ここは集中特区光の演出で自席を個室に

長いフライトで、消灯後に読書灯だけで仕事をしていると、妙に捗(はかど)る。そんな経験はないだろうか。隣の人とは肘が触れ合うほどの距離。それでも自分の視界に入るのは、明るく照らされた目の前の仕事だけ。人の存在が気にならず、集中できる。
この環境は、オフィスでも実現可能だ。その方法がタスク・アンビエント照明である。室内全体は間接照明などで控えめな照度に設定する一方、作業スペースはタスクに必要な高い照度を確保する。照度の差が"自分"と"その他"の空間を分断し、光によるパーティションで囲まれたような環境をつくる。今回訪問したニッセイ基礎研究所は、省エネのためにLEDを光源とするタスク・アンビエント照明を導入したが、社員のほとんどが研究員という仕事の性質上、「集中」の効果にも注目している。オフィス全体がほの暗いなかで、好みの明るさに調光可能なタスクライトが手元を照らす。仕事に没頭できる"個室感"をその光がサポートする。
この事例から学べることは2つ。生産性向上のためには照明にも配慮すべき、ということ。そして、オフィスは隅々まで明るく、という常識も、ほかの常識と同じく見直せる可能性があるということだ。

Text=湊美和Photo=峯本宗介

ニッセイ基礎研究所
■事業内容/経済・金融・年金・不動産・社会保障・文化政策などの調査研究■本社所在地/東京都千代田区■従業員数/80人