定点観測 日本の働き方総雇用者所得・労働分配率(2019年7月版)

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内閣府「国民経済計算」によると、2018年の名目雇用者報酬は283.1兆円と対前年比+3.3%の増加となった。一方、雇用者報酬を国民所得で除して得た値を労働分配率とすると、2017年の値は68.4%となり前年比-0.5%ptと低下している。直近の労働分配率は低下しているものの、ここ最近をならしてみれば労働分配率は横ばい圏内で推移している。好況期においてはどうしても労働分配率は下がる傾向があるが、近年は、労働者が受け取る報酬の総額はしっかりと増えているといえるだろう。

雇用者報酬の増加には、①ベースアップの実施などで賃金が上昇していることと、②雇用者自体が増加していることが寄与している。リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」を用い、雇用者報酬の増加のメカニズムを明らかにしてみよう。

主な仕事からの収入について、非就業者の収入を0としたうえで、2018年の分布と前年からの変化をみたのが図2となる。収入の分布をみると、まず、年間400万円から500万円未満の人が7.2%(前年比+0.4pt)と増加するなど、中間所得者層から高所得者層が増えていることがわかる。一方で、1万円から100万円未満の人が11.6%と前年比±0.0%で横ばいとなるなど、低所得者は必ずしも明確に減少しているわけではない。そして、そのかわりに、収入が0であった人は37.5%(前年比-0.5pt)としっかり減少している。

さらに、2017年に収入が0だった人が2018年にどうなったかをみると、引き続き収入がない状態の人が大半ではあるものの、8.3%の人が1万円から100万円未満の層に移行していることがわかる(図3)。

これらの動きから、①継続して働いている人の収入が着実に増加していること、②労働参加の促進によって低所得ではあるものの所得を得る人が増えていることが確認できる。

平均賃金は賃金を受け取っている人のみを分母として算出されるため、昨今のように、大幅に労働参加が進んでいる状況で、平均賃金が実態を適切に表しているかは慎重に考えるべきだ。そして、労働者が受け取る富が増えているのかという視点で考えれば、雇用者報酬も含め総合的に状況を捉えるべきであり、それはここ数年で大きく改善しているといえるだろう。

図1 雇用者報酬と労働分配率
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注:労働分配率=名目雇用者報酬/名目国民所得
出典:内閣府「国民経済計算」

図2 収入の分布とその変化
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出典:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)2018、2019」

図3 2018年の収入の分布(2017年に収入がなかった人に限定)
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出典:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)2018、2019」
注:図2はxa19、xa18を、図3はxa19_l18を用いたウエイト集計を行っている。

文責:坂本貴志(アナリスト)
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