機械化・自動化で変わる働き方 ―事務・営業編用語解説【事務・営業編】

RPA

RPA(Robotic Process Automation)はホワイトカラーの主に定型的な作業を、AIなどの技術を備えたソフトウェアのロボットが代行・自動化するという考え方で、「仮想知的労働者(Digital Labor)」と呼ぶこともある。用途としては作成済みのデータをほかのアプリケーションに繰り返し入力するような、データの登録・転記作業などに使われることが多い。また、社内外のシステムに接続し、操作したり連携させたりするような作業、例えばSFA(営業支援システム)やERP(基幹業務システム)へのデータ入力やWebサイトからの情報収集なども代行できる。利用者はRPA導入により、大幅な業務効率化を期待できる。

AI-OCR

OCR(Optical Character ReaderまたはRecognition)は、画像データのテキスト部分を機械で認識し、文字データに変換する光学文字認識機能のことを指す。具体的には、紙の文書をスキャナーで読み込んで、書かれている文字を認識してデジタル化する技術である。AI-OCRは、OCRにAI技術を加えたもので、機械学習により文字認識率が向上し、手書き文字も含めて帳票フォーマットの設計をしない状態でも項目を抽出することを可能にした。経理・会計業務など大量の数字を取り扱う業務、請求書や納品書など日々膨大な帳票のやりとりが発生する業務、紙や手書き資料のデータ化を求められる業務では、大幅な業務の効率化が期待できる。

電子署名

従来の紙媒体での契約では、契約書の偽造防止のため、実印による押印や印鑑証明書の添付、契約書各ページへの割り印などの対応をしてきた。電子署名はこうした署名・捺印に当たる部分をデジタルで行う処理で、インターネットやメールを通じてデータ上で、契約書に署名捺印を行うことを指す場合もある。デジタル庁では電子署名について、「電磁的記録に記録された情報について作成者を示す目的で行う暗号化等の措置で、改変があれば検証可能な方法により行うもの」と定義している。電子署名ならではの重要な役割としては、第三者認証機関により本人が署名捺印したものであるという証明が可能なこと、署名後の改ざんのおそれがないことの2点があげられる。

チャットボット

チャットボットとは、「チャット(会話)」と「ボット(ロボット)」を組み合わせた言葉で、自動会話プログラムのことを指す。「シナリオ型」や「人工知能型・機械学習型」などがあり、シナリオ型は複数の選択肢から適切なものをユーザーが選び進むことにより、あらかじめ設定されたシナリオに沿って目的とする回答を導き出すタイプである。人工知能型・機械学習型は、ユーザーが入力した質問文からキーワードを抜きだし、AIが適切な回答を返すタイプのチャットボットである。自然な会話形式でやりとりができ、会話を通じて回答精度が上がっていくのが特徴で、顧客の要望に適した商品やサービスを提案するなど、複雑な対応に向いている。

自治体DX推進計画

本計画は、自治体が新型コロナウイルス感染拡大への対応に追われた際に浮き彫りになった課題(給付金の申請が煩雑で、給付されるまでに時間がかかったなど)から、DXを社会全体で推進すべきだとして総務省によって策定されたものである。これには外部デジタル人材確保のための方向性の策定や国による支援策、市区町村の進捗管理等支援ツールを構築し、市区町村の意見を丁寧に聞きながら標準化・共通化の取り組みを進めること、マイナンバーカードのさらなる普及促進に向けた自治体への支援策などが盛り込まれている。

マイナンバーカード

マイナンバー(個人番号)は、住民票を有するすべての国民に1人1つの番号を付与して、行政の効率化、国民の利便性を高めるための制度である。行政機関や地方公共団体などで、様々な情報の照合、転記、入力などに要している時間や労力を削減し、複数の業務の間での連携が進むことで、作業の重複などの無駄が削減される。添付書類の削減など行政手続きが簡素化され、国民の負担の軽減にもつながる。マイナンバーカードはマイナンバーを記載したICカードで、本人の申請により交付され、個人番号を証明する書類や本人確認の際の公的な本人確認書類として利用できる。また、様々な行政サービスを受けることもできる。保有するメリットとしては、本人確認の際の公的な身分証明書として活用できる、コンビニなどで行政上の各種証明書の取得が可能、各種行政手続きのオンライン申請が可能、といったことがある。

デジタル田園都市国家構想

デジタル田園都市国家構想とは2021年、岸田文雄内閣総理大臣のもとで発表された「地方が抱える課題をデジタル実装を通じて解決し、誰一人取り残されずすべての人がデジタル化のメリットを享受できる心豊かな暮らしを実現する」という構想である。2022年6月には、「第8回デジタル田園都市国家構想実現会議」を開催、地方における官民のデジタル投資を大胆に増加させるデジタル投資倍増に取り組む「デジタル田園都市国家構想基本方針」を公表した。政府はデジタル田園都市国家構想を「新しい資本主義」実現に向けた成長戦略、そして、デジタル社会の実現に向けた重要な柱として位置づけている。KPI(重要業績評価指標)としては地方公共団体1000団体が2024年度末までにデジタル実装に取り組むこと、2024年度末までにサテライトオフィス等を地方公共団体1000団体に設置すること、地域づくり・まちづくりを推進するハブとなる経営人材を国内100地域に展開することなどを掲げている。

AI契約書審査

AI契約書審査(レビューサービス)は、AIが自動で契約書のレビュー(リーガルチェック)を行うシステムのこと。AIが短時間で契約書に潜むリスクを洗い出し、条項の抜け落ちなどを指摘してくれるため、従来の契約書レビューの課題であった締結までの煩雑なやりとりや、業務の属人化の解消につながる。政府は同サービスについて、「既存のサービスは適法」という判断をわかりやすく示す方針を2022年12月に固めた。法務省が2023年春にもガイドラインなどで「適法と評価される具体事例」を示す。同サービスの主なメリットは、リーガルチェックの時間短縮、AIとのダブルチェックによる担当者の精神的負担の軽減、人的コストの削減、契約締結スピードの向上などがある。課題としては、すべての契約類型・準拠法にレビュー対応しているわけではなく対応範囲に限界があることと、人間のように自社の製品・サービスの特性や締結先との力関係などビジネス的な側面を踏まえて判定することはできないことなどがある。

AI損害査定

近年、自然災害が激甚化・頻発化しており、被災後には当座の生活資金や建物の応急処置費用等が必要となるため、保険金を速やかに受け取りたいというニーズが高まっている。こうしたニーズに応えるため、損害保険会社は台風等により被災した建物の損害額をAIで自動算出するシステムの導入を始めている。三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険が開発したシステムでは、被災者がスマートフォンやパソコンから損害写真を送信するだけで、AIが写真から損傷箇所を自動で解析・検出し、保険金を算出する仕組み。損害写真の提出だけで保険金を算出できるため、被保険者は修理業者から見積書を取り付けることなく、保険金を受け取ることができる。

SFA

SFA(Sales Force Automation)は営業支援システムのことで、営業部門のメンバー行動、商談の進捗状況などを可視化し、営業の生産性向上や業務改善を実現するためのツールである。SFAには顧客の住所、電話番号、担当者、決裁者の情報や過去のやりとりの履歴などがわかる顧客管理機能、見込み顧客に対するアプローチから受注に至るプロセスを管理する案件管理機能、営業担当者の行動を見える化してその無駄を減らす行動管理機能などがある。営業関連ツールとしてほかにMA(Marketing Automation)があるが、MAは営業活動の一部を自動化することで効率的なマーケティング活動を実現するためのツールで、主にリード(見込み客)獲得、育成を目的とする。

CRM

CRM(Customer Relationship Management)は「顧客関係管理」と訳され、顧客情報や行動履歴、顧客との関係性を管理し、顧客との良好な関係を構築・促進することを指す。顧客との取引や商談の日時、商談内容の履歴情報などを管理する顧客管理機能、主にメールなどを用いて顧客へ情報発信を行う配信機能、顧客からの問い合わせ内容を保存・蓄積する問い合わせ管理機能、蓄積された顧客データをもとに表やグラフを作成し、分析結果として示すデータ分析機能などの機能が多数備わっている。

バーチャルMR

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)等の環境変化に対して 、製薬会社では従来のMR(医薬情報担当者)による情報提供活動と合わせ、医療関係者のニーズに柔軟に対応するため、AIやVR(Virtual Reality)などのデジタル技術を取り入れた新しい営業スタイルが生まれつつある。バーチャルMRは、各社の医療関係者向けサイトなどでアバターが製品に関連する疾患情報を提供するもの。例えばツムラの医療関係者向け『ツムラ漢方バーチャルMR』は、利用者が視聴したいメニューを選択すると、動く3DバーチャルMRがAI音声で自動プレゼンテーションを実施する。また、アステラス製薬は仮想現実(VR)と現実世界を融合したクロスリアリティー(XR)を活用した「デジタル営業」の領域を強化している。

AIセールスアシスタント

AIセールスアシスタントは音声認識AIを営業支援に活用したサービスのこと。人間の声をコンピューターで捉えて認識させる「音声認識技術」は、スマートフォンのアシスタント機能やスマートスピーカーなどで商品化されている。AIセールスアシスタントは音声認識AI技術を営業支援に役立てるもので、例えば大阪府を本拠とする池田泉州銀行では、営業担当者が日々作成する営業日報は営業回りの空き時間に音声で登録でき、帰社後の日報作成の負荷を軽減できるようにした。 野村證券では全国の営業店や本社で利用する約2万6000台の電話の通話記録を対象にした大規模な音声テキスト化システムを構築し、通話内容をテキスト化することで、顧客対応のモニタリングを効率化し、応対品質の向上やサービス改善につなげている。