【分析編】再就職後の女性のキャリア 夫が協力的でない場合、どうしたらいいのか

前回は、再就職の時点で夫が家事・育児に協力的だったかどうかによって、女性の再就職後の働き続けやすさが異なることを示した。しかし、再就職の時点で夫が家事・育児に協力的だった女性は、3割程度と少ない。そこで今回は、夫が家事・育児に協力的でない場合に、どのようにしたら再就職後に働き続けやすくなるのかを考える。

大学・自治体講座での学びが、夫が協力的でないグループで重要な理由

前回に引き続いて、再就職後の離職に関わる要因を分析した結果を紹介する。分析は、女性が再就職したときに夫が家事・育児に協力的だったグループ(「夫協力グループ」)とそれ以外のグループ(夫協力以外グループ」)に分けて行っている。
まず取り上げるのは、離職期間中の学びに関する結果である(図表1)。この結果によると、「夫協力グループ」では、スクール型の学び、独学による学び、大学・自治体講座による学びのいずれも、再就職後の離職と有意な関わりを持っていなかった。これに対し、「夫協力以外グループ」では、スクール型の学び、独学による学びは再就職後の離職と関わりを持たない半面、大学・自治体講座による学びをしていることは、再就職後の離職の確率を引き下げていた。

図表1 離職期間中の学びと再就職後の離職に関する分析結果(夫の協力状況別)

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注:リクルートワークス研究所「ブランクのある女性のキャリア3千人調査」のデータをもとに分析(※1)。
***は1%、**は5%、*は10%で有意に相関のあることを示している。

連載の第2回(再就職前にどんな学びをしていると働き続けやすいか)で、大学のリカレント教育や自治体講座による学びでは、仕事と家庭の両立不安の軽減、キャリアの棚卸し、ロールモデルや同様の経験を持つ女性とのネットワークづくりに力点が置かれること、これらの学びは、再就職後の仕事の種類にかかわらず役立つうえに、似たような経験や希望を持つ仲間とのネットワークは、心理的な面やアドバイスなどの具体的な面からのサポートを通じて、再就職した女性が働き続けることを促している可能性を指摘した。


「夫協力グループ」では、夫が家事・育児に関わることを通じて、女性に物理的・精神的なサポートを提供していると言える。そのため、離職期間中に大学・自治体講座での学びを行い、内省やネットワーク形成ができているかどうかは、再就職後に働き続けるかどうかに関わりにくいと考えられる。
一方、「夫協力以外グループ」では、女性が仕事と家庭を両立することについて、家族からのサポートがより少ない状況にある。そのため、女性が大学・自治体講座での学びを行い、内省やネットワーク形成の機会を得ているかどうかが、再就職後の離職に関わっていると考えられる。

家族・親族以外への相談が「もう1つの支援」を提供する

次に、再就職後に行った仕事やキャリアについての相談状況についての結果を、図表2に示した。その結果をみると、「夫協力グループ」では、基準である「家族・親族のみに相談あり」の場合と、「相談なし」「家族・親族以外に相談あり」の場合で、再就職後の離職しやすさに有意な差はみられなかった。夫が協力的であるグループでは、家族からの助言や精神的なサポートを得やすく、家族・親族以外に仕事やキャリアについて相談できているかどうかは、再就職後の離職には影響しないと考えられる。
一方、「夫協力以外グループ」では、基準である「家族・親族のみに相談あり」の場合と比べて、「家族・親族以外に相談あり」の場合に離職が抑制されていた。夫が協力的と言えない場合、女性に家族・親族以外の相談先があり、助言や精神的なサポートを得られることが、再就職後に女性が働き続けるうえでの支えとなっているようだ。

図表2 再就職後の仕事やキャリアの相談と再就職後の離職に関する分析(夫の協力状況別)

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注:リクルートワークス研究所「ブランクのある女性のキャリア3千人調査」のデータをもとに分析(※1)。
***は1%、**は5%、*は10%で有意に相関のあることを示している。

再就職後の孤立をふせぐ「つながりづくり」が重要

仕事再開時に夫が家事・育児に協力的でない場合、女性が仕事やキャリアについて話し合ったり、相談できるつながりがあることが、再就職後の離職を防ぐために重要である。そうした機会を女性自身が模索すること、そうしたつながりをつくれる講座を大学や自治体で増やしていくことや、再就職後も仕事やキャリアについて相談できる窓口を設置することが、女性の孤立を防ぎ、再就職後に安心して働き続けるうえで有益だろう。

(※1)再就職から離職までの時間差を考慮したうえで、分析には、結婚・出産等で離職した仕事、居住地、教育歴、現在年齢、再就職時の仕事のほか、離職期間中の学び、再就職時点の両立負担に関わる変数、再就職時点の夫の家事・育児への協力、再就職から現在までの仕事やキャリアについての相談状況などの変数を考慮したイベントヒストリー分析を行った(離散時間ロジットモデル)。