コロナ禍での働き方変化を解析するコロナ禍、従業員規模50人未満で影響甚大(1) 茂木洋之

新型コロナウイルスの感染拡大が進み経済が縮小している。2月15日に公表された、2020年の実質GDP成長率は前年比-4.8%となっている。成長率がマイナスとなるのはリーマンショック翌年の2009年以来、実に11年ぶりだ。特に第1回目の緊急事態宣言(2020年4月7日~5月25日)を含む、2020年4-6月期の実質GDPは前期比-8.3%(年率-29.3%)と落ち込んだ。この期間に、どのような業種・職種の人々が就労可能であったかや、収入の減少があったかなど研究が進んでいる。 

一方で、企業規模という視点はあまりないように思う。今回の新型コロナウイルスのショックは過去の経済ショックとは異なる。リーマンショックは金融危機であり、ほとんどすべての業種・職種が打撃を受けた。またその際に資金余力の乏しい中小企業ほど打撃は大きかった (注1)。今回のコロナ禍は、人と人の接触抑制により経済活動が著しく停滞するというショックだ。地震などの自然災害とも異なるタイプの災害である。このような状況での企業規模間格差(注2)をみてみよう。

収入への影響は、特に5人未満の従業員規模で甚大 

リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査2020 臨時追跡調査」を使用する。このデータは緊急事態宣言下での働き方の変化を調査することを目的に 、2020年6月29日~7月1日に収集された。

まず2020年5月の収入と2019年12月の収入を比較して、減少した人の割合をみてみよう(注3)。結果は図表のようになった。全体で収入が減少した人は31.9%。就業者の3人に1人は収入が減少していたことになる。また公務員は15.4%と減少した人が最も少ない。このあたりは想像通りと言える。最も収入が減少した人が多い従業員規模は5人未満で41.5%となった。従業員規模5人未満の企業で働く就業者がコロナ禍の影響を最も受けたと言える。一方で、他の従業員規模をみると、6区分とも大きな差はない。また大企業ほど、収入減少者の割合が少ないなどの傾向もみられない。強いて言うなら、従業員規模50人未満の企業の人は33%以上のため、収入減を受けた人の割合が若干多かった。これだけをみると、収入に負のショックを受けた人の割合に関する従業員規模間の格差は、イメージで語られるほど、大きくないと思うかもしれない。しかし、これは減少幅・減少額を考慮していないことに注意が必要である。中小企業の人は収入が数十%減少し、大企業の人は数%の減少ですんだだけかもしれないからだ。

そこで、「収入が40%よりも大きく落ち込んだ人の割合」をみてみよう。全体では10.2%となり、少なくない人が収入にかなり大きな打撃を受けたことがわかる。また従業員規模5人未満では23.5%と突出して多いことがわかる。これは収入が減少した人の半数以上だ。例えば5000人以上の企業でも、収入が減少した人は32.6%いるが、40%以上の減少は6.7%で収入が減少した人の5人に1人程度だったことがわかる。さらに、図表1をみる限り、やはり従業員規模50人を境に、収入の大幅減少の人の割合が異なる。

以上をまとめてみよう。緊急事態宣言下の従業員規模間格差については、以下の4つがわかった。

① 従業員規模関係なく、就業者の3人に1人が収入減少を経験。
② 収入が減少した人は従業員規模5人未満で特に多く、しかもその半数以上が大幅な減少を強いられている。
③ 従業員規模5人~50人未満についても、収入の大幅減少を経験した人が多い。
④ 従業員規模50人以上の場合は、収入減少した人はいるも規模間で大差ない。また大幅減少は少数。

次回は、収入の減少がなぜ生じたのかを、労働時間と生産性の観点からみてみよう。


図表 収入が減少した人の割合(従業員規模別)
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出所:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査2020 臨時追跡調査」
注:ウエイトバック(XA20TC)集計をしている。

注1:例えばリクルートワークス研究所「大卒求人倍率調査」をみれば、中小企業ほど、新卒採用予定人数を減少させていることがわかる。
注2:以下は従業員規模で統一する。これは非正規雇用者を含む人数である。
注3:ただし収入の減少という聞き方だと、コロナショックで解雇された人などは含まないため、いわゆるサンプル・セレクション・バイアスが生じる。よってこの集計では、コロナショックで解雇された人や失業した人も含めて集計する(つまり収入が0になった人も明示的に含めるという意味である)。

茂木洋之(研究員・アナリスト)
・本コラムの内容や意見は、全て執筆者の個人的見解であり、
所属する組織およびリクルートワークス研究所の見解を示すものではありません。