5 長期雇用の慣習は薄れつつある

坂本 貴志

2025年04月15日

日本型雇用と称される、日本ならではの雇用慣行。過去、年功賃金や終身雇用など日本ならではといわれる仕組みが正規雇用者を中心とした労働者の雇用の安定につながり、また企業側としても安定した人員確保を可能にした部分もあった。しかし、低迷する経済と歩調を合わせる形で日本型雇用は近年批判が行われてきた。こうしたなか、日本の雇用は変化しているのかあるいはそうではないのか。本シリーズでは、日本の労働環境が今どのように変化をしているのか確認していく。

日本型雇用と称される、日本ならではの雇用慣行。過去、年功賃金や終身雇用など日本ならではといわれる仕組みが正規雇用者を中心とした労働者の雇用の安定につながり、また企業側としても安定した人員確保を可能にした部分もあった。しかし、低迷する経済と歩調を合わせる形で日本型雇用は近年批判が行われてきた。こうしたなか、日本の雇用は変化しているのかあるいはそうではないのか。本シリーズでは、日本の労働環境が今どのように変化をしているのか確認していく。

終身雇用の変化を確認するために、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」から勤続年数の推移を取ったものが図表1である。これをみると、勤続年数は長期的に短くなってきている様子がうかがえる。

例えば30代後半の勤続年数は2000年の11.5年から2010年に10.5年、2023年に9.6年と緩やかな減少傾向にある。40代後半も2000年の17.5年から足元では14.9年まで減少している。男性と女性を分けたうえで時系列で比較をしても、男性も女性もいずれも勤続年数は減少傾向にある。このようにしてみると、一つの会社で長く働き続ける終身雇用の慣行は少しずつ変わってきていると考えることができるだろう。

一方、先述のように総務省「労働力調査」や厚生労働省「雇用動向調査」から転職率や離職率の動向を確認すれば、必ずしも離転職が大きく増えている様子は確認できないが、転職市場の状況は比較的安定しているにもかかわらず、勤続年数が明確に減少傾向にあるのはなぜだろうか。これはもしかすると、過去は一部の人が短期間で頻繁に転職していたものが、現在では多くの人が少数回転職するなど転職行動が変わっているのかもしれない。

図表1 勤続年数の推移図表1 勤続年数の推移出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」

坂本 貴志

一橋大学国際公共政策大学院公共経済専攻修了後、厚生労働省入省。社会保障制度の企画立案業務などに従事した後、内閣府にて官庁エコノミストとして「月例経済報告」の作成や「経済財政白書」の執筆に取り組む。三菱総合研究所にて海外経済担当のエコノミストを務めた後、2017年10月よりリクルートワークス研究所に参画。