スキル把握から技能習得までをつなぐ──「働きながら学ぶ」を支える人材開発プラットフォーム「BuildWithin」

2026年08月28日

2026年、米国ではAI関連の訓練を既存の登録アプレンティスシップ(登録見習い制度)に組み込む全米規模の取り組みが始まった(※1)。既存プログラムにAI訓練やカリキュラムを組み込むほか、AI関連職の人材育成も進める。

登録アプレンティスシップは、企業などが参加者を雇用し、賃金を支払いながら、OJTと学習を組み合わせて技能習得を促すしくみである。米国では未経験者の育成だけでなく、既存従業員のリスキリングや新たな技術領域への移行支援にも活用されている。

こうした「働きながら学ぶ」人材育成の拡大に伴い、その運営を支えるHRテクノロジーへの注目が高まっている。本稿では、スキル把握から学習・OJT管理までを一体的に支援する米国の「BuildWithin」を取り上げる。

BuildWithinの注目ポイント

BuildWithin:AIによるスキル把握から、OJTや学習の進捗管理、技能習得までを統合

BuildWithinは、企業、自治体、非営利団体向けに、人材のスキル把握、育成プログラムとのマッチング、学習やOJT管理を支援する人材開発プラットフォームを提供している。未経験者の育成だけでなく、既存従業員のリスキリングや職種転換、地域の人材育成プログラムの運営など、さまざまな用途で活用されている。

■ 対話型AIが経験から転用可能なスキルを抽出する

AIエージェント「Celeste」は、利用者との対話を通じて、これまでの経験や職務内容を整理し、別の職種でも生かせる転用可能なスキルを抽出する。単に職歴や資格を入力させるのではなく、本人が語る経験をスキルデータとして構造化し、その後の支援に活用できる情報へ変換する点が特徴である。

■ スキルベースで育成プログラムとマッチング

BuildWithinのスキルマッチングエンジンは、個々の状況に応じた最適な育成プログラムとのマッチングを行う。また「AIキャリアコーチ」が、参加者のスキルや関心などに基づいて、本人に合う育成プログラムを提示する。

■ 職種ごとに「何を身に付けるか」を基準に、学習とOJTを組み立てる

BuildWithinには、DOL承認済みの登録アプレンティスシップ・プログラムや、職種ごとのキャリアパスがあらかじめ搭載されており、企業やプログラム運営者はゼロから設計することなくプログラムを開始できる。さらに、自社独自のカリキュラムを組み込んだり、外部の研修・教育事業者と連携したりすることも可能である。
「この職務を担うために、何を学び、どのような実務訓練を進めるのか」という基準に沿って、学習とOJTを組み合わせた育成プログラムを設定できる。

■ OJTと学習、技能習得の進捗を参加者ごとに追跡

BuildWithinは、学習とOJTの進捗を連動させて管理する機能を備える。企業は、単に研修を「受講したか」だけではなく、学習と実務の双方が育成プログラムに沿ってどこまで進み、職務に必要な技能をどこまで身に付けたのかを把握できる。
担当者ごとのアクセス権限管理や、外部システムとのAPI連携も備える。組織や役割に応じて閲覧・操作範囲を設定し、複数の関係者が参加者情報を共有しながら運営することができる。

■ 導入事例:未経験者育成とリスキリングへの活用

ユナイテッド航空では、デジタル技術人材を育成する有給プログラム「Innovate」の運営にBuildWithinを活用している。Innovateでは、大卒者や資格保有者だけでなく、異なる経歴を持つ人材にもデジタル技術職への道を開いている。地域の教育団体による4カ月または6カ月の集中プログラムを修了した参加者は、その後ユナイテッド航空で実務と学習を組み合わせた6カ月間の訓練に参加する。OJTや実践的なプロジェクト、研修を通じて、アプリケーション開発、サイバーセキュリティ、データ分析、システムエンジニアリングなどの技能を習得し、修了後は経験や社内の配置状況に応じてアナリスト職に就く可能性もある。

また、BuildWithinの活用は未経験者の育成に限らない。2026年には、テネシー州チャタヌーガ地域で量子技術の人材育成や産業振興に取り組む非営利団体Chattanooga Quantum Collaborativeが同社と提携し、物流、金融、医療、エネルギーなどの分野で働く社員を対象とした量子技術のプレアプレンティスシップ(見習い訓練の準備プログラム)を開始した。BuildWithinのプラットフォーム上で学習や実践課題などの運営管理を行い、新たな技術領域へのリスキリングを支援している。

人材育成を支える日米のHRテクノロジー

米国ではBuildWithinのほかにも、実務と学習を組み合わせた人材育成プログラムの運営を支援するプラットフォームが登場している。
ApprentiScopeは、OJTや座学、技能評価などの情報を一元管理し、参加者の学習の進捗把握やプログラム運営を支援する。応募者管理機能や、参加状況に関する分析機能も備える。
GoSproutは、アプレンティスシップに加え、プレアプレンティスシップ、インターンシップ、コーオプ(就業と学習を組み合わせた産学共同教育プログラム)など幅広い人材育成プログラムを対象とする。参加者の進捗管理や指導者とのコミュニケーション支援などの機能を備える。

日本にも、OJTや研修、資格、スキル情報を関連付けて管理するHRテクノロジーがある。
たとえばSkillnoteは、従業員のスキル・力量情報を基に、育成計画、研修履歴、資格情報などを一元管理する。育成結果をスキルマップへ反映し、計画との差異を把握する機能も備えており、配置や人員計画にも活用されている。

一方でBuildWithinは、学習やOJTの管理に加え、AIによる経験・スキルの把握や育成プログラムとのマッチングまでを組み込んでいる。「どの人材を、どの育成機会につなぐか」という段階から、企業やプログラム運営者を支援するのが特徴である。

日本企業への示唆

研修の受講履歴、OJTでの実務経験、技能の習得状況が別々に管理されるケースでは、個人の育成の流れを一続きに把握しにくい。研修の受講履歴が記録されても、その後どのような仕事を経験し、実務を通じてどの技能をどこまで身に付けたのかまで把握されているとは限らない。
OJTの実態に目を向けると、リクルートワークス研究所のGlobal Career Survey 2024では、日本でOJTを受けた割合は39.8%と調査対象7カ国中最も低く、その内容も教育プログラムに基づかない「現場任せ」のOJTが多いことが明らかになった(※2)。

BuildWithinでは、職種ごとの「何を身に付けるのか」という育成基準に学習とOJTをひも付け、参加者が技能習得までのプロセスのどの段階にいるのかを追跡できる。これにより、「何を学び、仕事の中で何を経験し、その結果どの技能を身に付けたのか」を一連の育成プロセスとして把握できる。
BuildWithinが示唆するのは、職務に必要な技能を基準に、研修とOJTを技能習得までの一連の流れとしてつなぎ、そのプロセスをテクノロジーで一体的に管理するという発想である。

TEXT=杉田真樹

(※1)https://www.dol.gov/index.php/newsroom/releases/eta/eta20260401 
(※2)https://www.works-i.com/research/project/globalcareer2024/koyou/detail009.html