みんなが早く帰れる組織の「掟」固定デスクから社員を解放せよ/日本航空

社内でも残業が多かった「調達本部」。その本部では、限られた人員で高い成果を上げるためにワークスタイルの改革を行った。
従来の働き方からの脱却を目指して最初に手がけたのは、業務のムダを洗い出すことだったと、調達本部の埋金洋介氏は語る。
「社員がどれくらい出張・会議・お客さま訪問を行うのか検証しました。すると『羽田空港で会議を終えた後、帰社してレポートを書く』『お客さまに電話するため、オフィスに戻って固定電話を使用』などのムダが浮かび上がったのです。自分の机以外でも仕事をできる環境が整えば、移動時間を削減してもっと創造的な業務にあてられると考えました」
そこで調達本部では、文書の全面電子化と、デスクトップPC・固定電話の廃止を実施。また、フリーアドレス制を導入することで、社員の「デスクからの解放」を目指した。さらに、定時退社も徹底。
「定時になったら、10分以内に退社するのがルール。それ以上に残業する場合は、所属長の事前申請が必要です。また、残業する場合は特定の席に移動し、それ以外のエリアは消灯する決まりにしました」
定時から30分以上過ぎたオフィスは、残業エリアを除いて消灯される。遅くまで残業する社員が見える化されたため、ダラダラ働かずに早く帰ろうという雰囲気が生まれた。

フロアの一角には、6人掛けのデスクが置かれたエリアがある。定時を過ぎるとほとんどのエリアは消灯され、残業する社員はこのエリアに集まって仕事を続ける。なお、「グループ長が毎日交代で、メンバー全員に帰宅を促す」「本部内の管理職が月1回集まり、メンバーの残業時間管理を行う」などの地道な取り組みも実施され、定時に帰る雰囲気作りを後押ししている。
「調達本部の1人あたりの残業時間は減少し、時間あたりの生産性が大きく向上。定時退社が実現でき、変革前は72.2%だった社員の職場満足度も、98.2%まで高まっています」
自席以外でも働ける環境を整備したことで、日本航空は「職場に長くいる人が偉い」という古い価値観から脱し、堂々と定時に帰ってプライベートを充実させられる労働環境を実現できたのだ。

Text=白谷輝英 Photo=平山諭

埋金洋介氏
Umegane Yosuke 日本航空 調達本部 調達第一部 企画グループ グループ長