統計が物申す雇用も含め、景況感は過去最悪に

「景気ウォッチャー調査」

景気動向を把握するため、内閣府が2000年1月から行っている調査。家計の動向、企業の動向、雇用など経済の動向など、地域の動向を観察できる立場にある職種から選定した2050人に、景気を「良い」から「悪い」の5段階で評価してもらい、景気判断のDIを作成している。

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人々は景気をどのように見ているのか。景況感を探る調査にはいくつかあるが、そのなかで最も速報性が高い調査が景気ウォッチャー調査だ。
2000年以降の景気の大きな谷はリーマンショックが発生した2008年12月と東日本大震災後の2011年4月となる。ところが、新型コロナウイルスの流行拡大により、景気の現状判断DIは2020年の4月に7.9ポイントと調査開始以来で最低の水準となった。また、雇用関連DIも6.3ポイントと最低値を更新している。
この経済活動の極端な低迷には、どのような特徴があるのか。景気ウォッチャー調査では、調査回答者が景気判断の理由を回答している。その内容から見えてくることとは、まず、ホテル、飲食、観光業など特定の業種でその影響を強く感じていることだ。雇用の観点から見れば、企業説明会の中止など採用活動が物理的に制限され、採用時期が後ろ倒しされるといった特殊な事態が発生していることがわかる。 こうした経済活動の減退の帰結として、景気後退局面一般に見られる現象も既に顕在化してきている。すなわち、求人の減少、契約社員や派遣社員の雇い止め、採用内定の取り消しなど、雇用調整の兆しが一部に見られるのである。
今回の新型コロナウイルスによる経済活動の停滞は、リーマンショックを上回る規模の停滞となることが予想される。DIの動向を踏まえれば、これから企業人事は雇用をどの程度調整するべきか厳しい経営判断を強いられることになるだろう。
ただ、近年の景気後退局面との決定的な違いを一点あげるとすれば、今回の景気後退は構造的な人手不足感のなかで起きているということだ。厳しい経済環境下では採用が絞られるため、優秀な人材であっても採用の網の目からこぼれてしまうことがある。中長期的な趨勢として人手不足が避けられないなか、せっかくの人材の獲得機会を逃してしまう弊害に、より意識を強めるべきだ。
このような時だからこそ、自社が必要とする人材を求め続ける一貫した戦略が、持続可能な経営のために必要なのではないか。

Text=坂本貴志