業界の取り組みグリーン警備保障:人材が定着する「厳しすぎない」組織づくり

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専務取締役 小林正樹氏

人手不足が叫ばれる警備業界において、人材の定着は差し迫った課題だ。では、警備員が「長く」働ける組織には、一体どんな特徴があるのだろうか。今回は、東京に本社を置くグリーン警備保障株式会社(以下、グリーン警備)にインタビュー。「警備員が辞めない、働きやすい組織づくり」を掲げる同社は、具体的にどのような取り組みを行っているのか。専務取締役・小林正樹氏の話から、人材定着のヒントを探る。(聞き手:坂本貴志)

警備員が「辞めない」組織づくり

── 警備員の定着に積極的に取り組まれていると聞きました。その背景を教えてください。

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グリーン警備は、首都圏を中心に警備サービスを提供しています。現在、約5100名の警備員と約300名の内勤、計5400名ほどが働いていて、業務は交通誘導警備(道路工事や建築現場で交通誘導を行う)が99%です。警備員は非正規雇用が中心で、70歳以上が1000名、60代・50代が2000〜3000名程度と、この業界はどこもそうですが、年齢層は高めです。

人材の定着に力を入れる理由は、端的にいうと「人手が足りないから」です。そもそも、この10年ほどで交通警備のニーズは増えています。公共工事の増加や東京オリンピック・パラリンピックの開催、安全意識の高まりなどがその背景です。もちろん企業によって状況は様々ですが、業界全体として「ニーズはあるのに人が足りていない」状態が続いているのは事実だと思います。

─ なぜ、警備業界は離職率が高いのでしょうか?

いくつかの要因がありますが、大きいのは勤務体系の不規則さや給与の問題でしょう。特に、交通警備の繁忙は公共工事のスケジュールに左右されるので、どうしても繁閑差が出てしまいがち。工事が減る4月、5月は、必然的に仕事が少なくなるので、離職率も高まります。それから、基本給の仕組みや残業の扱いも企業によって違うので、より良い条件を求めて転職をする人も多いのです。

─ そうした課題に対し、グリーン警備ではどのような施策を行っていますか?

当社では、有給休暇や給与の制度を他社に先駆けて積極的に整えました。たとえば、通常は入社後6カ月ほど経たないと与えられない有給休暇を、当社では入社して3カ月で3日分付与。年間の有給休暇は10日なので、残り7日分も入社して半年で付与します。これには、閑散期には有給休暇をうまく利用してもらい、警備員が安定して働ける環境を作りたいという意図があります。また、実務的なメリットもあって、5000人以上いる警備員の有給取得状況を管理しやすくなりました。

給与制度についても、定期的に見直しています。現在は時間給を採用しており、時給1225円×8時間=9800円が一日あたりの日当です。また、残業が発生した場合は、別途残業代を支払います。物価の変動もありますが、10年前は日当がだいたい7500円程度だったので、給与ベースではかなりアップしています。警備業界では、残業代が払われない、日当で固定されていて現場によって労働時間の多寡が生じる、といったケースも少なくないので、フラットに見て給与制度は整っているほうだと思います。

いい意味での「ゆるさ」が定着のカギ

── 有給休暇や給与制度を整えたことで、効果はいかがですか?

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離職率は他社に比べると低いですし、採用も順調に行えていることから、効果が出ていると感じています。「給与が低い」「労働環境がきつい」という理由で去る人も極めて少ないです。当社にはシニアの警備員も多く在籍していますが、むしろ若い世代よりも精力的にシフトに入られる方も多いくらい、皆さん生き生きと働いています。

もちろん、仕事内容との相性の問題などもあるので、一定数辞められる人はいます。もともと短期で働くことを前提に入社していて、一定期間働いた後に別の会社に移られるというケースもありますね。ですから、辞める理由が消極的なものでなければ、ある程度短い期間で辞めて次の仕事をするというような人がいてもいいのだと思っています。

── 採用面にもポジティブな影響がありそうです。

おかげさまで、毎月一定数の応募はいただいています。面接をしていても、こうした待遇面に魅力を感じて入社を希望してくれる候補者は多いと感じますね。

人材の定着に関して、当社がもう一つ力を入れているのは「厳しすぎない」組織づくりです。現場仕事ということもあり、警備は建設現場の監督や上司に厳しいことを言われたり、ガチガチなルールにしばられたりと、どうしても「きつい」仕事になる側面があります。もちろん、社員に非があればそれは改善すべきですが、あまりに厳しすぎると、萎縮して仕事をする気すら失ってしまいますよね。

そこで、グリーン警備ではいい意味での「ゆるい教育」を実践しています。たとえば、面接で敬語を使えていなくても、その場で落としたりはせず、これから敬語を身につけましょう、と寄り添います。遅刻をした社員がいたとしても、決して叱責はせずに、なぜ遅れたのかを丁寧に聞き、改善策を一緒に考える。こうしたカルチャーも、人材の定着に効いていると感じますね。

── 定着の 秘訣は、「厳しすぎない組織」にある、と。

そうです。中には厳しく教育したほうがいいという意見もあると思いますが、むしろ優しく、一緒に寄り添うほうが中長期的には本人のためにもなるし、もちろん長く働いてもらえれば我々のためにもなる。そもそもとして、他職種と比較して警備業界の賃金水準は高くないので過度な品質を求めるのは酷だと思います。そういった考えで経営を行っていますね。何より、人間生きていれば遅刻だってするし、ちょっとしたミスがあるのは当たり前ですから(笑)。

今は、業界全体で働き方改革を進めているタイミングです。だからこそ、勤務時間や給与、福利厚生といったハード面だけでなく、カルチャーや教育といったソフト面もセットで整える。せっかく当社を選んでくれた社員のためにも、楽しく働いてもらえる環境づくりをこれからも実践していきたいですし、業界全体でそうした動きが強まっていくといいなと思います。

執筆:高橋智香