クールじゃないジャパンなぜ、手段と目的を取り違えるのか?

「私はカフェなどで仕事をするほうが、集中力が高まって効率が上がります。ですが、働く場所や仕事の進め方を自由に決められる日本企業は少数派ですよね」と話すツィスマリ・クシュタシュヴィリ氏は、5年にわたって日本に住み、大学・大学院で学んだ。また、一般社団法人や日本企業で外国人留学生の就労支援を手がけたり、経済産業省の研究会で委員を務めたりした経験もある。
「日本企業は、従業員をオフィスに縛りつけることにこだわり、『成果の最大化』という本来の目的を忘れているように見えるのです。日本で働いていた際にも、目的より手段を大事にしすぎるとよく感じました。たとえば、会議に参加したり、報告書を作ったりすることに時間をかけて、なかなか実際の行動に移そうとしない。それでは、いつまでたっても成果を出せません」
クシュタシュヴィリ氏を含め外国人の多くは、ダラダラと働くより、短時間で大きな成果を出したいと考える。一方、日本企業では、会議を何度も開いたり報告書をきれいに仕上げたりするなど、目的を達成するための「手段」が重視されがち。そこに、多くの外国人はフラストレーションを感じているというのだ。
「長時間机に向かっている日本人の同僚からなかなか成果物が出てこないのを見て、『仕事のフリをしているの?』と疑った経験のある外国人は、私だけではないはずです(笑)。
『カイゼン』など日本企業のやり方に関心を持ち、日本で働きたいと考える外国人は、決して少なくありません。しかし実際に働いてみると、多くは日本企業の仕事の進め方に幻滅してしまいます。大切なのは、あくまで業績向上といった『目的』のはず。目的を達成できるなら、そこに至るまでの手段は従業員にある程度任せてもいいと思うのです。そうすれば効率主義の外国人も、日本で快適に働けるでしょう」
働き方改革を進める日本企業において、クシュタシュヴィリ氏の指摘はとても重要だ。達成すべき目標をきちんと見定め、「時短」という「手段の目的化」に陥らないようにすれば、生産性向上という果実を得られるはずである。

Text=白谷輝英

ツィスマリ・クシュタシュヴィリ氏
Tsismari Kshutashvili ジョージア(旧グルジア)出身。トビリシ自由大学在学中の2009年、神戸大学に国費留学。2010年に帰国してトビリシ自由大学を卒業後、2012年から2015年まで東京大学大学院に国費留学。現在は米国ロサンゼルスに住み、UCLAで学ぶかたわら女優業にも進出している。