なぜノンデスクワーカーなのか人手不足の最先端を走る、警備員、ドライバー、建設作業者などの働き方

人手不足が深刻化している

近年、生産年齢人口の減少に伴って人手不足が深刻化している。国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」によると、2020年の生産年齢人口は7406万人であるが、2030年には6875万人、2040年には5978万人にまで減少する。今後、65歳以上の高齢者の就労やデジタル化の進行によって労働需要の削減も進むであろうが、深刻な人手不足を解消する道筋は見えないままだ。

しかし、こうした状況に関する実感に乏しいという人もいるのではないか。たとえば、大企業の事務職などはこのような実態とは程遠い状況にある。こうした職種で働きたい人は山ほどいるのである。実際に、事務職については、以前と比べれば優秀な人材をとりにくくなったというような状況を聞くことはあっても、いくら募集をかけても人が集まらないというような切迫した声を聞くことはほぼない。

図表1 生産年齢人口の推移
why_01.jpg出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」

警備員、建設作業者、ドライバーなどが本当の人手不足職種

一方で、たとえば、建設現場の人手不足の状況はこれとは全く次元の異なるものとなる。こうした現場で働く職種では本当に人がいなくなっていて、採用しようとしてもとれない状況にある。

図表2は日銀短観の雇用人員判断DIである。同DIは業種別に算出されており、人手不足になっている業種がわかる。新型コロナウイルスの感染拡大によって状況は大きく変動しているものの、足元でも人手不足が深刻な業界は、「運輸・郵便」「建設」「対個人サービス」「対事業所サービス」などがある。対個人サービスは介護などの業界が含まれている。「対事業所サービス」も雑多な業種から構成されるが、施設管理や警備などの仕事も含まれる。

これらの業種の企業は様々な職種に携わる従業員から構成されるが、そうした企業の人手不足とはおそらく、運輸・郵便や建設業で働く事務員が足りないわけではない。そうではなく、運輸・郵便ではトラックドライバーや配達員が足りないのであり、建設業では建設作業者が足りないから業界として人手不足になっていると推察される。

さらに、有効求人倍率からはハローワークを通じた職種大分類別の労働需給の状況がわかる(図表3)。やはり人が足りないのは、警備員などの「保安」の職業や「建設」の職業、トラックドライバーなどの「運転」の職業などである。

「サービス」の職業も有効求人倍率が高い。職業中分類を確認すると、家政婦やベビーシッターなど「家庭生活支援サービス」、「介護サービス」、理美容師などの「生活衛生サービス」などで高い有効求人倍率を記録している。

「運搬・清掃・包装等」の職業については大きな職業の括りでみると数値が低くなるが、職業中分類雑でみると、「運搬」や「清掃」など人材の獲得が難しい職種が混じっている。

図表2 雇用人員判断DI(業種別)
why_02.jpg出典:日本銀行「日銀短観」

図表3 有効求人倍率(職種別)
why_03.jpg出典:厚生労働省「職業安定業務統計」

図表4 サービスの職業と運搬・清掃・包装等の職業
why_04.jpg出典:厚生労働省「職業安定業務統計」

ノンデスクワーカーの働き方を探る

近年人手不足が深刻化している職種は、事務職などデスクに座って仕事をする人々ではなく、全国津々浦々の現場で活躍するノンデスクワーカーなのである。

こうした人たちの活躍はともすれば市井の人からは見逃されがちである。しかし、私たちが豊かな生活を送れるのは、日々の生活のインフラを提供してくれるこうしたノンデスクワーカーの活躍によるところが大きいのは、疑いようのない事実である。

本研究では、人手不足の最先端を走る「警備員」「建設作業者」「ドライバー」「配達員」「清掃員」などノンデスクワーカーの働き方を探る。そして、ノンデスクワーカーの働き方を無理のないものに変えることで、日本社会を持続可能な社会にするための方策を示していきたい。

執筆:坂本貴志