なぜAIの影響を受けやすいホワイトカラーほど、生成AIを使うのか-AIによる代替から、人による「仕事の選び直し」へ-

大嶋寧子

2026年09月11日

(注)米国の104職業で働く1,500人を対象に、844の具体的なタスクについて、AIへの自動化希望や理由を尋ねた結果による。「AIエージェントにそのタスクを完全に処理してほしいか」という質問に、労働者が5段階評価で前向きな態度(3以上)を示した3,618件のタスクについて、該当する理由を示したもの。
(出所)Stanford University Social and Language Technologies Lab, “Future of Work with AI Agents: Auditing Automation and Augmentation Potential across the U.S. Workforce


生成AIに仕事を代替される。
そう聞いて、最も不安になりそうなのは誰だろうか。

文章を書く。情報を集める。分析する。資料にまとめる。プログラムを書く。
生成AIの影響を受けやすいとされるのは、こうした言語的、認知的な仕事を多く担うホワイトカラーである。

実際、OpenAIとペンシルベニア大学のチームの研究(Eloundou et al., 2024)は、米国の職業を構成する具体的なタスクを評価し、大規模言語モデル(LLM)によって作業時間を大幅に短縮できると考えられるタスクが、各職業にどの程度含まれるかを検討している。
その結果、文章作成やプログラミングの重要性が高い職業ほど、LLMの影響を受けやすいと指摘している。

一方、日本で実際にAIを使っているのはどのような人々なのだろうか。森川(2024)によれば、大卒・大学院卒など高学歴の労働者ほど仕事でAIを利用する傾向が強い。産業別には情報通信業、専門サービス業、金融・保険業など、高スキルのホワイトカラー労働者が多い産業でAI利用率が高い。

AIの影響を受けやすい仕事をする人と、実際にAIを使う人には、かなりの重なりがある。
このこと自体は不思議ではない。AIが得意なタスクを多く担っているほど、使う機会も多いからだ。

しかし、よく考えれば疑問も残る。なぜ、ホワイトカラーは自分の仕事を大きく変え、場合によっては代替するかもしれない技術を、より積極的に使うのだろうか。

働く人はAIに何を期待しているのか

興味深い示唆をくれるのが、AIとの協働のあり方を検討したスタンフォード大学デジタル経済研究所の研究である。この研究では、米国の104職業で働く1,500人を対象に、844の具体的なタスクについて、AIによる自動化の希望を尋ねている。「AIエージェントにそのタスクを完全に処理してほしいか」という質問に、労働者が前向きな態度(5段階評価で3以上)を示したのは、全タスクの46.1%であった。

さらにこの研究では、労働者が自動化を望んだ3,618のタスクについて、それぞれ理由を複数回答で尋ねている。その結果によると、最も多い回答は「自動化によって、より価値の高い仕事に使う時間を確保できる」で、約7割(69.4%)を占めた。

また、「このタスクは反復的、または退屈である」は46.6%、「このタスクを自動化すれば、仕事の質が向上する」は46.6%であった。

AIに任せたい仕事の内容を、別の角度から明らかにした研究もある。デヴィッド・グレーバーの「ブルシット・ジョブ論」を参照したGhia et al.(2026)は、202人の労働者による171の職場タスクの評価を分析した。その結果、労働者が意味を感じにくいタスクほど、AIに委ねたいという希望が強い傾向が見られた。

ここから浮かび上がるのは、働く人がAIに何でも良いから任せたいわけではない、ということである。むしろ、自分の仕事を構成するさまざまなタスクの中から、AIに任せたい仕事と、自分がより時間を使いたい仕事を選び分けようとしている可能性がある。

生成AIがどのように仕事を変えるのかに注目が集まる一方で、働く人の側もまた、AIを使うことで、何をAIに任せ、何に自分の時間を使うのかを選び直そうとしているのではないだろうか。

しかし、AIを入れただけでは仕事の構成は変わりにくい

ここに一つ難しい問題がある。AIによってタスクを効率化できても、生まれた時間を、自分がより価値を感じる仕事に振り向けられるとは限らないことである。

Dillon et al.(2025)は、生成AIの導入による影響を把握するために、66社、7,137人の知識労働者を対象に無作為化実験を行った。
6か月の追跡調査の結果、生成AIを実際に利用した人のメール時間は減り、勤務時間外の仕事も減少したという。一方、会議に費やす時間や仕事の量・構成には、明確な変化が確認されなかった。

つまり、AIによって個人で完結する仕事を効率化できても、会議など、周囲との調整を必要とする仕事には大きな変化が見られなかった。AIによって生まれた時間を新たな仕事に振り向けるには、個人によるAI活用だけでなく、仕事の進め方や役割分担を組織として見直すことが重要になると考えられる。

AI活用の先にある「仕事の選び直し」

企業の中には、「生成AIをどれだけ使っているか」「何時間削減できたか」を重要な指標とするところが増えている。

しかし本当に見るべきなのは、その先ではないだろうか。AIを使って生まれた時間は、何に使われているのか。働く人が考え、判断する時間は増えたのか。顧客とより向き合えるようになっているのか。新しいことを試せるようになっているのか。何より、「ここに時間を使って価値を出したい」と思える仕事は増えているのか。

本コラムで見てきた研究からは、ホワイトカラーがAIを使うとき、そこには、より価値を感じられる仕事をしたい、という動機が見え隠れする。
しかし同時に、AIを活用するだけでは、その思いが形になるとは限らないことも示唆されている。

だからこそ企業が見るべきなのは、AIをどの程度使用しているかだけではない。AIによって生まれた時間が何に使われ、仕事の中身がどう変わったのか。働く人が「ここに時間を使って価値を出したい」と思う仕事に、実際により多くの時間を使えるようになったのかに目を向ける必要があるのではないか。

一方、働く側においても、単にAIを使うのではなく、自分はどの仕事に価値を感じ、どこに時間を使いたいのかを考え、その配分を見直すために意識的にAIを使用することが、自らの仕事をより良いものに変えていく契機となりうる。

生成AIによって、どの仕事が人からAIへ移っていくのか。その議論はこれからも続くだろう。
しかし、仕事の未来を決めるのは、AIの能力だけではない。働く人は何をAIに任せ、何を自分が担いたいのか。企業は、そこで生まれた時間をどのような仕事へ振り向けるのかも、仕事の未来を大きく左右するはずだ。

生成AIが人の仕事をどう変えるのかだけでなく、企業と働く人がAIを使って仕事をどう変えていくのか。その「仕事の選び直し」に、企業と働く人が能動的に関わることが、生成AI時代にはますます重要になるのではないだろうか。

【参考文献】
Eloundou, T., Manning, S., Mishkin, P., & Rock, D. (2024) “GPTs are GPTs: An Early Look at the Labor Market Impact Potential of Large Language Models,” Science, 384(6702), 1306-1308.
森川正之(2024)「日本企業・労働者のAI利用と生産性」RIETI Discussion Paper Series 24-J-011、経済産業研究所。
Stanford University Social and Language Technologies Lab, “Future of Work with AI Agents: Auditing Automation and Augmentation Potential across the U.S. Workforce” 
Ghia, D., Ranjit, J., Cerquitelli, T., & Quercia, D. (2026) “Will AI Agents Free Us From Meaningless Work? A Human-Centered Analysis,” (CHIWORK Adjunct ’26)
Dillon, E. W., Jaffe, S., Immorlica, N., & Stanton, C. T. (2025) “Shifting Work Patterns with Generative AI,” NBER Working Paper No. 33795. (改訂版はAmerican Economic Review: Insights に掲載予定)

大嶋 寧子

東京大学大学院農学生命科学研究科修了後、民間シンクタンク(雇用政策・家族政策等の調査研究)、外務省経済局等(OECDに関わる政策調整等)を経て現職。専門は経営学(人的資源管理論、組織行動論)、関心領域は多様な制約のある人材のマネジメント、デジタル時代のスキル形成、働く人の創造性を引き出すリーダーシップ等。東京大学大学院経済学研究科博士後期課程在学中。