コロナショックは日本の働き方を変えるのか(サマリー版)

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リクルートワークス研究所は、毎年1月に実施している「全国就業実態パネル調査」の回答者のうち、2019年12月時点の就業者に対して、2回目の緊急事態宣言下での人々の働き方を把握する臨時追跡調査を実施しました。本追跡調査は、緊急事態宣言下の人々の働き方を把握することで、今後の働き方の変化の方向性や背景を検討することを目的としています。これまで同じ対象者に実施してきた「全国就業実態パネル調査2020」「全国就業実態パネル調査2020臨時追跡調査」「全国就業実態パネル調査2021(速報値)」を活用して、新型コロナ流行前(コロナ前)、2回の宣言下、その間の4時点の働き方を比較し、働き方の変化の兆しや仕事と生活への影響を分析した結果をまとめました。

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働き方の変化の兆し


1回目の緊急事態宣言により一気に進展がみえたテレワークなどの新しい働き方への移行は
宣言解除後に後退、2回目の宣言発令によっても大きくは伸びず減速傾向

1回目の宣言下で急速に伸びたテレワーク実施率(32.8%)は、宣言解除後に18.1%まで減少し、2回目の宣言下でも25.4%にとどまる。
雇用者のうち、2回目の宣言下での実施率が最も高かったのは派遣社員(30.6%)で、正規の職員・従業員(27.9%)を超す。

■1週間のテレワーク時間(全体・就業者別、%)※クリックで拡大しますtelework-time_by-employee.jpg

集計対象:比較調査時点で同じ仕事を継続している就業者(いずれかの時点で休業した者を除く)

情報通信業、不動産業、製造業、金融・保険業では宣言解除後もテレワーク継続実施の割合が比較的高めで定着の兆し。

■1週間のテレワーク時間(業種別、%)※クリックで拡大します1週間のテレワーク時間(業種別、%)

集計対象:比較調査時点で同じ仕事を継続している就業者(いずれかの時点で休業した者を除く)
   注:業種は、宣言1回目でテレワーク時間の平均値が高かったものから順に並べている

宣言下にテレワークをしなかった理由は「職場で認められていないため」が最も高く、1回目の宣言下で56.7%、2回目で56.4%と変わらず、職場要因でテレワークができない状況に変化なし。

■テレワークをしなかった理由の変化(%)
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集計対象:比較調査時点で同じ仕事を継続している就業者(いずれかの時点で休業した者を除く)で、各調査時点でテレワーク時間が0時間の者
 

1回目の宣言解除後に、勤務先で行われたこと、もしくは実施が決まったことは、「労働時間制度の見直し」12.9%、「テレワーク日数の制限の見直し」11.9%、「対面研修のオンライン化推進」8.6%。最も選択率が高かったのは「あてはまるものはない/わからない」(64.4%)で、制度見直しは一部にとどまる。 

■昨年の緊急事態宣言解除後の2020年5月中旬以降に、勤め先で行われたこと、もしくは実施が決まったこと(複数回答、%)※クリックで拡大します
昨年の緊急事態宣言解除後の2020年5月中旬以降に、勤め先で行われたこと、もしくは実施が決まったこと

集計対象:2020年12月時点雇用者(n=4,483)

2回目の宣言下で職場においてテレワークで勤務している人の1日あたりの割合は、「ほぼいない」が63.6%と最も高く、50%以上~100%(ほとんど全員)の範囲で答えた割合を合計してもわずか12.9%にとどまり、政府が掲げる「出勤者7割削減」にはほど遠い。

■職場において1日あたりテレワークで勤務している人の割合(従業員規模別、%)※クリックで拡大します職場において1日あたりテレワークで勤務している人の割合(従業員規模別、%)

集計対象:2020年12月時点雇用者

仕事と生活への影響

収入減などのショックは一律ではなく、一部に集中
収入が高い人ほど特別定額給付金は貯蓄に回す

職場から「時差出勤推奨」「勤務日数・時間の縮小要請」「自宅待機要請」をされた雇用者の割合は1回目の宣言下はそれぞれ16.2%、14.1%、10.8%であったが、2回目の宣言下ではそれぞれ9.8%、6.3%、2.4%と減少。

■職場の方針(%) houshin.png

集計対象:比較調査時点で同じ仕事を継続している雇用者(休業者含む。n=3,778)

職場から休業要請されて休業した雇用者の割合は、1回目の宣言下では18.6%であったが、2回目の宣言下では5.5%に減少。 

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集計対象:各調査時点での雇用者(休業者含む)

コロナ前と比べて収入が「減った・計」の割合は、2020年5月(宣言1回目)で31.7%、2021年1月(宣言2回目)で25.3%と減少傾向。
ただし、その割合は業種によって大きく異なり、2020年5月(宣言1回目)に「減った・計」割合が高かった飲食店、宿泊業(66.2%)や運輸業(41.8%)においては、2021年1月(宣言2回目)でもそれぞれ51.2%、40.4%と、多くの人で収入減が続く。

■2019年の12月と比較した収入の増減(業種別、%)※クリックで拡大します2019年の12月と比較した収入の増減(業種別、%)

集計対象:比較調査時点で同じ仕事を継続している就業者(休業者含む)
注:業種は、宣言1回目で「変化なし」の割合が低いものから順に並べている。「減った・計」には「給与は支払われなかった」を含む。

宣言下において、家事・育児時間が男女ともに増加傾向。

■家事・育児時間(末子年齢11歳以下の子供を持つ就業者、%)※クリックで拡大します家事・育児時間(末子年齢11歳以下の子供を持つ就業者、%)

集計対象:比較調査時点で同じ仕事を継続している就業者(いずれかの時点で休業した者を除く)、かつ「全国就業実態パネル調査2021」で末子年齢11歳未満と回答の者

年収が高いほど、特別定額給付金を「全く使用しなかった(全額貯蓄した)」割合が高くなる傾向に。

■特別定額給付金の使用について(%)※クリックで拡大します特別定額給付金の使用について(%)

※集計対象:「全国就業実態パネル調査2021 臨時追跡調査」回答者

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調査概要

【全国就業実態パネル調査(JPSED)2021 臨時追跡調査】
目的:2回目の緊急事態宣言下での働き方の変化を定点観測すること
調査対象:201912月時点で2059歳就業者で、かつ、「全国就業実態パネル調査2020」「全国就業実態パネル調査2020 臨時追跡調査」「全国就業実態パネル調査2021」「全国就業実態パネル調査2021 追加調査」のいずれも回答している人
有効回収数:8,587
調査期間:202134日~315
×年齢×就業状態×教育の構成が母集団を反映するようにウエイトバック集計を行っている

参考【全国就業実態パネル調査(JPSED)2020 臨時追跡調査】
目的:1回目の緊急事態宣言下での働き方の変化を定点観測すること
調査対象:「全国就業実態パネル調査2020」の回答者のうち2060歳、かつ、201912月時点の就業者から約1万人を無作為抽出
有効回収数:10,317
調査期間:2020629日~71
×年齢×就業状態×教育の構成が母集団を反映するようにウエイトバック集計を行っている

【全国就業実態パネル調査(JPSED)2021】(速報値 2021年6月公開予定)
目的:全国の就業・非就業の実態とその変化を明らかにすること
調査対象:全国15歳以上の男女
有効回収数:56,064名 
サンプリング:以下の6つの属性で割付を行った
・性:男性/女性
・年齢:1519/2024/2534/3544/4554/5564/6569/7074/75以上
・就業状態:労働力人口/非労働力人口
・就業形態:自営業/家族従業者/役員/正規/非正規/完全失業
・教育:大卒未満/大卒以上/在学中
・居住地:北海道/東北/南関東/北関東・甲信/北陸/東海/近畿/中国/四国/九州/沖縄の11エリア
調査期間:202117日~129

参考【全国就業実態パネル調査(JPSED)2021 追加調査】
調査対象:調査対象:201912月時点で2059歳就業者で、かつ、「全国就業実態パネル調査2020」「全国就業実態パネル調査2020 臨時追跡調査」「全国就業実態パネル調査2021」いずれも回答している人
有効回収数:9,016
調査期間:2021114日~25

参考【全国就業実態パネル調査(JPSED)2020】
目的、調査対象、サンプリング:「全国就業実態パネル調査2021」と同様
有効回収数:57,284名 
調査期間:202019日~131

※調査方法はいずれもインターネットモニター調査

集計対象について
■緊急事態宣言下の影響を把握するため、居住地エリアを2回目の緊急事態宣言における対象地域(東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡、栃木、岐阜、愛知、京都)に限定している。
■2019年12月時点で2059歳の就業者に限定している。