データで理解する「Z世代」―米国のZ世代の特徴や価値観をデータで読み解く

2025年07月15日

米国におけるZ世代(1990年代後半~2010年代前半に生まれた世代)は、デジタルネイティブとして育ち、幼少期からインターネットやスマートフォンに親しんできた世代である。この世代は、環境問題や社会的課題に対する関心が高く、多様性を尊重する柔軟な価値観を持っているとされる。

一方で、主体性が欠ける傾向や、安定志向が強いという側面も指摘されている。1990年代後半生まれのZ世代は既に労働市場に参入しており、求人への応募、新たな職場での就業、企業でのキャリア形成を通じて、その特性を活かして活躍している者も多い。

X世代やY世代とZ世代が職場で円滑に協働していくためには、まず世代で異なる価値観や行動様式をお互いに正しく理解することが重要である。
本コラムでは、米国のZ世代の全体像を概観したうえで、就業観や行動特性、SNSを活用した仕事探しやキャリア相談の手法、働き方や価値観の特徴、さらには独立・起業の動向などについて、各種調査データを基に紹介していく。

教育水準

ピューリサーチセンターによると、Z世代は、これまでで最も教育水準の高い世代になりつつある。彼らは、それ以前の世代と比較して大学進学率が高く、高校中退率も低い。2018年に高校を卒業した18歳から21歳の学生のうち、57%が2年制または4年制大学に通っており、これは同年代だった2003年時点のミレニアル世代の52%、1987年時点のX世代の43%を上回っている(※1)。

また米国国勢調査局のデータによると、2022年には、18~24歳の約40%が大学を卒業するか準学士号を取得している(※2)。

パンデミックの影響

シンクタンクの経済政策研究所(Economic Policy Institute; EPI)の報告によると、2019年春から2020年春にかけて、16~24歳の若年労働者全体の失業率は、8.4%から24.4%へと急上昇した。若年層の約4分の1はパンデミックの影響を最も大きく受けたレジャー・ホスピタリティ業界で働いており、2020年2月から5月の間にこの業界の雇用は41%減少した(※3)。

さらに、Z世代は8歳から23歳という多感な時期に、パンデミックを経験し、教育面でも大きな影響を受けた。全米教育統計センター(National Center for Education Statistics)によると、 2021年秋に高等教育機関の授業を受講予定であった18歳以上の成人のうち、56%が受講計画に何らかの変更があったと報告している(※4)。

変更の内容は、授業の完全キャンセル、履修数の増減、別の学位や資格取得のための授業への変更、他の教育機関への転校、授業形式の変更(対面からオンラインへの移行)など、多岐にわたっている。

職場への参入

米国労働統計局(BLS)によると、Z世代の労働参加率は上昇傾向にあり、2023年には20〜24歳の約70%が労働市場に参加している(※5)。

職場コミュニティサイトGlassdoor の予測によると、Z世代は2024年初頭までにフルタイム労働力においてベビーブーマー世代を上回る見込みである。ミレニアル世代を超えるのは、2040年代初頭頃になると予想されている(※6)。

2025年に発表されたデロイト・グローバルの調査では、世界のZ世代およびミレニアル世代の多くが、自身のキャリアに、「お金」「意義」「ウェルビーイング」の三要素を求めていることが明らかになった。

Z世代が感じる幸福感の3つの要素

Z世代は経済的な安定がなければ、幸福感を得にくく、仕事に意義を見出しにくい傾向がある。しかし、経済的不安は前年から増加しており、Z世代の約半数(48%)が経済的安定を感じていない。

また、Z世代の89%は、目的意識が仕事への満足度と幸福感にとって重要であると考えている。ポジティブなメンタルウェルビーイングを報告したZ世代のうち67%が、仕事を通じて社会に有意義な貢献ができていると感じている一方で、メンタルウェルビーイングが低いと回答した層ではその割合は44%にとどまっている(※7)。

ギャラップが2023年に実施した米国の従業員エンゲージメント調査では、1989年以降に生まれたミレニアル世代およびZ世代のエンゲージメントは40%から35%へと5ポイント低下した(※8)。2024年の同調査では、米国の従業員エンゲージメントは過去10年間で最低の水準に落ち込み、Z世代のエンゲージメントは前年より5ポイント低下した。エンゲージメントにおける要素のうち、特に基本的な項目である「自分が何を期待されているかがわかっている」「この1週間の間に良い仕事をしていると褒められたり、認められたりした」「業務上必要なリソースや設備が揃っている」「最も得意なことをする機会が毎日ある」「職場の誰かが気遣ってくれていると感じる」「成長を後押ししてくれる人がいる」の低下が顕著であった(※9)。

税務申告サービスHR Blockの調査によると、Z世代の3人に1人が2022年に転職しており、そのうち35%が給与アップを目的としていた。過半数(59%)は給与所得者として働くことを望んでおり、そのなかでは、オンサイト勤務や大企業での勤務が好まれている。
一方で、29%は独立して働くことを望んでおり、そのうち59%が起業、22%がソーシャルメディアのインフルエンサー・ストリーマー、14%がアーティスト・クリエイターとして働くことを志向している(※10)。

Z世代の独立志望の人の志望する仕事のグラフ

経済状況

2025年に発表されたバンク・オブ・アメリカの取引データによる分析では、Z世代の世帯当たり⽀出の増加率は、必需品・裁量的⽀出のいずれにおいても、全体平均の増加率を上回っている。支出額は貯蓄の約2倍に達しており、生活費の高騰が経済的なプレッシャーとなっていることが背景にあると考えられる。

貯蓄は支出の増加に追いついておらず、Z世代の約3分の1(32%)が、親世代が同年代だった頃と比べて経済的な目標達成が遅れていると感じている。また、労働市場への新規参入者の失業率も上昇傾向にあり、2025年2月に失業手当を受給したZ世代の世帯数は、前年比で約32%増加した(※11)。

個人投資家向けサービスを提供するWallStreetZenの調査によると、Z世代の多くは、金融知識をソーシャルメディアから得ている。特にTikTok(42%)やYouTube(27%)が人気であり、Z世代の76%がこれらのプラットフォームを通じて投資、資産管理、不労所得などの情報を収集していると回答している。90%が投資に関心を持っている一方で、56%が「どこから始めればよいかわからない」と感じている。また、83%が「誤った金融情報を見たことがある」と回答しており、情報の信頼性にも課題があることがうかがえる(※12)。

ソーシャルメディアの影響

Z世代を対象にリサーチを行うdcdxの調査によると、米国のZ世代は1⽇当たり平均7時間22分スマートフォンを使用している。年齢別に見ると、20歳以下のZ世代は約7時間52分、21歳以上では約7時間5分である。Z世代に人気のアプリと、1週間当たりの平均利用時間は以下のとおりである(※13)。最も人気のあるアプリはTikTokで9時間24分、次に人気があるのはInstagramで7時間3分利用されている。

Z世代の1週間の各アプリ利用時間

また、Forbes Advisorの調査によると、Z世代の46%が主にソーシャルメディアを情報収集の手段として利用しており、Googleよりも使い慣れたプラットフォームを好んで使用している傾向がある(※14)。

Z世代は、進学や就職といった人生の節目にパンデミックを経験し、社会との関わり方や働き方に関する価値観に大きな影響を受けた。また、常にソーシャルメディアを通じて膨大な情報に触れており、彼らの思考や行動には、これまでの世代とは異なる特徴が見られる。次回より、Z世代の価値観や就業観について考察していく。

TEXT=関根真祐子 監修=村田弘美(グローバルセンター長)

(※1)Pew Research Center, “On the Cusp of Adulthood and Facing an Uncertain Future: What We Know About Gen Z So Far” (2020) https://www.pewresearch.org/social-trends/2020/05/14/on-the-cusp-of-adulthood-and-facing-an-uncertain-future-what-we-know-about-gen-z-so-far/
(※2)United States Census Bureau, (2022) https://data.census.gov/table/ACSST1Y2022.S1501?t=Educational%20Attainment
(※3)Economic Policy Institute, “Young workers hit hard by the COVID-19 economy” (2020) https://www.epi.org/publication/young-workers-covid-recession/
(※4)National Center for Education Statistics, “Impact of the Coronavirus Pandemic on Fall Plans for Postsecondary Education” (2022) https://nces.ed.gov/programs/coe/indicator/tpb/covid-impact-postsecondary-plans
(※5)Bureau of Labor Statistics, “Civilian labor force participation rate by age, sex, race, and ethnicity” (2024) https://www.bls.gov/emp/tables/civilian-labor-force-participation-rate.htm
(※6)Glassdoor, “Glassdoor’s 2024 Workplace Trends” (2023) https://www.glassdoor.com/blog/workplace-trends-2024/
(※7)Deloitte, “2025 Gen Z and Millennial Survey” (2025) https://www.deloitte.com/global/en/issues/work/genz-millennial-survey.html
(※8)Gallup, “The New Challenge of Engaging Younger Workers” (2024) https://www.gallup.com/workplace/610856/new-challenge-engaging-younger-workers.aspx
(※9)Gallup, “U.S. Employee Engagement Sinks to 10-Year Low”(2025) https://www.gallup.com/workplace/654911/employee-engagement-sinks-year-low.aspx
(※10)H&R Block, “2024 Outlook on American Life Report” (2024) https://www.hrblock.com/outlook-on-american-life/
(※11)BANK OF AMERICA, “Gen Z: A new economic force” (2025) https://institute.bankofamerica.com/economic-insights/genz-new-economic-force.html
(※12)WallStreetZen, ”Where Did Gen Z Learn About Money?” (2023) https://www.wallstreetzen.com/blog/genz-money-social-media-survey/
(※13)dcdx , “The 2024 4th Annual Gen Z Screen Time Report” (2024) https://dcdx.co/gen-z-screen-time-report-2024
(※14)Forbes, “Is Social Media The New Google? Gen Z Turn To Google 25% Less Than Gen X When Searching”(2024) https://www.forbes.com/advisor/business/software/social-media-new-google/

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