人事変革のバディ京セラの全社員の幸福実現に貢献するピープルアナリティクス

チームの総責任者
w172_bady_itou.jpg伊藤研作氏 Ito Kensaku
人材開発部 HRイノベーション課責任者
2004年入社後、本社人事部門にて京セラ全社の人事考課の管理業務を担当。国内工場の労務部門、国内外関連会社への赴任を経て、2019年、HRイノベーション課の立ち上げに携わる。

プロジェクトの牽引役
w172_bady_kasuga.jpg春日宏紀氏 Kasuga Hiroki
人材開発部 HR イノベーション課
2011年入社。研修部門で経営理念、管理会計の教材・書籍の企画編集を担当。2018年、グロービス経営大学院修了。同年より研修部門内のシステム化を推進。2019年、HR イノベーション課の立ち上げから参加。

チームのオールラウンダー
w172_bady_tanaka.jpg田中祥平氏 Tanaka Shohei
人材開発部 HRイノベーション課
2019年入社後、本社人事のシステム部門にて京セラ全社の給与計算・異動管理業務を担当。人事データの運用管理経験を生かしデータ活用を推進すべく、2021年10月にHRイノベーション課に異動。

本格的なDX時代に入り、人事部門でのDXの取り組みも活発化してきている。経営に資する戦略人事の実現に向けていかにデータを活用するか。その課題にチームとして挑んでいるのが、今回紹介する京セラのHRイノベーション課だ。責任者の伊藤研作氏、人事システムに詳しい春日宏紀氏、人事データの運用管理を手掛けていた田中祥平氏という3人のチームで、“データ人事”の推進に努めている。

その源流は、2017年、谷本秀夫氏が社長に就任して打ち出した生産性倍増プロジェクトにある。製造現場でのAI導入やロボティクス活用が大きく進み、やがて改革の波が間接部門にも広がってきた。当時、人事部で人事制度刷新プロジェクトに携わっていた伊藤氏は、話を聞いて興味を持ったという。「私は人事畑が長く、データ活用の必要性を以前から感じていました。人事分野でも本格的に展開していくという経営の意向を聞き、ぜひ取り組んでみたいと思いました。とはいえ、未知の領域で、私一人ではどうにもならない。誰かふさわしい人材はいないかと見つけたのが、春日でした」(伊藤氏)

春日氏は、経営大学院でマネジメント全般やDXについて学んだ後、教育研修部門でシステム導入のプロジェクトリーダーを務めていた。ちょうどプロジェクトも終盤に差し掛かるタイミングで伊藤氏から声をかけられ、「飛びつかない手はない」(春日氏)と迷うことなく、新しい挑戦に踏み出した。

こうして2019年10月、HRイノベーション課が新設された。社員の幸福と事業の成長に貢献するという、京セラおよび人事部の理念と共通した内容のミッションを掲げての2人でのスタートだった。現場で生まれるさまざまな課題に意欲的に取り組むなか、メンバーの増員を希望していたところに、自ら手を挙げてきたのが当時入社3年目だった田中氏だ。「給与計算や異動など人事データのオペレーションを担当していましたが、2 人がなにか面白いことをやっているらしいと(笑)。情報系ではありませんが、理系出身で分析や検証の業務にも興味があり、当時の上司を通じて、チームに加えてほしいと希望を出しました」(田中氏)

2021年10月、田中氏が加わり、チームは3人体制となった。メンバーが増え、新しい取り組みを加速していく。

データドリブンな組織へ風土と環境を作っていく

チームが取り組むテーマは幅広い。大きなテーマとしては、社外に向けた採用と、社内に向けた人材活用とに分けられる。特にこれまでは、社内の人材活用に重点的に取り組んできた。人事の各部門からニーズを吸い上げたり、現場の声を聞きながらタレントマネジメントシステムをリニューアルしたり、ピープルアナリティクスによって部下の挑戦を後押しする上司像を解明するなど、多数のプロジェクトに取り組んでいる。

手探りで始めた取り組みも2年半が過ぎ、変化は着実に表れてきた。「目に見えて変わったのは、社内の雰囲気です。この課を立ち上げた当初は、最先端の技術を導入したり、高度な分析をして人事制度を構築するのが仕事だと思っていました。でも何よりも大切なのは、データの力を使って人事課題の解決を図ることなのです」(春日氏)

理想は、人事部全体、ひいては各事業部門が“データドリブンな組織”になること。「そのためには、誰もがデータにアクセスしやすい環境の整備や、データを使ってそれぞれが考える文化を醸成したいと考えています」(田中氏)

社内外を巻き込みながらチームとして回り始めた

HRイノベーション課としても成熟度が増している。当初は誰もデータアナリティクスの専門的な知見を持っていたわけではなかったが、今では3人がそれぞれの持ち味を発揮するようになってきた。

職場の活力診断(組織サーベイ)の改定では、春日氏がプロジェクトリーダーを担当。設問や集計分析方法の見直しを図るうえで、社外の専門家の力を借りることを提案した。それを受けて、伊藤氏がこれまで社内外に築いてきたネットワークから接点のあった大学に声をかけ、共同研究が実現。2人がプロジェクトに集中している間に、各部署との調整や社内的なデータ分析など、必要な業務一切を田中氏がきめ細かくサポートし、チームとしてうまく機能した。

データ人事の実現に向けてさらなるチームの発展を目指す一方、チームのメンバーには、常に卒業を意識してチャレンジを続けてほしいと伊藤氏は言う。「この組織に集うメンバーには、なりたい自分を常に意識して、この組織を活用するくらいの気持ちでいてほしい。HRイノベーションという名前にふさわしく、それぞれが新しい自分を発見して飛躍のきっかけとなるような組織にしていけたらと思っています」(伊藤氏)

Text = 瀬戸友子 Photo =京セラ提供