クールじゃないジャパンもっと従業員とコミュニケーションを取ればいいのに!

イバイ・アメストイ氏は会社を創設する前に、日本企業で 3年間働いた経験がある。当時、人事はなぜ、もっと従業員とコミュニケーションを取らないのだろうと感じたという。
「一時期勤めていたバルセロナのグローバル企業では、社員の国籍、人種が異なり、価値観も多様な人々が勤務。そこでは、従業員同士はもちろん、人事とのコミュニケーションも頻繁に、密度濃く行われていました。それだけに、日本企業での人事の対応に驚いたのです」
たとえば「従業員との人事面談は半年に1回」という規則があれば、それを頑なに守っていた。新卒一括採用で、日本人主体の比較的同質性が高い従来の組織であれば、それでも問題は起こらなかっただろう。しかし、本気で外国人を活用したいなら、規則など脇に置いてコミュニケーションをもっと頻繁に取るべきだとイバイ氏は指摘する。
「外国人従業員の多くは、育った環境の違いゆえか、仕事へのモチベーションが日本人とは異なります。加えて、日本語が不自由だったり、文化のギャップを感じたりするので、彼らの定着や活躍を望むなら、彼らが何を求め、何に困っているのかを把握することが重要なのです。少なくとも、日本人の 3倍くらいの頻度で面談をしてもいいと思います」
日本人と同じ観点で外国人を評価するのも改めるべきだとイバイ氏。
「当社が外国人スタッフをゲーム会社などに派遣する際に、『もっと日本語が上手な人が欲しい』と言われることがありますが、日本語がうまいということは、日本での生活が長く、その分、最新の現地事情には疎いともいえます。『日本人と同等のスキル・コミュニケーション能力』を外国人に求めると、その分、失うものもあるのですよ。外国人従業員に何を期待するのかを深く考え、本当に必要とする能力以外は諦めるくらいの割り切りが必要です」
イバイ氏の指摘はもっともである。そして、それは果たして外国人に対してのみ、考慮すべきことだろうか。
たとえ日本人だけの組織であっても、多様性が増す昨今、私たちが再考すべきことである。

Text=白谷輝英 Photo=宮田昌彦

イバイ・アメストイ氏
Ibai Ameztoy スペイン出身。2000年に来日し、大手ゲーム会社にてローカライズ業務を担当。2008年、ゲーム、アニメ、マンガといったエンターテインメント系コンテンツのローカライズなどを手がけるアクティブゲーミングメディア社を設立した。