ノンデスクワーカーの働き方警備・運輸・建設の仕事の性質 ー難易度が高く成長する仕事か、無理のない仕事かー

難易度が高く、急速に成長する仕事ではない

本稿では、ノンデスクワーカーの仕事の性質を明らかにしていく。仕事とはどうあるべきかを問えば、仕事とはやりがいあふれるものであるべきで、それを通じて成長する機会がなければならないと考える人もいるだろう。

リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」を用いて、職種別の仕事の性質を調べたものが以下となる(図表1)。同データは、ハックマンオルダムの職務特性理論に基づいて設計された望ましい仕事の性質が、それぞれの職種でどの程度含まれているかを示している。

このデータからノンデスクワーカーの仕事は、自分でしかできない難易度の高い仕事でもないし、キャリア通じてぐんぐん成長していくような仕事でもないことがわかる。たとえば、「単調ではなく、様々な仕事を担当した」にあてはまると答えている就業者の比率は全職種平均で38.5%であるところ、警備員は20.8%、トラックドライバーは22.4%、タクシードライバーは10.8%などと低い。「自分で仕事のやり方を決めることができた」も警備員で22.0%となっているなど、総じて低くなっている。

警備や運転などの仕事は決まったことを着実にやるという側面が強く、実際に経験年数が長くても給与もそこまで上がらない。ノンデスクワーカーの多くが自身の仕事について、残念ながら難易度の高い仕事とは思っていない事実がうかがえる。

図表1 仕事の性質①(職種別)
仕事の性質①(職種別).jpg出典:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」
注:2019年の数値。

一方で、無理のない仕事という側面もある

しかし、上述のような状況をみて、ノンデスクワーカーがつまらない仕事に追いやられていると考えるのは早計である。図表2は仕事上のストレスの原因となるネガティブな側面を切り取ったものであるが、ノンデスクワーカーは総じてこの職務におけるネガティブな側面が少ないのである。

まず、「処理しきれない仕事であふれていた」であるが、これに当てはまると答えている人の比率は一般事務が26.6%と全職種平均(22.6%)より高いのに対して、警備員(10.5%)、タクシードライバー(5.9%)など低い。業務負荷が高いというのは成長機会があることと裏表であるが、過度な業務負荷はストレスの原因となり、過度なストレスは健康にも悪影響を与え生活に大きな支障が生じてしまう。要は、みながみな成長できる難しい仕事をすばらしい仕事と考えているわけではないのである。実際に、同じ賃金をもらえるのなら気楽な仕事をと望む声は少なくない。

ストレスによって、「精神的に病んでしまう人が発生した」人の比率は、警備員(14.4%)、トラックドライバー(15.1%)、建設作業者(8.4%)などを中心に、明らかに低い傾向がある。

また、一般事務のような密室で多くの人とともに仕事をする職種と比べて、パワハラが発生する確率も低い。建設作業者などは厳しい口調でやりとりをするイメージがある人もいるだろうが、密室で陰湿ないじめのようなものを受けていると感じている人は少ないのである。

一方で、身体的な負荷には明らかに課題がある。トラックドライバーや配達員は2割を超える人が職場で身体的なけがを負う人が発生していると答えている。重たい荷物を持つことで腰痛になってしまったという人や場合によっては事故に遭ってしまったという人もおり、こうした身体的な負荷を下げる取組みは必要不可欠である。


図表2 仕事の性質②(職種別)
仕事の性質②(職種別).jpg出典:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」
注:2019年の数値。

世の中にはいろんな仕事があっていい

世の中にはいろいろな人がいる。仕事は人生そのもので仕事を通じて成長することを人生の目標としている人もいれば、仕事は無理なく終わらせて家庭生活や趣味を充実させたいという人もいる。

同じ人でも生涯を通じて仕事に対する考え方が変わることもある。もともとなりふり構わず一生懸命に仕事をしていた人でも、子どもを持つと同時に家庭生活に重きを置きたいという人もいる。また、企業で長年出世を求めて働き続けた人が、高齢期に体力や気力が落ちてきて無理のない仕事を求めるという例もある。

こうした中、仕事もいろいろな仕事があってよいのではないだろうか。仕事を通じて目一杯成長して賃金を高めていく職があってもいいし、いつでもだれでも無理なく世の中に貢献できる職があってもいい。そして、ノンデスクワークの多くは後者の方向性にかじを切ることが必要だと私は思う。つまり、ノンデスクワーカーの仕事を無理のない仕事に変えるということが重要なのである。

そのためにやらなければならないことはたくさんある。これまで述べてきたように、短時間労働の仕事を増やす工夫が必要であるし、現場仕事であっても自由な働き方を認める方向にかじをとらないといけない。また、ストレスフリーな仕事にするための取組みはさらに進めるべきであるし、身体的にも無理のない仕事に変える必要がある。

このように警備・運輸・建設などの仕事を変えていければ、女性や高齢者がもっと働いてもよいと思えるような仕事が社会で増えることにもつながるはずだ。

執筆:坂本貴志