研究員が読み解く、高齢者の就労と日本経済の行方とは?
リクルートワークス研究所presents「研究員の『ひと休み ひと休み』Season2」は、研究員の「生の声」をお届けするPodcast番組です。
第6回は、研究員・アナリストの坂本貴志に話を聞きました。本コラムでは、収録音源から抜粋した内容をご紹介します。
※podcast番組はぜひこちらからお聴きになってください。
労働市場や経済の状況がどういうふうに変わってきているのか
――10月に坂本さんの著書『ほんとうの日本経済 データが示す「これから起こること」』が発売されました。どんな内容か簡単にご紹介をお願いできますか?
坂本:経済に関するデータとか、いろんな企業事例を紹介しながら、労働市場や経済の状況がどういうふうに変わってきているのかということを分析、解説するような本になっています。
――昨今のニュースなどを見ていたり、この本の『データが示す「これから起こること」』というタイトルを読むと、なにか嫌な予感がするんですけど、どうなんでしょう?
坂本:嫌なことも起こると思いますし、良いことも起こると思いますね。
大筋としては、やっぱり人手不足がかなり深刻で、おそらく今後も収まることはなさそうだと。で、そうなってくると賃金が今後もっと上がっていくと思いますし、そうなると企業も行動を変えざるを得なくなります。あるいは働く側や消費者も考え方を変えていかないといけなくなりますから、そういった変化がどのように起こるのかということを解説している内容になります。
――ありがとうございます。ちゃんと読んでみます。坂本さんは直近ではどんな研究に取り組まれていましたか。
坂本:高齢期の就労に関する研究とか、賃金に関する分析とか、機械化・自動化をどういうふうに進めていくかっていうような研究とか、そういった分野に最近は取り組んでいます。
経済・財政を持続可能なものにするためには
――それらの研究をやりたいと思ったきっかけみたいなものってありましたか。
坂本:基本的には経済とか財政に関することに関心があります。経済・財政を持続可能なものにしようと考えると、基本的には生産性を高めていくこと、あるいは労働参加を拡大すること、だいたいその2点ぐらいに集約されると思うんですね。これは多分どの経済学者の方に聞いても同じことを言うと思います。そういった観点から労働参加を拡大させるということは、今はやはりシニアの方にどうやって働いていただくかということになると思いますし、あるいは生産性の話になれば機械化・自動化をどういうふうに進めるか、またそれにともなって賃金がどのように上がっていくのかというようなところが大事になると思いますので、そういった関心から行っています。
――昔からそういうことに興味があったのですか。それとも社会人になってから興味を持ち始めたのでしょうか。
坂本:大学の頃に経済学をやっていまして、公共経済学とか財政学っていうような分野だったんです。政府の政策について考えたりするような学問分野だったので、基本的には大学の時からずっとそういうテーマが好きでやっています。
――研究する上でのこだわりみたいな部分ってあったりしますか。
坂本:バランスが大事かなというふうに思っています。現場に話を聞きに行くというのも大切ですし、データをしっかり分析するというのも大切ですし、しっかりアカデミックの理論を抑えておくということも大切だと思うんですね。ですので、職業的には研究者ですけれども、一部はジャーナリストみたいな動き方もしますし、一部は大学の学者みたいな動きもしますし、あるいは行政官のような考え方もしますし、そういったところは中途半端かもしれないですが、バランスがいいかなと思います。
――多様な視点が入っているとも言えますね。
それぞれのスペシャリストがいらっしゃって、例えばジャーナリストの方であればやっぱり現場のことをすごく知っている方たくさんいらっしゃいますし、学者の方であればもう様々な実証研究を網羅的に分かっている方がいらっしゃいますし、行政官の方であればやっぱり政策にとても通じている方がいらっしゃるかと思うんですけど、それぞれのバランスを持って見れている人というのは意外と少ないかなと思うので、そこはワークスの強みだと思います。
――ありがとうございました。
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坂本 貴志
一橋大学国際公共政策大学院公共経済専攻修了後、厚生労働省入省。社会保障制度の企画立案業務などに従事した後、内閣府にて官庁エコノミストとして「月例経済報告」の作成や「経済財政白書」の執筆に取り組む。三菱総合研究所にて海外経済担当のエコノミストを務めた後、2017年10月よりリクルートワークス研究所に参画。