Next Issues of HR With コロナの共創の場づくり第1回 オランダで共創の動きが止まらない理由

オランダでは、国籍や志向、価値観など非常に多様な人材が集まり、その人々が共創してイノベーションを起こそうとするコワーキングスペースでの活動が盛んです。当然、コロナ禍以前はリアルな場でそれが行われていました。そして、その多くがサステナブルな社会への移行、サステナビリティトランスフォーメーション(SX)に向けて取り組むプロジェクトです。たとえば、サステイナブルな事業に取り組む人々が集まる、廃業して放置された温水プール場は、バイオ実験を行えるラボ、3Dプリンターや工作機械がある工房、ミーティングスペース、バーなどを備えており、コーヒーかすを集めてマッシュルームを栽培するといったスタートアップが入居しています。コロナ禍においてもオンラインに場を移し、ワークショップを開催したり、ディスカッションを重ねたりとその動きは止まりません。

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日本でも多くのコワーキングスペースが生まれましたが、コロナ禍で閑散としていると聞きます。なぜ、オランダは動きを止めないのか。それは、「集まれば何かが生まれる」というような漠然としたものではなく、目的を非常に明確にした場であるからです。前述のSXというのは、近年盛んになった目的の1つです。

オランダを含めた欧州の北側は、世界でもSXが進んでいるエリアの1つですが、オランダがSXに取り組む理由は、少し特殊です。オランダにとっては、生き残りのための成長戦略なのです。端的に言えば(オランダ人はそうは言わないと思いますが)「儲かるから」ということです。オランダは小国ですが、欧州の激動の歴史のなかにあっても、しぶとくその存在価値を発揮し続けています。それは、世界に利用してもらえるプラットフォームやインフラを提供しているからです。たとえば、玄関口であるスキポール空港は欧州のハブ空港の1つですし、ロッテルダムは欧州一の港を誇ります。また、デジタルや英語、そしてLGBTなど多様性も同様にプラットフォームやインフラと考えます。そして、次はサステナブルが儲かるプラットフォームだと確信しています。だからこそ、全員があまねくそこに向かい、これまでの経験から、プラットフォームをつくるには多様な人が共創することが重要だと認識している、というわけです。

本連載では、そのようなオランダにおけるSXの取り組みや共創の場のありようを紹介しながら、日本社会、日本企業がどのように有効な共創の場をつくっていくのか、その方法論を模索したいと思います。

w166_ni_05.jpg吉田和充氏
ニューロマジック アムステルダム
Co-funder&CEO/Creative Director

博報堂勤務を経て、2016年に独立しオランダに拠点を移す。日本企業、オランダ企業向けのウェブディレクションや日欧横断プロジェクトに多数携わる。

Text = 入倉由理子 Photo = 吉田氏提供