全国就業実態パネル調査「日本の働き方を考える」2019無配偶無子女性の働き方 木村裕貴・三輪哲

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近年、「女性の活躍」が叫ばれ、女性の働き方に注目が集まっている。特に配偶者や子どものいる女性の「仕事と家庭の両立」に関心が集中している。その一方で、近年未婚化が進み、生涯を通じて一度も結婚せず子どもをもたない女性の割合も増加している。配偶者や子どものいない女性は一体どのような働き方をしているのだろうか? JPSED2019のデータを用いて、その一端を探っていきたい。

図1は、年齢(5歳ごと)別に女性の家族形態の構成割合を示している。20代から30代前半にかけて、無配偶無子者の割合が大きく減少し有配偶有子者の割合が増大しており、この時期に結婚・出産といったライフイベントを経験する女性が多いことが示唆される。ライフイベントがひとまず落ち着く30代後半以降をみると、1〜3割は無配偶無子者であることがわかる。たしかに有配偶有子者が概ね半分以上を占めているものの、ひとり親世帯を築いていると思われる無配偶有子者や子どものいない有配偶無子者、そして配偶者も子どももいない無配偶無子者も無視できない割合を占めている。

図1 年齢別、家族形態の構成割合(20〜64歳女性)
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出所:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)2019」
注:xa19を用いたウエイト集計を行っている

図2は、年齢別に家族形態ごとの就業率と正規雇用割合を示している。まず[A]の就業率をみると、25歳以上ではどの年齢層でも無配偶層と比べて有配偶層の就業率が低く、女性の労働供給は配偶者の有無に大きく左右されることが示唆される。有配偶有子者の就業率が20代後半で一度下がり、30代後半から40代後半にかけて増大しているのは、結婚・出産により就業中断をした後に子どもが大きくなり再就職した層の存在を反映していると思われる。次に[B]の正規雇用割合をみると、30代後半以降では無配偶層と比べて有配偶層の正規雇用割合が低いことがわかる。特に有配偶有子者の正規雇用割合が30代から40代前半にかけて大きく減少しており、[A]でみた就業率の増大と対照的である。30代から40代にかけての有配偶有子者の再就職は多くが非正規雇用であることが示唆される。

図2 年齢別、家族形態ごとの就業率・正規雇用割合(20〜64歳女性)
図2(木村).png

出所:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)2019」
注1:[B]の正規雇用割合は、雇用者(役員除く)に占める割合を示す
注2:xa19を用いたウエイト集計を行っている

次に、仕事に対する満足度をみてみよう。図3は、仕事満足度に関する4つの指標について、家族形態ごとに満足割合を示している。特に有配偶有子女性と無配偶無子女性の違いに注目すると、無配偶無子女性は仕事そのものの満足度([A])や職場の人間関係の満足度([B])が低い。また、仕事を通じて「成長している」という実感([C])が乏しく、生き生きと働いている割合([D])も低い。総じて、無配偶無子者はそれ以外と比べて、仕事に関する満足度が低く、仕事に対する高いモチベーションを維持できていないと言える。

図3 家族形態ごとの仕事満足割合(35〜64歳女性)
図3修正(木村).png

出所:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)2019」
注1:「あてはまる」「どちらかというとあてはまる」を満足とみなした
注2:35〜64歳女性でかつ2018年就業者に限定し、xa19を用いたウエイト集計を行っている

この背景要因を探るために、家族形態ごとに仕事の性質に関する2つの指標の肯定割合を示したのが図4である。図4より、無配偶無子者は有配偶有子者と比べて、自分の働きに対する正当な評価を得ていたという実感([A])が乏しく、ストレスを感じやすい職場に勤めている割合([B])が高いことがわかる。こうした職場の状況が図3でみた無配偶無子者の仕事満足度の低さにつながっているのかもしれない。

図4 家族形態ごとの仕事の性質(35〜64歳女性)
図4(木村).png

出所:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)2019」
注1:「あてはまる」「どちらかというとあてはまる」を肯定とみなした
注2:35〜64歳女性でかつ2018年就業者に限定し、xa19を用いたウエイト集計を行っている

木村裕貴(東京大学大学院)
三輪哲(東京大学社会科学研究所 教授)
・本コラムの内容や意見は、全て執筆者の個人的見解であり、
所属する組織およびリクルートワークス研究所の見解を示すものではありません。