Global View From Nordic第8回 競争力の源泉は「2人稼ぎ主」 男女の賃金格差は5.6%

w184_nordic_main.jpg2022年のデンマークの総選挙後、新政権についてテレビで議論した主要政党の党首たち。現首相のメッテ・フレデリクセン社民党党首(左)をはじめ、女性がずらりと並んだ。
Photo=DR

北欧・デンマークは、午後4時過ぎには帰宅するような短時間労働なのに、国際競争力が高いのはなぜなのか。1人当たりGDPは日本のほぼ倍の水準で、豊かな暮らしを謳歌できるのはなぜなのか。

こんなふうにデンマークの専門家に話を聞くと、実は、多くの人から同じ答えが返ってくる。女性も稼いでいるから、という答えなのだ。

ある人は、こう例えた。「午後4時に帰るから短時間労働と言うけど、家庭で男性が8時間、女性が8時間働いたら、家庭単位では16時間働いていることになる。日本では男性が12時間働き、女性が専業主婦なら、合計すればデンマークより少ないでしょ」

日本でも働く女性が増えたとはいえ、総合職と一般職を分けるなどサポート的な役割に留まる傾向が根強いのに対し、デンマークでは徐々にではあるが、女性も男性と同等の責任ある仕事や昇進を求めてきた。正規・非正規雇用といった違いもなく、夫婦ともに稼ぎ手の「2人稼ぎ主モデル」の社会であり、いわば、一家の大黒柱が2本ある状態だ。その一方、男性も応分に家事育児を担い、時間にすると男性43%、女性57%となっている。

違いが顕著に表れるのが、男女間の賃金格差である。OECDによると、格差は日本の21.3%に対し、デンマークは5.6%とかなり少ない。

北欧諸国は男女平等が進んでいることで知られるが、国によって実現のアプローチは異なる。ノルウェーやアイスランドでは、一定基準の企業などに対して、女性役員を4割以上にするなど割り当て(クオータ)を設けている。北欧では父親の育児休業が長いのも特徴だが、スウェーデンやアイスランドでは、父親が取得しないと消滅する育休期間の割り当ても定めている。一方、デンマークは自由を重んじるお国柄で、クオータを嫌い、育休制度は支給額も期間も寛大である一方、どう分けるかは両親の事情で決めるべき、という考え方だ。

それでもデンマークでは、首相をはじめ政界に女性が目立つし、男女平等を進める機運は強い。2024年には、徴兵制の対象を女性に広げる方針も発表された。徴兵といっても、これまでは定員の99%が志願兵で埋まり、その4分の1は既に女性なのだが、さらなる男女平等の象徴的な存在になりそうだ。

Text=井上陽子

井上陽子氏
Inoue Yoko
北欧デンマーク在住のジャーナリスト、コミュニケーション・アドバイザー。筑波大学卒、ハーバード大学ケネディ行政大学院修了。読売新聞でワシントン支局特派員など。現在、デンマーク人の夫と長女、長男の4人暮らし。

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