コミュニケーションの型知“伝える”技術でどんな相手をも動かす

入社式での挨拶、新制度導入のための説明会など、人事は人前で話す機会が多い。しかし、メッセージを届けさえすればいいスピーチとは異なり、プレゼンテーションの目的は"人を動かす"ことにある。会社説明会における"人を動かす"とは、当然、応募してもらうこと。そのためには、内容はもちろん大事だが、伝え方に工夫が必須だ。
また、このケースではこれまでに採用したことのないタイプのIT人材が対象である。引く手あまたの彼らは、会社を品定めするスタンスで臨んでくるし、感性も独特だ。通常の会社説明で話す相手よりは手強い相手といえるだろう。彼らを"動かす"には、どんな"伝え方"をすればいいのか。ポイントとなるのは次の3点だ。

聞き手の興味・関心を持続させる工夫とは?

①開始3分で聴衆を巻き込め

日本プレゼンテーション教育協会の西原猛氏によれば、「人は最初の3分でおもしろそうな話かどうかを判断してしまう」という。開始3分で惹きつけることができなければそのプレゼンは負けなのだ。既に下調べしている聞き手に対し、オーソドックスに会社概要から話し始めたのでは、相手は「聞く価値がない」と感じてしまう。こうなると終盤に重要な話題をもってきても、もはや訴える力はない。そのため、冒頭には、手持ち
のトピックスのなかから「相手が知りたいこと」「相手が知らないこと」を選ぶ。たとえば、採用の規模や人材育成投資額とその内容などは、今回の場合の導入としては最適だろう。

②質問を効果的に使え

1対多のプレゼンでは、コミュニケーションが一方通行になり、聞き手を退屈させてしまいがちだ。「しかし、"考える"という作業を差し挟めば集中力を持続させることができます。そのために有効なのが質問です」たとえば、「我々が今、あえて未知の領域に進出する理由は何だと思いますか?(一呼吸)それをこれから解説しましょう」といった前問後答という手法がある。質問を投げかけて一呼吸置くことで、聞くだけの単調なリズムを変えることができる。

細かい配慮でプレゼンの質を上げる

③声や目線、身振りにも気を配れ

聞き手の関心や集中力を維持し、プレゼンの内容をより効果的に伝えるためには、声や目線、身振りへの配慮も欠かせない。とくに、聞き手の関心を持続させるために重要になる項目は上の図に示した通り。このうち視線を動かしながら話すことは、自分のプレゼンを聞いてもらえているかどうかをその都度確認する意味ももつ。
もちろん慣れた人であれば、伝える技術は知識としてインプットはされているはず。ただし、すべてを完璧に実践できている人は稀だと西原氏は指摘する。「誰にも自分では気づいていない癖があるものです。たとえば、文の途中で別の人へと視線を移すプレゼンターは意外に多いのですが、中途半端なタイミングで視線を外された聞き手は違和感を覚えます。視線は一文ごとに移すのが正解。このような細かい点まで気を配ると、プレゼンの質はぐんと高まります」
また、会社が新しい事業に挑戦することを印象づけたい場合には、従する意味ももつ。
もちろん慣れた人であれば、伝える技術は知識としてインプットはされているはず。ただし、すべてを完璧に実践できている人は稀だと西原氏は指摘する。「誰にも自分では気づいていない癖があるものです。たとえば、文の途中で別の人へと視線を移すプレゼンターは意外に多いのですが、中途半端なタイミングで視線を外された聞き手は違和感を覚えます。視線は一文ごとに移すのが正解。このような細かい点まで気を配ると、プレゼンの質はぐんと高まります」
また、会社が新しい事業に挑戦することを印象づけたい場合には、従来のように演台の後ろに立つのではなく、「壇上を歩きながら話す」といったスタイルを試すのも有効だ。こうした"伝える"技術を活用し、さらにそこに熱意が加われば人を動かすことが可能になる。

Text=伊藤敬太郎

西原猛氏
日本プレゼンテーション教育協会代表理事。
Nishihara Takeshi 著書に『ぐるっと!プレゼン』(すばる舎)などがある。