ptである。減少幅が大きいのは岐阜県-26.1%pt、愛媛県-25.6%pt、福井県-25.2%ptとなっている。全国平均は-8.3%ptであり、全体として減少傾向の都道府県が多くなっているが状況は様々であることが理解できるだろう。
また、この都道府県別のハローワーク利用率の前後の状況を図表8に示した。減少幅の大きい県(岐阜、愛媛、福井、秋田、石川など)の変化の大きさがわかるだろう。

図表7 ハローワーク利用率の変化(%pt)(※6)(2012年→2024年)(転職入職者)図表7 ハローワーク利用率の変化(%pt) (※7)(2012年→2024年)(転職入職者)

出典:厚生労働省,雇用動向調査

図表8 ハローワーク利用率(2012年、2024年)(転職入職者)図表8 ハローワーク利用率(2012年、2024年)(転職入職者)

出典:厚生労働省,雇用動向調査

ここまで「利用率」(全体の転職入職者に占めるハローワーク利用者の割合)を見てきた。ただ、転職入職者の数自体の増減が都道府県別に異なるため、別の視点として入職経路がハローワークだった転職入職者の数、すなわち「利用件数」ベースでも分析する(※7)。
利用件数ベースの変化率を見るとまた異なる姿が見られる(図表9)。
全国では-18.9%となっているため多くの都道府県で件数も減少傾向だが、和歌山県では倍増(+106.2%)しているほか、徳島県+89.1%、山梨県+67.3%、長野県+62.6%、千葉県+59.1%など大きく増加している県も複数ある。

図表9 ハローワーク利用件数の変化(※8)(2012年→2024年)(転職入職者)図表9 ハローワーク利用件数の変化(※9)(2012年→2024年)(転職入職者)

出典:厚生労働省,雇用動向調査

この点を踏まえ、ハローワーク利用率を横軸に、ハローワーク利用件数を縦軸にプロットしたのが図表10である。この散布図からは大きく4つに、都道府県別のハローワークの変化状況が分かれていることがわかる。

赤枠のグループ:利用件数と利用率の両方が減少した地域。全国計も含まれることからわかるとおり、都市部から地方部まで多くの道府県がこのカテゴリに入っている(目安として利用率がマイナス5%pt以下(※9)、利用件数がマイナスの地域。代表的な地域として石川県、滋賀県、福井県、鹿児島県など)

緑枠のグループ:利用件数はマイナスだが、利用率はそれほど減っていない・増加した地域。転職入職者自体が減少しており、地域におけるハローワークの存在感はそれほど変化していないと考えられる。(山口県、奈良県、三重県、富山県)

黄枠のグループ:利用件数と利用率の両方が増加した地域。転職入職者へのハローワークの対応が進む地域と考えられる。(福島県、長野県、沖縄県)

青枠のグループ:利用率はマイナスだが、利用件数が増加した地域。確かに“シェア”は低下しているが利用件数は増加しており、ハローワーク窓口の業務量という点では純増であるため注意が必要な地域と言える。(徳島県、東京都、山梨県、千葉県など)
なお、2012年から2024年で両指標にほとんど変化がなかった地域もあった(群馬県、宮城県、山形県、神奈川県など)。

図表10 ハローワーク利用件数と利用率の変化(転職入職者)(2012年→2024年)
軸:ハローワーク利用率の変化量 縦軸:ハローワーク利用件数の変化率
図表10 ハローワーク利用件数と利用率の変化(転職入職者)(2012年→2024年)
出典:厚生労働省,雇用動向調査より筆者分析

図表10の分析からは地域におけるハローワーク機能の近年の変化に、大きな差異があることが示唆されている。そこには都市部だから地方部だからといった図式以上に、産業構造の違いによる企業ニーズのあり方、教育機関の状況、就業希望者の特性など様々な要因が絡んでいると考えられる。このため、どのグループがよく、どのグループが悪い、といったものではない。
ただし重要なのは、地域ごとのハローワークの変化が全く異なっているという事実だ。ハローワークで転職をする人が全体としては減少傾向にあるのは確かだが、その人数が純増している地域もある。民間サービスによって転職をする人も増えているが、ハローワークを使う人も増えているという地域もある。

前稿までで見てきたとおり、ハローワークを使う人のニーズが近年大きく変化している。そしてその変化は地域によってさらに大きなものとなっている可能性が高い。日本の労働市場が人口動態の影響を受け大きな変化を見せるなかで、地域ごとに全く異なるニーズに応える対応をしようという試行錯誤が始まっている。地方公共団体が自ら無料職業紹介事業を行う地方版ハローワークは2025年時点で992か所存在するとされ(※10)、島根県では県内基礎自治体全てに設置、鹿児島県でも65.9%の自治体に、大阪府でも61.4%に設置されているとされる。また、一部の地方版ハローワークでは、地域の求職者の具体的な要望に合わせて求人内容自体を変えるよう求人側と交渉し採用条件を変えるなどのきめ細かい対応により就職率も国のハローワークよりも高い等の成果をあげていることが、指摘されている(日本経済新聞,2025年8月23日朝刊2面)。
もちろん、筆者が各地で実情を聴取する限り、全ての地方版ハローワークが同様の結果を出しているとまで言うことは難しい。しかし、いくつかの地方版ハローワークにおける具体的な支援事例は、地域の実態に即したきめ細かい対応が、就職・採用に結びつける上で極めて重要な要件となっていることを示唆している。

本稿では入職経路統計を用いて、ハローワークの機能を俯瞰し、目下地域別に見られる大きな差異を指摘した。従来型のフルタイムワーカーとパートタイマーが中心で、相対的に就労ニーズのばらつきが少ない労働供給構造から、働く時間、場所、仕事内容、雇用期間などに対する希望が多様化し、育児、介護、健康、学業、副業など、生活上の条件と組み合わせて仕事を探す人の存在感も増している。労働者である以上に生活者でもある働き手が仕事探しをするという、個別性の高いニーズを持つ求職者の存在感が増す労働供給構造への移行によって、ハローワークの全国一律サービスとしての強みが、時として弱みに転じているのかもしれない。国の機関としてのハローワークは、情報提供・訓練・斡旋・費用等支援の4機能を統合的に有する唯一の職業紹介機関である。決してなくならないこの強みを活かしつつ、自治体、地方版ハローワーク等とも手を取り合って地域の求職者・求人企業双方を支えていく、そんなプラットフォームとなることを求められている。

(※1)新規学卒者の入職経路として30.6%を占めている(2024年)。転職入職者や未就業者(新規学卒者除く)では1%程度である
(※2)なお、一般職業紹介状況においては、求職申込書における「性別」欄の記載が任意となったことに伴い、男女別の合計は男女計の値と必ずしも一致しない
(※3)当該統計上の定義は、入職者のうち、入職前1年間に就業経験のある者
(※4)当該統計上の定義は、入職者のうち、入職前1年間に就業経験のない者
(※5)職業安定所+ハローワークインターネットサービス

(※6)図表5の2024年の値から同2012年の値を引いたもの。岩手県や福島県等について、2012年は東日本大震災からの復興の影響がある点には留意が必要
(※7)転職入職者が減っている地域では利用率が高まっても利用件数は増えない、逆に転職入職者が増えた地域では利用率が下がっても利用件数は減らない等が想定されるため
(※8)図表7の2024年の値から2012年の値を引いたもの
(※9)全国平均がマイナス8.3%ptであるところから暫定的に設定
(※10)日本経済新聞,2025年8月23日朝刊2面, 地方版ハローワーク浸透 全国990カ所超、島根は全市町村 希望聞き取り雇用側とも交渉(データで読む地域再生)
地方版ハローワークの個所数は2025年5月時点のものとされている

古屋 星斗

2011年一橋大学大学院 社会学研究科総合社会科学専攻修了。同年、経済産業省に入省。産業人材政策、福島の復興・避難者の生活支援、政府成長戦略策定に携わる。2017年より現職。労働市場分析、現場職、若年人材研究を専門とする、ひととしごとの研究者。著書に「ゆるい職場-若者の不安の知られざる理由」(中央公論新社)、「なぜ『若手を育てる』のは今、こんなに難しいのか」(日本経済新聞出版)、「『働き手不足1100万人』の衝撃」(プレジデント社)など。

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