Global View From Work Tech World第8回 激化するプラットフォーム間の競争 ギグワーカーの労働環境改善に貢献

ライドシェアの台頭とともに、欧米ではドライバーの権利保護が大きな社会問題となりました。カリフォルニアではライドシェアサービスのドライバーの雇用形態を巡って訴訟も提起されましたが、最終的には個人事業主だと決着しています。ギグワーカーの働き方には依然として課題はあるものの、ここ数年、各社が競うようにドライバーの待遇改善に取り組んでいます。

ライドシェアサービス市場の競争は激化しており、アメリカではUberとLyft、東南アジアではGrabとGojekの二強が熾烈な競争を繰り広げています。運転手・乗客ともに複数のプラットフォームを利用するため乗り換えも容易です。こうした構造を、複数のネットワークに接続する状態を指すコンピュータ用語から、マルチホーミングと呼びます。プラットフォーム運営者にとって、優良な運転手・乗客に選ばれ続けることが競争力に直結します。

副業ワーカーの多いライドシェアでは、ドライバーに一律のノルマを課すのではなく、本業や家庭と両立できる範囲で収入を最大化できるようサポートする運営者も出てきました。

Grabでは、ドライバーが好む送迎場所・時間帯を学習するアルゴリズムを開発し、マッチング精度の向上を目指しています。また収入アップに向けて、車内ディスプレイ広告の設置やサンプリング、車体ラッピング広告などのプランも用意しています。

とりわけ興味深いのは、ドライバーへの小口融資制度です。ドライバーは稼働実績だけでなく、携帯電話のGPSと加速度センサーを通じて、信号や法定速度を遵守しているかどうか、走行状況が定量的に評価されます。乗客からのレビューもすべて可視化され、こうしたデータを活用することで、独自の信用スコアを算出できます。

信用スコアの高いドライバーは、低金利で融資を受けられます。調達した資金で高級車・大型車に買い替えることで、乗車料金が上がり、収入アップにつながります。保険料も安くなるなど、さまざまな優遇を受けられます。プラットフォーム運営者は優良ドライバーに長期的に選ばれ続けることができ、Win-Winの関係となります。

年齢や学歴、所属や国籍さえも関係なく、信用スコアを積み上げることで、一人ひとりの可能性を広げられる。AIの進化は、そんな社会が到来する可能性を秘めています。

w184_tech_main.jpgギグワーカーの代表的な職種であるフードデリバリーで働く人たちも各地で待遇改善を求めている。2024年2月にはロンドンでドライバーたちが大規模なストライキを行った。
Photo=AFP=時事

Text=渡辺裕子

尾原和啓氏
Obara Kazuhiro
IT批評家。1970年生まれ。京都大学大学院工学研究科応用人工知能論講座修了。マッキンゼー、NTTドコモ、リクルート、グーグル、楽天などを経て現職。著書に『ザ・プラットフォーム』『アフターデジタル(共著)』ほか。

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