業界の取り組み岡山交通株式会社:ポロシャツ&時短勤務でドライバーの働き方改革

岡山交通・土江氏岡山交通株式会社
代表取締役兼COO 土江富雄氏

長時間労働や不規則な勤務体系などを理由に、慢性的な人手不足に悩まされるタクシー業界。状況を改善するには、ドライバーが長く、快適に働ける環境を整えていく必要がある。そこで今回は、先進的なドライバーの働き方を模索する両備グループ・岡山交通の代表取締役兼COO・土江富雄氏にインタビュー。同社が取り入れる夏季のクールビズや4種のフレキシブルな勤務ダイヤなどの事例をもとに、ドライバーにとって働きやすい環境を考える。(聞き手:坂本貴志)

周囲への丁寧な調整でクールビズを実施

── 2020年7月に、ドライバーのポロシャツ着用を開始しました。取り組みの詳細について教えてください。

夏制服ポロシャツ.JPGのサムネイル画像のサムネイル画像岡山交通では夏季限定でポロシャツ勤務を導入、働きやすい環境づくりに努めている

岡山交通は、1944年に設立した企業です。タクシー事業をメインに展開しており、在籍ドライバーは約400名、車両数は中国・四国地方最大の約340台。その他、ハイヤーや貸し切りバスの手配、不動産賃貸などの事業を手掛けています。ポロシャツ着用を開始した理由はシンプルで、ドライバーの働きやすさを追求するためです。これまでタクシードライバーは、夏場でもカッターシャツを着て、ネクタイを締めるのが当たり前でした。ですが、昨今は業界を問わずクールビズやドレスコードフリーが進んでいますし、タクシー業界でも服装の自由化を求める声が大きくなっています。そこで、当社でも夏季限定でポロシャツを導入し、ドライバーの柔軟な働き方を後押ししようと考えたのです。

─ 実際にポロシャツを導入してみて、いかがですか?

ドライバーからは「夏場でも涼しくて快適」「素材が柔らかいので動きやすくなった」と好評です。速乾性に優れた生地なので、洗濯やアイロンの手間が減ったという声も多く上がりました。お客様からも、見た目が涼しく、爽やかになったと反応をいただいていますね。

─ 導入にあたって、工夫した点はありますか?

ホテルや大企業の支店、官公庁など、よくご利用いただく得意先への事前説明は丁寧に行いました。ポロシャツを導入する理由や着用期間、シャツのデザインなど細かい点も含めて、です。説明してみると「良い取り組みですね」と前向きに受け止めてくださる方がほとんどでした。冠婚葬祭や重大な行事などを除けば、夏場は9割方ポロシャツでサービスを提供しています。

もう一つ工夫したのは、シャツの色です。社員やお客様に事前のアンケート調査を行い、いくつかの候補から紺色に絞り込んでいきました。何色か選べるようにしてもいいのでは、という意見もありましたが、あえて色を統一。お客様から「紺のポロシャツ=岡山交通」と認識していただけることも、ブランディングの観点で重要な要素の一つですから。

柔軟な勤務体系が定着に繋がる

── ほかに、働き方改革として取り組んでいる施策があれば教えてください。

岡山交通社屋外観

勤務体系は下記から選ぶことができます。

① 日々の仕事時間が長いが、休日が多い勤務
② 朝に出社して、夕方に退社する勤務
③ 夜に出社して、明け方に退社する勤務
④ 一日5時間 時短勤務 ※社会保険非加入者対象 例:6時出社〜11時退社

基本的に①を選ぶドライバーが多いですが、②を選び、家族との時間を大切にするドライバーや、③を選び、より多くの賃金を望むドライバーなど、自分に合った働き方ができるようになっています。選んだ勤務についても、開始時間や終了時間、休日の曜日などはドライバーの希望にあわせて柔軟な対応ができるようにしています。また、近年は④を選んでワークライフバランスを整えるスタイルも増えていますね。実際、勤務体系をフレキシブルにしてから、採用の応募数やドライバーの定着率も上がりました。

── 短時間勤務を認めていない会社もある中、とても良い取り組みですね。

特に都会の企業では、そこまで導入が進んでいないでしょうね。短時間勤務は「年金の受給もあるけど、少し生活費の足しが欲しい」と、高齢のドライバーから人気です。当社の定年は65歳ですが、再雇用などの制度もあるので70歳まで働いているドライバーもいます。それ以上の年齢のドライバーを採用していた時期もありましたが、70歳を超えると自動車の事故率が上がるというデータもあり、そこは難しいところです。毎年数名ほど新卒も採用しているので、社員の年齢幅は広めですが、個々人の望む働き方を実現できるように制度を整えていく予定です。

人手不足は、当社に限らずタクシー業界全体の課題で、手を打たなければサービスを提供していくための働き手の確保は今後ますます難しくなるでしょう。だからこそ、現状の課題をしっかりと捉え、今所属しているドライバーにとっても、この業界に興味を持ってくれる人にとっても、働きやすい魅力的な職場を作っていかなくてはいけないと考えています。少しずつ、タクシー業界のイメージを変えられるような取り組みを、ここ岡山から発信できればと取り組んでいます。

執筆:高橋智香