リスキリングとは? ーデジタル時代のスキル再開発ー

2022年03月22日

リスキリングとは?

「リスキリング」という言葉が、さまざまなメディアで取り上げられています。
背景には、DXに取り組む企業が増えるなか、企業で働く人がデジタル技術の活用に関わるスキルを身に着ける必要が高まっていることがあります。
このような変化に対して企業は、そして個人はどのように対応していけばいいのでしょうか?
リクルートワークス研究所では2020年度から、リスキリングに関する研究を行っています。ここでは、リスキリングの今がわかる6つの質問にお答えします。

Q1.リスキリングとは何ですか?

A.デジタル化とともに生まれる新しい職業に就くために、今の職業で求められるスキルの大幅な変更に適応するために、必要なスキルを習得する/させることです。

リスキリングとは、「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で求められるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」を指します。とりわけ近年では、デジタル化とともに生まれる新しい職業や、仕事の進め方が大幅に変わる職業に就くためのスキル習得を指すことが多くなっています。

リスキリングと同じように使われている言葉に、「リカレント教育」があります。リカレント教育は、人生において学ぶ時期と働く時期を交互に繰り返しながら、仕事で求められる能力を磨き続けていくこと、そのための学び直しを指します。
一方リスキリングは、従業員が職場で必要なデジタル技術を習得し、これまで通り価値を生み出してもらうための取り組みであり、リカレント教育や学び直しとは異なるものです。

Q2.企業にとってのリスキリングとは、システムエンジニアやデータアナリストなどの、高度なデジタルスキルを保有する人材を育成することですか?

A.いいえ。企業がDXに本格的に取り組めば、全ての従業員のリスキリングが必要になります。

デジタル技術に関わるスキルと聞くと、システム開発や運用を担うエンジニアや、ビッグデータを扱うアナリストになるためのスキルをイメージする人は多いでしょう。しかし、企業が本格的にデジタル・トランスフォーメーション(以下DX)を実現するためには、これらのスキルを持つ人材の育成や確保だけでは到底たりません。

なぜなら、デジタル技術を用いた変革に本格的に取り組めば、企画の立て方、製品の作り方、お客様への届け方、金銭の受け渡しの仕方、原料の調達や在庫の管理まで、ありとあらゆる仕事のやり方が変わるからです。その変化を担うのは、社内のさまざまな現場で働く人々です。つまり企業は、社内のあらゆる人材が、デジタルツールを使いこなして価値を生み出せるよう、スキルの再開発に取り組む必要があります

また、企業がデジタルによる変革を続けていくためには、さまざまな持ち場で、日々仕事の非効率や顧客の不満に接している社員の声を生かすことが欠かせません。
しかし多くの社員が「デジタル推進は誰かがやってくれるもので、自分は関係ない」と思っている場合、そのような社員の声を生かして、デジタルで新たな価値を創造するような変革を続けることは難しいでしょう。つまり会社がDXに本気で取り組もうとすれば、ITベンダーやエンジニア任せではなく、できるだけ多くの従業員が、自分の仕事について解決すべき問題を見極め、デジタルによる課題解決をイメージできるようにすることも必要になります。

このように、企業のリスキリングの対象は全ての社員であり、いわゆる高度デジタル人材の育成とは分けて考える必要があります。

Q3.リスキリングは世界でも注目されているのですか?

A.はい。海外では日本に先んじて、リスキリングの必要性が訴えられてきました

日本では2021年頃からリスキリングが注目されるようになりましたが、海外では、2010年代後半から、リスキリングの必要性が叫ばれてきました。その最大の理由として、デジタル技術の急速な発展により、人の仕事が自動化されることにより、大量の失業が発生する「技術的失業」と言われる問題への懸念が高まったことがあります。

例えば、世界経済フォーラムは2010年代後半以降、女性や求職者、中小企業で働く人などを含めて、社会全体でリスキリングを進める必要性を継続して訴えており、2020年1月には、2030年までに世界の10億人に新たなスキルや就業機会を提供するプロジェクトを立ち上げました。
またアメリカでは、トランプ政権時代からリスキリングのための国家的対応が進められており、AT&TやAmazon、Walmartをはじめ、大手企業が従業員のスキルの再開発を行い、デジタル技術を活用した新たな仕事に移行できるようにするケースも目立ちます。

Q4.企業はどうやってリスキリングを進めたらいいですか?

A.スキルの可視化や学習プログラムの整備を始め、スキルの習得から実践で成果を出せるまでの環境を整えることが重要です。

企業がリスキリングに取り組む際のゴールは、社員が必要なスキルを身につけるだけでなく、実践の場で成果を出せるようになることです。そのためには、以下の4つの要素を揃える必要があります。
リスキリングの進め方
【スキルを可視化する】
新しく必要なスキルは何か、社員が今持っているスキルとのギャップがどのくらいあるのかを把握します。日本企業の場合、それぞれの職務に就く人のスキルを正確に把握していないことは珍しくありませんが、大量の人のスキルを再開発していく上では、社員のスキルを可視化することは欠かせません。

【学習プログラムを揃える】
これから会社で必要になるスキルを持っている人が社内にはまだ少ないことも多く、これまでのOJTと同じスタイルではうまく学びが進まないことがあります。社員が必要なスキルを身につけるために、どの学習プログラムを使うのかを具体的に検討し、用意する必要があります。

【学習に伴走する】
社員が効果的に学びを継続できるよう、進捗や学習時間、理解度などを把握し、一人ひとりが離脱せずに学べるような環境を用意するなど、学習に伴走することも重要です。学習管理システムを導入していれば、それらのプロセスをより効率的に進めることもできます。

【スキルを実践させる】
スキルを身につけたらすぐに実践できる訳ではありません。異動や社内インターン、特命プロジェクトへの参加など様々な方法で、スキルを実際に使い、小さな成功体験を積めるようにしていくことが大切です。

Q5.中小企業にもリスキリングは必要ですか?

A.中小企業にもリスキリングは必要です。リスキリングを行う上で、中小企業には大企業にはない強みもあります。

中小企業にとっても、今やデジタルの活用は重要な経営テーマとなっていますが、その実現にはリスキリングが欠かせません。人・時間・資金面での余力が小さい中小企業のリスキリングには、大企業とは異なる悩みがつきものですが、同時に中小企業には、大企業にはない強みもあります。

そのような強みの例として、「経営者の影響力」が挙げられます。中小企業では、経営者の発言や行動、姿勢が組織全体に大きな影響を与えますので、経営者がリスキリングの必要性を社内に発信することや、経営者自身が学ぶ姿勢を見せることは、社員の学びを促す上で重要です。
「機動力」も中小企業の強みです。大企業と異なり、中小企業ではスピーディにDXやリスキリングの戦略を定め実行することや、効果が見えない場合に軌道修正することが可能です。実際に、その機動力を生かして、大企業以上に本格的なリスキリングに取り組む企業も見られます。

このほかに、「社内の見通しやすさ」も強みと言えます。中小企業では社内にどのような人がいるかを把握しやすいため、従業員が今持っているスキルや本人の強みや希望を踏まえたリスキリングの機会を提供することが可能です。本人が納得感を持って学べることは、新しいスキルを身につける時に大きな助けになるため、一人ひとりのスキルや強みを把握したリスキリングを行うことには理があります。

Q6.働く個人はどのようにリスキリングを進めるべきでしょうか?

A.いきなりプログラミングなどに取り組む前に、テクノロジーの現状を知り、自分にあったスキルを考えることから始めるとよいでしょう。

リスキリングへの注目が集まる中、将来のキャリアへの備えとしてデジタルスキルの学習に関心を持つ人も増えています。その一方で、不安を抱えながらも何をしていいか分からないと言う人も多いようです。リスキリングに関心はあるが、まだ何をしていいか分からない人はどのようにリスキリングに取り組むといいのでしょうか。

まず言えることは、最初からプログラミングなどのスキルに飛びつくことは、必ずしも得策ではないということです。そのスキルが自分の長期的なキャリアに役に立つかどうか、そのスキルで自分が何をしたいのか、あるいは今いる組織で役に立つのかといった目的が曖昧なままでは、実践に耐えうるスキルを身につけるのは難しいものです。

最初に取り組みたいのは、デジタルの力で、今、何が実現できるようになっているのか、その技術は自分の仕事上の問題解決にどう役立つのかを理解することです。

今は、YouTubeでの動画解説やオンライン動画学習サービスなど、デジタル技術やサービスの入門・基礎について、無料または安価に学べる様々なサービスがありますので、それらを探してみましょう。最初から全てを理解することは難しくても、複数の情報にあたることで理解を深めることができます。

今いる職場で使っているソフトウェアの機能を深く学んでみたり、目の前の仕事の困りごとの解決に関わるデジタルツールの導入を提案してみたりすることも一案です。周囲にそのデジタルツールの導入の必要性を提案するためには、自分自身がそのツールについて詳しくなる必要がありますし、たとえ小さくでも実践の場でデジタル化を推進した実績は、次の、より本格的なリスキリングにも役立つはずです。会社にデジタルに関わる部署やプロジェクトがあれば、そこで働けないか機会を模索してみることも有効でしょう。

研究プロジェクト

リクルートワークス研究所では、リスキリングに関する2つの研究プロジェクトを、2020年度と2021年度に立ち上げました。
リスキリングの道筋や企業事例など、さまざまな角度からリスキリングを知ることができます。ぜひご覧ください。