統計が物申す復権する社宅

「住宅・土地統計調査」

統計法に基づく基幹統計調査で、1948年から5年ごとに行われており、2018年の調査で15回目になる。全国約370万世帯を対象とした大規模調査で、住宅の状況や土地の利用状況など国民の住環境の実態を明らかにすることを目的としている。

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近年、特に若手従業員を対象に、社宅や寮を改めて整備しているという話を聞くことがある。このような動きは統計にも表れているのだろうか。
住宅・土地統計調査では、世帯が住む住居について、持ち家か借家かなどその種類を尋ねている。その項目の1つには「給与住宅」がある。給与住宅とは、会社が所有・管理したうえで、給与の一部として居住させている住宅などを指しており、これがいわゆる社宅・寮に該当する。
給与住宅に住む人の割合の推移を見てみよう。すると、1993年(5.0%)にピークをつけた後、直近の2018年(2.0%)まで減り続けていることがわかる。バブル経済が終焉を迎えた1990年代以降、社宅は無駄なコストとみなされ、その多くが整理の対象となった。
しかし、若年世帯の社宅については、この数年間で、傾向に変化が生じている。世帯主の年齢が34歳以下の世帯に限定すると、給与住宅に住む人の割合は、2013年(6.8%)に比べて2018年(7.5%)は上昇しているのである。ここに、若手の従業員向けの社宅を再整備する企業が増えている可能性を見てとれる。
この動きの理由としては、社宅には企業と従業員両者にとって税制上の利点があること、福利厚生の充実による採用力やリテンション力の強化などが考えられる。
もう1つ、多くの企業で共通する社宅を保有する目的は、同僚間のコミュニケーションを増やすことだろう。若手のうちに社宅で共同生活を営むことで、仲間意識の醸成などを狙う動きもあるはずだ。
過去、同僚とのつながりの強さが、日本企業の強みの源泉であるととらえられた時代があった。しかし、現代においては、中途採用が一般化することで同期のつながりは希薄化し、働き方の見直しによって同じオフィスで働く時間も縮減されている。このようななか、若いころに同じ釜の飯を食べた同僚がいるということは、社員の結束を強め、企業の足腰を強くする効率的な手段となり得る。
従業員のつながりを深めるための施策について、多くの企業が知恵を絞り始めているのかもしれない。

Text=坂本貴志