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第13回 Z世代に広がる新たな「辞め方」「わがまま」と受け止めていてはすれ違う

2025年04月15日

考え事をする若い女性の様子。Z世代を中心に「新しい辞め方」が広がっている背景には、若者世代に適した環境を用意できない職場の問題が大きい。
Photo=Blend Images/amanaimages

職場に対する不満が爆発する形で仕事を辞める「レイジ・クイッティング(rage quitting)」や、不満をバネに大量の求人へ応募する「レイジ・アプライング(rage applying)」といった現象が注目されている。特に、Z世代を中心にこうした行動が増加しているとされ、その背景には企業文化の問題や若者のキャリアが置かれている不安定な環境などが指摘されている。

レイジ・クイッティングとは、職場の環境や上司の態度に耐えきれなくなった社員が、感情的な決断を下し、衝動的に退職する行為を指す。特にパンデミック以降、リモートワークの普及や働き方の変化により、社員のストレス耐性や職場への期待が変化し、仕事に対する満足度が低かったり正当に評価されていないと感じる人が増えたことが、この現象の一因と考えられる。

一方、レイジ・アプライングとは単なる転職活動とは異なり、職場の待遇や給与に対する不満が爆発することで引き起こされるといわれている。LinkedInで熱心にネットワーキングをするなど、怒りをバネに「出口」を見出すために転職先を必死に探す行為だ。

ほかにも、「リベンジ・クイッティング(revenge quitting)」という新たな概念も登場している。これは単なる衝動的な退職ではなく、計画的によりよい職場環境を求めて辞職する行動を指す。たとえば企業側が従業員を軽視した結果、有能な人材が嫌気が差して会社を辞め、その影響で組織がダメージを受けるケースも見られるといわれている。特に昇給や昇進の機会が限られている環境において、従業員の不満が執念へと変わりやすい。

これらのトレンドは、単なる「若者のわがまま」ではなく、労働環境の問題点を浮き彫りにしている。Z世代は、過去の世代と比べて仕事に対する価値観が異なるし、置かれている経済状況や職場環境の不安定さも異なる。嫌な気持ちになる職場を我慢したところで、いつ解雇されるかもわからないし、会社に忠誠を誓っても雇用は不安定なままだ。単なる生計手段である仕事を「よりよい仕事に行きつくためのワンステップ」と考える人も多い。

従業員が自らのキャリアを主体的に選択できる環境を会社側が整えなければ、優秀な人材はほかの選択肢を探し続けることになるし、会社に所属している間も「貢献したい」と思うモチベーションは減少してしまうだろう。

Text=竹田ダニエル

プロフィール

竹田ダニエル氏

Takeda Daniel
カリフォルニア大学バークレー校在学中。AI倫理教育研究員。1997年生まれ。カリフォルニア州出身、在住。著書に『世界と私のA to Z』『# Z世代的価値観』。

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