高校卒就職の長期推移②―県外就職

主任研究員 古屋 星斗

2026年01月09日

県外就職率が大学卒と比べて著しく低い

高校卒の就職市場の推移を整理する。高校卒就職の特徴は通っていた学校の地域の中で就職していくことである。統計としては学校基本調査に「県外就職者数」という形で統計がある(※1)。これを見ていこう。

統計が残っている1963年以降の県外就職者割合はおおむね20%前後~30%前後で推移してきた(図表1)。最も高かったのは1972年の32.5%であり、69.8万人の就職者に対して22.7万人が県外就職をしていた。その後徐々に低下傾向となり、2000年以降はおおむね20%弱の水準を推移しており、直近の2024年は18.4%である。これは81.6%の高校卒就職者は高校が所在する都道府県内の企業に入職したということを意味する。なお、大学卒の県内就職率に関しては公的統計が存在しないが、民間調査(※2)によれば、2024年卒者について、北海道や首都圏、東海、九州で低く3割前後、北関東、近畿(京阪神除く)、四国では高く7~8割程度の県外就職率となっている(※3)。大学卒と高校卒で大きな差がある部分であることは間違いないだろう。

図表1 高校卒就職者の県外就職率推移(計)(1963年~2024年卒)高校卒就職者の県外就職率推移(計)(1963年~2024年卒)出典:文部科学省,学校基本調査(高等学校 全日制・定時制)

男性は県外、女性は県内という傾向

図表2は、高校卒県外就職率を 性別で整理したものだ。この割合について、一貫して男性が高いことがわかる。男性は1965年の37.5%をピークとして2024年に20.5%である。女性は1978年の24.3%をピークとして2024年に14.6%である。この傾向の背景には、男性高校生が製造業への入職者が多いが、製造業のほうがサービス業よりも規模が大きい会社が多く、都市部に立地する会社であることが多いこと等が影響していると考えられる。女性高校生は事務系職への入職者が多いが、地元の比較的小規模な企業の事務系職への入職が多いということが指摘できる(高校就職者の性別の入職職種についてはこちらのレポートも参照のこと。

もちろん、男性のほうが県外就職率は高いが、それでも多数派は一貫して県内就職であることは押さえる必要がある。

図表2 高校卒就職者の県外就職率推移(性別)(1965年~2024年卒)(※4)高校卒就職者の県外就職率推移(性別)(1965年~2024年卒)出典:文部科学省,学校基本調査(高等学校 全日制・定時制)

大きく変わった社会的役割

都道府県別で高校卒県外就職率を整理した(図表3)。2024年では最も高いのは青森県の41.1%、次いで鹿児島県の37.8%。最も低いのは愛知県の4.9%、次いで富山県の6.1%である。都道府県別でかなり差異があることがわかるだろう。10倍近い差が青森県と愛知県の間にあることがわかる。これは製造業のGDP比率との関係が強いと考えられ、製造業が強い都道府県ほど地域内に就職する傾向が強いと考えられる。

同様に過去との比較のため1965年の都道府県別県外就職率を図表3下に掲示した。現在とはかなり状況が異なっていたことがわかる。地方部の県外就職率の水準が高く、他方で東京をはじめとする大都市を抱える都道府県の数値が極めて低い。例を挙げれば、鹿児島県68.6%、島根県67.2%、奈良県63.3%などを始めとして県外就職率が50%を超えている県が8つ存在した。低いのは、大阪府2.3%、東京都2.9%、愛知県5.3%となっており、高低のギャップが著しい。

これは当時の社会現象となっていた出来事を象徴している。「集団就職」である。集団就職は一般的には地方部の中学を卒業した若者が大都市部に立地しはじめていた大規模企業に就職していくことを指すことが多いが、高校卒者においても同様の傾向が起こっていた。 人口が多い大都市部で著しく県外就職率が低かったために平均値では目立たないが、かつては高校卒就職は地域外に若い働き手を送り出す機能を果たしていたのである。

「集団就職」 の時代から数十年がたち、高校卒就職も大きく変わった。高校卒就職については特殊なプロセス が数十年前から変わらず残っている(※5)が、こうした状況の変化を認識しつつ、全国的に共通性の高いルールで良いのか(※6)など、地域差(加えて普通科と工業科等の就職先の差など)を踏まえた議論が必要だろう。 

図表3 職種別就職者割合(抜粋)(2024年卒/1965年卒)職種別就職者割合(抜粋)(2024年卒/1965年卒)出典:文部科学省,学校基本調査(高等学校 全日制・定時制)

(※1)県外就職者という名称であるが、無論、「県」だけでなく「都道府県」それぞれについて学校が所在する都道府県内の企業に就職した割合である
(※2)就職みらい研究所,2024,大学生の地域間異動に関するレポート2024
(※3)なお当該調査はサンプルサイズや母集団との差異の問題等があり、あくまで参考程度として見る必要がある
(※6)1969年から1977年は性別の統計が確認できない
(※4)一人一社制、学校推薦、指定校推薦など
(※5)例えば求人票解禁、面接解禁日などのスケジュールは全国統一のものとなっている

古屋 星斗

2011年一橋大学大学院 社会学研究科総合社会科学専攻修了。同年、経済産業省に入省。産業人材政策、投資ファンド創設、福島の復興・避難者の生活支援、政府成長戦略策定に携わる。
2017年より現職。労働市場について分析するとともに、若年人材研究を専門とし、次世代社会のキャリア形成を研究する。一般社団法人スクール・トゥ・ワーク代表理事。