全国就業実態パネル調査「日本の働き方を考える」2022女性の賃金-条件を揃えても残る男女間賃金格差 孫亜文

一般労働者(短時間労働者を除く常用労働者)として働く女性の賃金水準は、近年増加傾向にある(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」)。
男性の賃金水準に対する女性の賃金水準の割合を表した男女間賃金格差(男性=100)をみると、年々縮まっており、2021年では75.2であった(図1今後の最新値は「定点観測 日本の働き方」の女性と男性の賃金格差を参照)。ただし、先進諸外国の8090と比較すると日本における男女間賃金格差は依然として大きい(注1)。

図1 男女別の賃金水準と男女間賃金格差の推移
2022-4-1.png出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」
注:一般労働者(短時間労働者を除く常用労働者)の状況である。

男女間賃金格差が生じる主な原因として、年齢、学歴、労働時間など属性の差異が挙げられる。
そこで、「全国就業実態パネル調査(JPSED)」を用いて属性を揃えた場合、どれだけ男女間賃金格差が生じるのかをみてみた。
20代から40代まで」「大学卒である」「正社員として入社時から同一企業に勤務し続けている(退職経験なし)」「週35時間以上働いている」「勤続年数が5年未満である」の順に属性を追加して揃えてみると、徐々に男女間賃金格差が縮まることがわかる(図2)。

図2 属性を揃えたときの男女間賃金格差
2022-4-2.png出典:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED2020~2022
注:年齢、学歴、就業状況、週労働時間、勤続年数の順に属性を揃えている。Xa20を用いたウエイト集計を行っている。


それでも、2021年時点では依然として約1割の差が残った。配置や育成方法などにおいて男女間で偏りが生じている可能性も指摘できるが、女性は結婚や出産を考え、仕事と家庭生活の両立がしやすい働き方を選んでいる可能性も考えられる。

男女間賃金格差を解消するためには、配置や育成方法などにおける男女間の偏りをなくすことだけでなく、女性がライフイベントによって働き方を調整しなくても済むような取り組みも重要であるだろう。
2019年の働き方改革関連法の施行以降、有給休暇の取得率は増えた。2020年には新型コロナウイルス感染症の拡大防止のためにテレワークも広がった。そして20224月からは、男性の育児休業取得促進に関する法令も段階的に施行されている。
女性に限らず、男性もライフイベントと仕事を両立できるようになれば、女性が働き方を調整しなくても済むようになるだけでなく、男女間での配置や育成方法の偏りもなくすことが可能になるのではないか。今後も企業の積極的な取り組みに期待したい。

注1:雇用者の男女間賃金格差は、OECD諸国平均88.3(差は11.7)。
https://www.oecd.org/tokyo/statistics/gender-wage-gap-japanese-version.htm

孫亜文(研究員・アナリスト)
・本コラムの内容や意見は、全て執筆者の個人的見解であり、
所属する組織およびリクルートワークス研究所の見解を示すものではありません。