社会的活動(仮称)に関するインタビュー地域の「マイクロタスク」の担い手不足をどう解決するか。ジモティー代表取締役社長加藤貴博氏

「ジモティー」といえば、不用な家具や家電などの引き取り、売買の仲介サイトというイメージが強い。だが、今回リクルートワークス研究所が注目するのはサイト内の「助け合い」の掲示板だ。ここでは、雨漏りの修理や庭の手入れといった「身の回りの困りごと」が依頼され手助けしたい人とマッチングされている。地域内で完結できる労働需給のマッチングシステムは、地方でより深刻な「労働供給制約」の課題解決のヒントにも連なる。サイトを運営するジモティー代表取締役社長の加藤貴博氏のお話から、「労働供給制約社会」に対応するためのヒントを考えていく。(聞き手:リクルートワークス研究所 古屋星斗)

マイクロタスクの依頼先が弱体化

――サイト利用者の属性を教えてください。

加藤 サイト全体では4050代の男女が主です。家庭があって、郊外の戸建て住宅で暮らしている人物像が浮かびます。助け合いカテゴリーも同様ですが、最近は6070代の増加が目立ちます。

――「助け合い」や「メンバー募集」の掲示板にはどのような書き込みが多く見られますか。

「ジモティー」のウェブサイトにはさまざまなカテゴリーが並ぶ「ジモティー」の掲示板にはさまざまなカテゴリーが並ぶ

加藤 「マイクロタスク」と言われるような、時給で人を雇うほどの仕事ではない「すき間時間にちょっと手伝ってもらえませんか」という類の困りごとの投稿が増えています。例えば、「家の雪かきを手伝って」みたいな依頼です。そういった依頼が、個人個人の家単位でされています。

――リクルートワークス研究所では、労働需要に対して労働供給が不足する「労働供給制約」の問題は地方から顕在化していく、と予測しています。加藤さんはどう見ていますか。

加藤 「助け合い」の掲示板への投稿を見ると、庭の草むしりやシャッターの修理といった、生活を維持するうえでの「ちょっとした困りごと」を依頼する人が多いのがわかります。その際、頼み先がなかなか浮かばない、という現実的な課題に直面してサイトを利用していただいているのが実情だと思います。かつては近所の親しい人や地域の顔見知りの業者さんに頼んでいたのですが、今は公的な機関も含め、マイクロタスクの依頼先が弱体化しています。地方における労働供給制約は現在進行形の課題と捉えています。

地方で感じる最も大きな変化は、核家族化がすさまじいスピードで進み、一人暮らしの高齢者が急増していることです。若い人たちが都市部に集まり、実家近くに住む子ども世代も少ない。その結果、高齢者が身の回りの困りごとを家族や近所の人にお願いできる環境がどんどん失われています。業者に水回りの修理を依頼した高齢者が高額請求されるトラブルが各地で相次いでいますが、高齢者世帯の孤立が背景にあると感じています。

――かつては不当な高額請求をする業者は、悪い評判が広まり商売できなくなったはずですが、今は地域で担い手が減り、依頼する側も選択の余地がなくなっている面もあるのでは、と推察します。労働市場では労働力と仕事の需給マッチングが大きな課題ですが、ジモティーの場合はいかがでしょう。

加藤 マッチングが100%成立しているかどうかまで厳密に追ったことはありませんが、少なくとも「助け合い」のカテゴリーに投稿される依頼件数と、それに呼応する件数のバランスに大きなずれはありません。

――物の売買や譲渡のカテゴリーでマッチングしやすいのはわかりますが、「手伝って/助けて」という「助け合い」の需給バランスもよいというのは意外です。依頼に応じる人が多いのは、なぜだとお考えですか。

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加藤 地域コミュニティーに貢献したいという人や、可処分時間がある方に対応していただくケースが多いのはジモティーの特徴です。これとは別に、便利屋さん的にその地域で仕事をされてきた方にも使っていただいています。もともと生業にしている方がジモティーの利用者の小さな困りごとを解決することで信頼を得て、その後も継続的に仕事を続けているようです。

リユース拠点に持ち込まれる「ちょっとした仕事」の依頼

――地方では、生活インフラの維持すら困難になるなか、自治体がジモティーを活用して市民にサービスを届ける取り組みも始まっています。20225月に実施した広島県三次市の「市道の除草作業」の参加者を募集した実証実験について教えてください。

加藤 これまでは市が業者に発注していた除草作業を、ジモティーを通じて直接、市民に参加を呼びかける仕組みに切り替える取り組みです。参加者に報償費を支払うシステムも弊社がDX化しました。市民に参加してもらうことで地域でお金や人手が循環する仕組みは素晴らしいと思い、協力させていただきました。オンラインでスマートフォンから手軽に参加申請できるため2070代と幅広い市民の申し込みがあり、「地域の活動を支えたい」と話す市内在住の若い女性もいました。全国の労働力を必要とする自治体と、地域住民の余剰時間をマッチングすることで、高齢化や過疎化による労働力不足を解消し、地域内における互助の仕組みの実現を目指したいと考えています。

LOCONET自治体と地域住民のマッチングを促進することで労働力不足を解消し、作業負担を軽減する自治体向け電子申請・申請承認システム「LOCONET」

――地域での取り組みとしては、ほかにどのようなサービスがありますか。

加藤 「ジモティースポット」という自治体と共同運営のリユーススポットを、東京都の世田谷区、日野市、八王子市に開設しています。粗大ごみとして処分するのはもったいない、まだ使えそうな物を持ち込んでもらい、リユースできる交流スポットです。ここで意外だったのは、もののリユースの拠点でありながら、不用品を家の外へ運び出すのが大変という話から始まって、自宅の雨漏りで困っている、終活で遺品整理がなかなか進まないといった、まさにマイクロタスク、ちょっとした仕事のお悩みのニーズがたくさん集まってくることです。利用者の方や自治体の方と直接お話しできる機会は貴重ですが、マイクロタスクの担い手とのマッチングのニーズは都市部にも多いと実感しました。

――自治体が抱える課題について加藤さんはどう考えていますか。

加藤 先にも触れましたが、不用品を1つ処分するのにも高齢者のみの世帯だと、運び出すのが大変だから家まで来てくれるサービスはないのかといった相談や、自宅の修繕や庭の手入れといったサポート要請も自治体に寄せられるそうです。自治体も増え続けるこうした要望すべてには応えられなくなっていると感じます。こうした声に応える住民サービスを一緒に作れませんか、といった打診を自治体からいただき、弊社もぜひ取り組むべき課題だと考えています。地域の方が地元の課題解決に積極的に関わりたいと思える仕組みづくりが大切になると思います。

時間を等価交換できれば「時給」という概念は不要になる

――空き時間でマイクロタスクを担う住民と一緒に取り組む際のポイントの1つが、お金のやりとりの問題だと思います。労働の対価としてお金以外に、どういった仕組みがあり得るでしょうか。

加藤 非常に難しい問題ですが、それは以前から私が考えてきた課題です。部分的には成立可能と思っているのは互助的な考え方に基づくシステムです。例えば、30分間の労働を提供した人には30分間、助けてもらう権利が付与されるという形。あるいは、草刈りの仕事で貢献した見返りに自宅のペンキ塗りを手伝ってもらう、という形でもいい。こうした時間や労働を等価交換する仕組みが整えられれば、「時給」という概念は不要になります。逆に、金額で価値付けしてしまうと、助けたり手伝ったりすることの意味や価値にずれが生じるリスクもあります。あえてお金に換算しない労働提供の形式としては、感謝ポイントや、コミュニティーのメンバー間で報酬を贈り合う「ピアボーナス」のような制度もあり得ます。そもそも「助け合い」という言葉には、ギブ・アンド・テイクというか、一度助けてもらったから、今度は自分がこの地域の誰かを助けたいという自然な感情が含まれていると思います。地域内で「お互い様」の感覚や感謝の思いが循環していく仕組みを築きたいと考えています。

――お金には利息がありますが、時間の等価交換のような仕組みには、利息が生じない分、等価交換が成立しやすいとも言えますね。

加藤 そうですね。よい意味での義理や感謝の貸し借りを社会に流通させるのは悪くないと思います。リアルに困っているエンドユーザーを見続けている人は課題を明瞭に言語化でき、課題解決に向き合う熱量もまったく違います。現場で具体的に解決すべき課題、助けるべき相手が見えている人から学ぶべきところは多いと感じています。

――リクルートワークス研究所は、労働供給制約が510年後の日本社会の最大の課題になると予測しています。そうした未来に向けてチャレンジしなければならないことは何だとお考えですか。

加藤 地域の方の困りごとを解決するのに、金銭的なリターンももちろんあっていいと思いますが、時給が高いから、という観点だけでなく、地域の一員である自分だからこそできるといったやりがいや、この地域をよくするのは自分なんだという「地域のオーナーシップ」のような意識を持つ方が参加しやすい仕組みの成功事例を重ねることが未来を明るくするのに必要だと感じています。そのためには、どの地域にも応用できる汎用性のあるサービスの確立を急ぎたいと考えています。さらなる少子高齢化社会に向けて人や物のリソースを円滑に活躍させるには、高度な情報伝達システムの構築が不可欠です。営利追求だけでなく、社会の持続性に貢献する企業を市場が育てる仕組みも重要だと思います。

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加藤貴博氏■プロフィール
加藤貴博氏 
ジモティー 代表取締役社長
早稲田大学政治経済学部卒業後、2001年リクルート入社。 広告営業、メディアプロデューサー、編集長、新規事業開発責任者を経て、2011年ジモティーの代表取締役に就任