Global View From Nordic
第13回 世界3位評価のデンマークの年金制度 生きがい求め働く高齢者も増加
NGOで週に3日働くヨーエンセン氏(右)。70歳の誕生日は、職場の同僚たちに盛大にお祝いしてもらったという。
Photo=井上陽子
北欧・デンマークで高齢化が始まったのは、実は、日本よりもかなり早い。1960年のデンマークの高齢化率(65歳以上の人口割合)は11%と、日本(当時6%)の倍ほどだった。2023年の高齢化率は21%で、日本(30%)が逆転しているのだが、高齢化のスピードが比較的緩やかで、早くから高齢化政策に取り組めたことは幸いだったかもしれない。
国際的にも評価が高いのが、年金制度である。年金コンサル大手のマーサーによる2024年度の「グローバル年金指数ランキング」で、デンマークは世界3位のA評価(81.6点)だった。ちなみに日本は36位で、C評価の54.9点である。
デンマークの年金制度は3階建てになっており、1階は税金が財源の公的年金、2階が雇用労働者の大多数が入る労働市場年金、3階が民間企業が運営する個人年金である。強みは、2階部分の盤石さだ。大多数の雇用労働者は、雇用主の拠出分と合わせて、給与の9〜17%ほどを労働市場年金に毎月積み立てており、公的年金と合わせて、退職後もしっかり収入が確保できる仕組みとなっている。
一方の国民年金も、その持続可能性が評価されている。平均寿命の延びなど、人口構成の変化に応じて支給開始年齢を自動調整する制度になっていて、現在の支給年齢は67歳。これが、2030年には68歳、2035年には69歳とどんどん延び、今の40代が国民年金を受け取るのは、70歳以降になる見通しだ。
こうした背景もあって、仕事に向き合う高齢者の意識も変化している。経営者団体「DA」の調査によると、67歳を過ぎても働く高齢者は、2013年の4万8500人から2023年には8万4000人へと急増した。その動機は、収入のためというより、生きがいや社会とのつながりを求めてという要素が大きい。
元国家公務員のトマス・ヨーエンセン氏(70)もその1人だ。退職年齢を過ぎて68歳まで働き、今は、デンマーク最大の環境保護NGOである自然保護協会で、エコノミストとして働いている。ラジオでたまたまこの団体の取り組みを耳にして、志願したそうだ。週3日の勤務で、給与は月3000DKK(約6万3000円)とわずかだが、それでも問題ないのは、年金をしっかり受け取っているため。同僚からは「政府の豊富な知見を持っている人に来てもらえてありがたい」と重宝がられている。
Text=井上陽子
プロフィール
井上陽子氏
北欧デンマーク在住のジャーナリスト、コミュニケーション・アドバイザー。筑波大学卒、ハーバード大学ケネディ行政大学院修了。読売新聞でワシントン支局特派員など。現在、デンマーク人の夫と長女、長男の4人暮らし。
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