宿泊業の「働き方改革」10のキーワードKeyword6 賃金の引き上げ

サービスレベルに見合った魅力的な賃金水準の実現

リクルートワークス研究所の調査では、宿泊施設の接客スタッフの正社員の年収は、調査対象全体の正社員と比較して70%程度、サービス業全体と比較しても90%程度と低い水準にとどまっている(図7)。これでは、優秀な人材が集まらない。もちろん、利益が出ていなければ、賃金の引き上げは実現できないが、一方で賃金が魅力的なものでなければよい人材は集まらない。先行的に取り組んでいる企業は、収益を賃金というかたちで社員に分配し、他産業と同水準以上の賃金を実現して採用力を強化することで、人材獲得に成功している。

また、宿泊業の接客スタッフは自分の働きに対する評価に満足できていない割合が高い(図8)。キャリアステップの基準や、それによる賃金の上昇の仕組みを明らかにして、従業員の働きがい、モチベーションを引き出すことが求められる。今後、労働力人口が減少する中で、いかに優秀な人材を確保し、定着させていくのかが最大の経営課題となる。人的サービスの源泉である優秀な人材を獲得し、売上・利益とサービスの好循環を生み出すためにも、あるタイミングで思い切った賃金への還元が求められる。