人事プロフェッショナルへの道活き活きとした組織を生み出す人事とは

有識者、実務家による、人事プロフェッショナルを目指すすべての人向けの特別講義。Lesson2では、組織活性化において人事が果たす役割について学ぶ。

組織活性化を一般的に定義すれば、「共通の目標を達成するために、社員一人ひとりが主体的・自発的に他者との協働を進められる状態を生み出し、維持すること」となるだろう。ただし、個々の企業における「活性化した状態」は、それぞれに定義することができる。
「だからこそ、わが社における活性化した状態とはどんな状態なのか、人事はまず、経営陣と共通認識を形成することが大切です」と話すのは、活力ある組織づくりに成功しているサイバーエージェントの執行役員人事統括本部長・曽山哲人氏だ。

社員の声を直接聞きに、現場に赴く

「経営陣との認識が擦り合っていないのに、よかれと思って社内イベントを実施しました、というようなことを、私は"自己満足活性化"と言っています。これがいちばん避けたいことです」(曽山氏)
経営陣と意識を擦り合わせるためには、組織の現状を知る必要がある。「アンケートやサーベイを、私はあまり信用していません。そんなことをやるより、5人でも10人でもいいから、社員の声を直接聞いたほうがいい。彼らが自発的かつ前向きに仕事をするにあたっての障害は何なのか。何に困っているのか。それを聞き出して経営陣に伝え、重要な経営課題であると認識してもらうことから、活性化がスタートするのです」(曽山氏)
こうしたプロセスを経て、たとえば自社における活性化のゴールが「部門横断のネットワークが張り巡らされ、協働が進んでいる状態」というように定義されて初めて、それを実現する打ち手を、さまざまに講じることができるようになる。

イベントだけが、活性化施策ではない

前の例でいえば、運動会や社員旅行のようなイベント、業績表彰にあたって部門外の協力者をも対象にするような仕組み、誕生月の社員を部門横断的に集めて実施するランチなどが、部門を超えたネットワークを形成する一助になるかもしれない。「ただし、活性化といえば即、何かイベントをというのも、人事が陥りがちな罠の1つです。まず、イベントそのものが歓迎されていないリスクを考えなければなりません。活性化にとって、社員の『やらされ感』と『しらけ』は大敵です。自社の社員が何を楽しいと思うのか、きちんと理解する必要があります」と語るのはサイバーエージェント人事統括本部副本部長の武田丈宏氏だ。
そしてもう1つ大切なのは、こうした施策によって、本当に成果が生まれているのか、という視点だ。「単に仲よくなることや楽しい時間を過ごすことが目的ではないはずです。さまざまな施策を通じて、社員がポジティブな感情を持ち、仕事への意欲や会社へのロイヤリティを高めてくれているかどうか、お互いに対する尊敬や信頼の気持ちが高まっているかどうか。こういった活性化の究極の目的にかなっているかどうかが重要です」(曽山氏)

活性化施策が有効であったかどうかの事後評価も欠かせない。「一番参考になるのは、社員の"言葉"だと思います。仕事がつまらないと言っていた人、仲間を信頼していないと言っていた人たちから、『毎日楽しい』『いいチームができている』というような声が出てくるかどうか。わが社では、活性化のゴールを社員から出てくる"言葉"で表現するようにしています」(武田氏)
そして、活性化とは、一巡して終わるわけではない。手を替え品を替え、実施し続けることが重要だ。人事にはその覚悟も求められている。

Text=Works編集部

曽山哲人氏
Soyama Tetsuhito サイバーエージェント 執行役員 人事統括本部長
武田丈宏氏
Takeda Takehiro サイバーエージェント 人事統括本部 副本部長