定点観測 日本の働き方出産離職(2020年11月版)

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第一子出産を機に離職する女性の割合は、長い間6割程度の高水準にあった(厚生労働省「出生動向基本調査」)。しかし、2015年(第一子出生年2010-14年)には、第一子出産離職率が 46.9%にまで大きく低下し、政府目標※に近づいた(図1)。リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)」を用いてその後の推移をみても、2016年に45.0%(第一子出生年2011-15年)、2017年に44.2%(第一子出生年2012-16年)、2018年に44.2%(第一子出生年2013-17年)、2019年に42.1%(第一子出生年2014-18年)と順調に低下しており、政府目標はすでに達成されている可能性がある。

妊娠判明時の雇用形態別に出産離職率をみてみると、妊娠判明時に正社員である方が、非正社員であるよりも出産離職率が低い(図2)。企業は、正社員と同様に、非正社員の離職防止にも力を注がなければならない。

また、職種別に出産離職率をみると、営業・販売職では出産離職率が高く、専門職・技術職は低い。労働時間が不安定になりやすい営業・販売職では、子育てとの両立が難しく、出産を機に離職するケースが多いのだろう。一方、専門的な知識やスキルを要する専門職・技術職は、育成するのに時間がかかるため、出産後も働き続けられるのかもしれない。

女性が出産を機に離職しないためには、短時間勤務や時間単位での有給休暇取得制度など、子育てと両立しながら働き続けられるような職場環境を整える必要がある。

※ 政府目標:2020年に第一子出産前後の女性の継続就業率55%まで上昇させる(出産離職率45%まで低下させる)。

図1 第一子出産離職率の推移teiten8-3-1_201120.jpg出典:厚生労働省「出生動向基本調査」、リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)2016~2020」
注:出産離職率とは、第一子の妊娠がわかったときに就業していた女性のうち、第一子が1歳になったときに非就業になった女性の割合である。JPSEDでは、調査設計上、末子についての聴取であるため、子どもが1人の女性に限定して算出している。xa16~xa20を用いたウエイト集計を行っている。

図2 第一子妊娠判明時の雇用形態別、職種別の出産離職率(第一子出生年2014-18年)teiten8-3-2_201120.jpg出典:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)2020」
注:継続者は現職の職種、離職者は前職の職種を用いている。xa20を用いたウエイト集計を行っている。

文責:孫亜文(研究員・アナリスト)
※2020年4月時点の本記事はこちら
※2019年3月時点の本記事はこちら
編集:リクルートワークス研究所
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