フツウでないと戦力外?家族の介護を担う社員

事前準備で「介護離職ゼロ」を目指す

What's this number? 12.9%

介護離職者の数は、年間8万〜10万人。辞めた人の平均介護従事年数は2.5年だが、家族が介護状態になったら「すぐに」辞める人が全体の12.9%もいる。
介護は育児と違い、終わりが見えない。実際、10年以上というケースもある。だからといって、直ちに離職を決断するのは早計だ。要介護者の状態や社会資源の利用によって、介護負担が軽くなることもあるからだ。介護を理由とする離職を防ぐためには、何が必要なのか。介護と仕事の両立支援を推進する、双日人事総務部人事・ダイバーシティ推進課の酒井雅之氏は、「社員がどれだけ事前に介護に関する情報を持ち得るか。これに尽きます」と言う。
一般的に、介護は突然に発生することが多く、そして、働く人のほとんどは、介護が現実のものとなるまで真剣に考える機会を持たない。そのせいで、介護事由が発生したら誰に相談すべきか、社会保障や会社の制度をどう使うのかがわからず、慌ててすべてを自分で担おうと離職を選ぶケースが多いのだ。

2015年11月開催の介護セミナーには、夜間にもかかわらず40名が参加。40歳以上の男性社員が目立った。参加するまで、介護をプロに任せるという選択肢が視野に入っていなかった人も多い。

そこで、双日では、介護に関するガイドブックを作成したり、社員対象の介護セミナーを定期的に開催し、介護認定の手続きやケアマネジャーの選び方、介護施設の種類など、介護保険に関する情報を提供している。
「参加者は社内のイントラネットで募集するほか、40歳以上の社員には、人事部の担当者が直接連絡しています。40歳以上は、要介護認定を受ける割合が増える75歳前後の親がいる可能性が高いからです」(酒井氏)。また、セミナーでは、社内の介護支援制度・社外提携サービスも紹介する。介護休職(*)は、家族で支援体制を考えたり、介護サービス利用の準備をするなど、介護に関する長期的方針を決めるための期間であると、初めて知る社員も多いという。
なお、同社では、介護休職・介護休暇は法定を超える日数を用意し、短時間勤務や介護による退職者の再雇用制度も整えている。こうした制度の充実も、「実際に介護に直面しても、仕事と両立できる」という安心感を生みだしている。

(*)双日では介護休業ではなく介護休職という言葉を使用。
※「仕事と介護の両立と介護離職」明治安田生活福祉研究所とダイヤ財団の共同研究(2014)に基づく。

Text=湊美和Photo=鈴木慶子