コロナ禍での働き方変化を解析するコロナ禍、従業員規模50人未満で影響甚大(2) 茂木洋之

前回のコラムでは、従業員規模50人を境にコロナが収入に与える影響が異なることを説明した。特に従業員規模5人未満の就業者は収入が減少した人が多く、しかも大幅な減少を強いられた人が多い。今回は、収入減少がなぜ生じたのかを考察しよう。労働時間の減少と生産性の低下から調べる。

労働日数も従業員規模50人を境に影響が異なる

労働日数の減少についてみてみよう(収入の集計と同様、こちらも労働日数が0日の人を含む)。結果は図表のようになった。労働日数が減少した人の割合は、全体では29.9%となっている。従業員規模が50人未満の企業について、3つの区分すべてにおいて30%を超えるなど高い割合となっている。前回の所得についても50人を境に減少した人の割合が異なることから、コロナ禍で労働ができずに収入が減少したことが想像できる。

さらに、生産性減少の人の割合をみよう。こちらは全体で25.3%となっており、就業者の約4人に1人が、生産性が低下していたことがわかる。従業員規模が300人以上の企業では3区分とも26%を超えており、大企業の生産性低下がみて取れる。大企業のほうが組織立った仕事が多く、テレワークの適用可否などによって、生産性に差がついた可能性がある。一方で2049人の従業員規模では23.0%と、生産性が落ちた人が他と比べて若干少ない。生産性については、従業員規模別での影響差はあまりないと言っていいだろう。少なくとも、中小企業ほど生産性が落ちるといった事実は確認されない。収入が減少した理由は生産性低下ではなく、労働時間というインプット減少に由来する可能性が高い。

図表 労働日数・生産性が減少した人の割合(従業員規模別)corona8-1.jpg

出所:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査2020 臨時追跡調査」
注:ウエイトバック(XA20TC)集計をしている。

まとめ――5つの事実

前回のコラムと合わせて、以上をまとめてみよう。緊急事態宣言下の企業規模間格差については、以下の5つの事実が浮かび上がる。

(前回)
① 従業員規模関係なく、就業者の3人に1人が収入減少を経験。
② 収入が減少した人は従業員規模5人未満で特に多く、しかもその半数以上が大幅な減少を強いられている。
③ 従業員規模5人~50人未満についても、収入の大幅減少を経験した人が多い。
④ 従業員規模50人以上の場合は、収入減少した人はいるも規模間で大差ない。また大幅減少は少数。
(今回)
⑤ 生産性は従業員規模間での影響差はあまりない。よって、収入の減少は労働日数の減少が主な原因である可能性が高い。

これら5つをまとめると、今回のコロナショックの影響は、従業員規模50人を境に異なっていた可能性が示唆される。一方で50人以上となると、ほとんど差はない。実際、今回のコロナショックは最大手でも航空業界などは大打撃を受けたし、中小でもIT系などは拡大していることは周知の通りだ。従業員規模50人未満の企業では、緊急事態宣言下、何らかの理由で仕事ができず、それに伴い収入が減少したわけだ。 従業員規模5人未満の場合は、厚生労働省「毎月勤労統計」の調査対象から外れるため、収入の実態が議論の俎上に載ることが少ない。しかし、収入に大きな打撃を受けた彼らにこそ何かしらのサポートが必要ではないだろうか。

規模か?業種か? 

もちろんこれは従業員規模について単純な記述統計をみただけだ。例えば50人未満くらいのサイズの企業の場合、飲食店などが多いということは想像できる。そう考えると、影響の差は従業員規模というよりは、やはり業種が本質的に重要であると言える。コロナ禍の影響を受けた人はどういう人なのか。その実態によって経済的なサポートをする対象は変化しうる。今回は従業員規模という視点から考察した。実態を把握するには、今後より詳細な検証が必要となる。

茂木洋之(研究員・アナリスト)
・本コラムの内容や意見は、全て執筆者の個人的見解であり、
所属する組織およびリクルートワークス研究所の見解を示すものではありません。