統計が物申す外国人労働者の流入が急減

「出入国管理統計」

法務省が地方出入国在留管理局等で取り扱った入国審査、在留資格審査などに関する統計報告を集計したもの。日本全国の港や空港における入国者数や出国者数を公表している。

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近年、日本国内で働く外国人の数が増えている。事業主による届出をもとに厚生労働省がまとめている「外国人雇用状況」によると、2019年10月末における外国人労働者数は166万人となっている。2009年10月末にその数は56万人であったことから、この10年間で外国人労働者数は3倍にも増えたことになる。
しかし、最近の状況をみるとその光景は一変している。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、2020年の2月、3月に出国した外国人は合計で175万人にも上った。入国した外国人は137万人であったことから、差し引き38万人が日本から出国している。
さらに足元の状況をみると、5月の外国人の入国者の総計は4485人、前年比では99.8%減と、外国人の流入はほぼ完全に止まっている。入国する外国人のおよそ98%は旅行などの短期滞在であるが、一定数は日本で労働者として雇用されている。外国人の入国者数が減ることによって生じる最も大きな影響は観光産業などにおけるサービス需要の減少に違いないが、今後、外国人を多く雇用してきた産業を中心に労働供給の減少という形での影響も生じ得る。
業種別に外国人労働者の所在をみると、その多くは製造業で働いている。また、卸・小売業、飲食宿泊業なども外国人を多く雇用する産業だ。このうちの多くの労働者が、工場や店舗で働く現場労働者とみられる。
現在は足元の経済活動の低迷に伴い失業者数の動向が注目されているが、工場の稼働や店舗の営業が完全に復旧すれば、企業は労働者をどう確保するかという課題に再び直面する。労働を目的に入国する人のほか留学生の流入も減っており、企業は正規・非正規を問わず外国人労働者を採用することが困難になるだろう。
これまで安価な労働力としての外国人労働者の活用が、賃金の上昇圧力を抑制し、新しい技術の導入によって業務の効率化を図ろうとする機運を削いできた側面もあった。いわゆるコロナショックで外国人労働者の流入が長期にわたって止まれば、外国人労働者に頼ってきた業種業態は、RPAやAIの導入といった抜本的な業務改革が必要になるだろう。

Text=坂本貴志