女性リーダーからの手紙対話できる上司が女性の活躍を後押しする

人事部御中

育児中の女性が働きやすいのは、どのような環境か。私の経験がお役に立てばとお便りしました。
前職で別の会社に勤務していた私がアビームに転職したきっかけは、長女の出産でした。出産前は入社時から希望していた海外営業を担当していましたが、育児休業からの復帰時に、海外とはかかわりのない通信販売部門に異動になったのです。「育児中だから、あまり忙しくない部署に」との会社の心遣いでしたが、「子どもを預けて働く限りは、やりたい仕事を責任を持ってしたい」と思い、長女が1歳の時に転職活動をしました。
アビームに入社後は、自分が手を挙げれば、機会は与えられました。そのとき、子どもがいることや性別による差を感じたことはありません。もちろん環境や状況には配慮してもらえますが、機会は同等でした。長女が2歳になったころから海外出張もしましたし、入社8年目の長男出産後は、上司の誘いでグローバルアウトソーシング事業の立ち上げに参画。日本にいながら海外の拠点と連携して進めていく業務を担当し、長期間家庭を留守にすることなく海外の仕事に携われるようになりました。昇進にトライする機会も性別にかかわらず与えられ、現在は執行役員として約570名が所属する部門のリーダーを務めています。
私が思う存分仕事をしてこられたのは、家族の協力もありましたが、支援してくれる上司がいたからです。アビームには「人こそ財産」とする風土があり、私の上司たちには、部下としっかり対話し、一人ひとりが活躍できる働き方を一緒に考える姿勢がありました。これが当社で多くの女性がリーダーとして活躍している理由の1つでしょう。上司が部下の置かれた状況を理解しているので、それぞれに適切な仕事がアサインされ、育児など家庭の事情があっても、力を発揮しやすいのです。


結果的に、私を含め多くの社員がある程度自分の価値観に合った働き方ができているように思います。私自身は育児休業から復帰後に通常勤務に戻りましたが、時短勤務制度を利用している女性マネジャーも私の部門だけで何名もいますし、子どもが幼いうちは社内でコンサルタントを支援する残業の少ない業務を担当し、成長したらお客さまとかかわるプロジェクトに復帰するといった働き方をしている社員もいます。
当社が個々の社員の状況に柔軟に対応できているのは、評価や配置、人材育成、昇進に関して現場の上司にかなりの度合いで権限が与えられているからだということもお伝えしておきたいと思います。上司の持つ権限のあり方も、女性が活躍しやすい仕組みや環境を作るために議論されるべき重要な要因ではないでしょうか。
相応の実績や経験があり、意欲のある人には性別を問わず昇進の機会を与える。私はそんな環境を働きやすく感じています。ただ、多くの女性は男性に比べて管理職になることをためらう傾向があり、部下から「挑戦したい気持ちもあるが、自信がない」と悩みを打ち明けられることもあります。一方、昇進に意欲的だった人が状況の変化で昇進を希望しなくなることも少なくありません。個人の状況は変化しますので、部下とは対話しやすい関係を心がけ、継続的に話をするようにしてきました。先日は家庭の事情で3年ほど昇進を迷っていた女性の部下が「心を決めました」と言ってくれ、自分のことのように嬉しかったです。
昇進をためらう女性の多くは管理職になりたくないのではなく、"ちょっと"自信がないのです。信頼関係のある上司からの「大丈夫。やってみたらどう?」のひと言で一歩を踏み出せることも多いのではないでしょうか。また、直属の上司だけでなく他部署の上司がキャリアカウンセリングを担当したり、女性社員同士のネットワーキングの場があることも、女性には心強いものです。人事担当の皆さんや上司の方々には、そうした支援によって女性を勇気づけていただけたらと思います。

Text=泉彩子 Photo=刑部友康

岩井かおり氏
アビームコンサルティング執行役員 プリンシパル
Iwai Kaori 1992年、上智大学外国語学部英語学科卒業。食品メーカーを経て2000年にアビームコンサルティングに入社。2013年より現職。