みんなが早く帰れる組織の「掟」「立ち会議」の導入で情報を共有し決断の速度を高めよ/キャノン電子

キャノン電子が「立ち会議」を始めたのは2000年。意思決定の時間短縮が狙いだったと、専務取締役の石塚巧氏は語る。「サッと集まってものごとを決め、サッと製品作りに取りかかるには、立ち会議というスタイルが最適だったのです。同時に、分厚い資料の作成や事前の根回しもやめました。当社ではその前から、ムダな時間とスペースを半分にする取り組みを進めており、立ち会議の導入はその一環でもあったのです」
その結果、1回当たりの会議時間は短くなった。たとえば、以前は丸1日かかっていた経営会議は、現在では2時間程度で終わるという。長時間立ち続けるのは誰もが嫌うため、発言者と議長以外のメンバーも会議に集中し、全員で結論を導こうとする姿勢が生まれたからだ。一方、会議の回数は増えた。
「私が所属する部門では、管理職が毎朝集まって予定確認などをしています。立ち会議を始めた後は、どの部署でもこうした『短時間の打ち合わせ』が頻繁に行われるようになりました」
会議の回数は増えているため、全社の総会議時間が減っているとは言い切れないという。しかし、立ち会議は大きな意味での「時短」をもたらした。「情報共有が密になり、意思決定までの時間も短くなって、業務の効率は高まりました。また、座りの会議なら4人程度しか参加できない場所に10人以上が集まるようになり、人と人との物理的・精神的な距離も縮まりました。オフィスでも工場でも、広すぎるとコミュニケーション不全が起こりやすいし、移動時間もかかります。ですから、社員同士の距離が近づくことも、時短に役立つのです」
キャノン電子は、立ち会議によって時間とスペースの凝縮感を高め、情報やモノが流れる速度を向上させた。こうしたやり方は、他社でも時短へのヒントとして応用できるはずだ。

立ち会議用のテーブルは1 フロアに数脚ずつ配置

Text=白谷輝英 Photo=平山諭

石塚巧氏
Ishizuka Takumi キャノン電子 専務取締役 人事センター所長兼経理部長