「週休3日」で働くみずほフィナンシャルグループ 人事業務部企画チーム 調査役 大坪 恭佑 氏

週休3日勤務制度の利用目的は不問、週休4日も

みずほフィナンシャルグループは、2020年12月より、希望する社員が自分磨きや育児・介護との両立などに利用できる「週休3日・4日勤務」制度を新設した。3大メガバンクで初の試みであり、業界内外の注目度も高い。導入の背景や利用状況などを人事業務部の大坪恭佑氏に聞いた。

社内外で通用する専門性を磨く機会を提供

3大メガバンクの一行が、他行に先駆けて「週休3日・4日勤務」制度を打ち出した理由は何か? 背景の1つには、少子高齢化、デジタル化、グローバル化など銀行を取り巻く環境の激変がある、と大坪氏は語る。2019年5月、みずほフィナンシャルグループは「5ヵ年計画 ~次世代金融への転換」を策定、事業環境の変化に対応し、新たな顧客ニーズに対応するため、非金融を含めた金融の新しい価値創造を目指す方向性を打ち出した。
「構造改革の一環として策定した新人事戦略では、旧態依然とした競争原理ではなく、社員の成長ややりたい仕事を軸に、社内外で通用する人材バリューの最大化にフォーカスしています」みずほフィナンシャルグループ  新人事戦略新人事戦略では社員の成長と会社の成長の「Win-Win」の関係を目指す

具体的には、社内外兼業や副業など、社員の挑戦を後押しする制度を導入し、専門性を身に付ける支援をする。そして社員が身に付けたスキルを業務に活かすことで、さらなる成果に繋げるという好循環を目指す。コロナ禍のなか、リモートワーク推進やサテライトオフィスの拡大と合わせ、場所や時間にとらわれない働き方で、リカレント(学び直し)や資格取得に繋げてもらうことも導入の狙いの1つである。

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給与は週休3日で従来の約8割、週休4日では約6割に

「週休3日・4日勤務」制度の具体的な内容を見ると、第一にあくまで本人の希望により週休3日・4日への移行が可能で、事由は問わない。休む曜日は事前に申請し、基本的にその日は出勤しない。
「本制度取得の目的を達成できるよう、休む曜日にはしっかりと休んでもらうことが原則であり、休む曜日の出社は認めていません」と大坪氏。
制度利用については利用開始希望日の1カ月前までに上司へ申請する。利用期間は1年以内とするが、継続利用を希望する場合は再度の申請によって更新も可能で、実際に更新の実績もある。
「長くとも1年のスパンで、制度利用の目的を踏まえて自身の働き方を振り返ってもらい、改めて続けるかどうかを見極めてほしいと考えています」(大坪氏)
給与については基本的にNo Work-No Payの原則で、週休3日で従来の約8割、週休4日では約6割に減る。

利用者の特徴としては、女性の比率が高く、また様々な世代の社員が利用している。利用目的については参考までにヒヤリングを行っており、20代は大学院や資格取得の勉強などの「自分磨き」、30~40代は育児、50代以降は介護や社員自身の健康管理などを目的とする傾向にある。週休3日、4日の比率についてはおよそ6対4となっている。

制度の概要

  • 利用目的は不問
  • 利用開始希望日や曜日の選択は自由
  • 利用期間は1年以内で、更新可能
  • 給与は週休3日で約8割、週休4日で約6割に

マイナス評価なし。あくまで仕事の質を重視

導入の検討段階では、勤務日数の減少による業務運営の逼迫や複数の希望者が出た際の対応について議論があったが、もともと育児目的の短時間勤務や介護目的の短日・短時間勤務制度があったことから、互いにリカバリーし合う風土も醸成されており、導入自体に大きな抵抗感はなかった。
「コロナ禍において感染拡大防止のための交代勤務やリモートワーク等を余儀なくされる中、ビジネスへの影響を最小限に留めながら実施できたこともあり、後ろ向きな受け止め方はされませんでした」(大坪氏)

人事評価の観点では、時間短縮に比例して仕事量が減ることで自分の評価が下がる懸念がないかも社員は心配だろう。
「週休3日制などを利用することがマイナスに働くことはありません。業務量は減るかもしれませんが、個々人の能力等に応じた目標設定に基づき、成果を評価していくという評価方法に変わりがあるわけではありません」と大坪氏。
勤務形態が多様化することで、より複雑できめ細かなマネジメントが求められることも管理職は気になる点である。
「この制度に限らず、リモートワークや時短勤務など人材・働き方の多様化に伴う難しさはあると思います。それらを踏まえた新しいマネジメントのあり方については、人事としても社内の好事例発信等によってノウハウの共有を進めています」(大坪氏)

業界からも注目、継続により制度の洗練を目指す

制度導入後の反応について、概ね好意的に受け止められていると大坪氏は評価する。
「例えば育児や介護に追われる社員の中には、既存の支援制度は対象外となっているケースもあったかと思います。本制度の導入により、それぞれの状況に応じて制度を選択することが可能となるため、社員一人ひとりが活き活きと働くための一助になっていると思います」

利用目的をヒヤリングするなかで、利用者はそれぞれの置かれた事情に応じて制度をうまく活用している印象があり、大坪氏も有効性を実感している。本当は制度を使ったほうがいい人が知識がなく使用できなかったり、心情的に使用しづらい等の弊害がないよう、今後はグループ内で制度や活用事例の周知に努めていくという。
本制度は金融業界でも先進的な取り組みだといえるが、業界全体に広がる可能性について大坪氏は次のように語る。
「金融業界ですぐに普及するかどうかはわかりませんが、同業の人事の方からも多くお問い合わせをいただいており、皆さんの関心の高さを感じます」

人事としては同制度を継続しながら利用者の声を拾い上げ、活用事例を社内で共有できるよう情報発信しつつ、改善すべき点があれば随時手を加えていくとのこと。
前述した通り、新人事戦略では社員の成長ややりたい仕事を軸に、社内外で通用する人材バリューの最大化を目指すが、実際に社内外の兼業も認めている。ユニークなのが社内兼業で、これまで相当数の社員の応募と配属の実績がある。この制度は、正式な人事発令も行ったうえで、しっかり兼業先の職務遂行を担ってもらうものである。
「社内兼業制度では、社員は希望する兼業先に応募することが可能です。たとえば人事でも柔軟な働き方の企画業務を担っていただく人を募集して、応募者である首都圏以外の営業店の社員に、週の数時間をその業務に充ててもらうという働き方をしてもらいました。相互に新しい発見や気づきがありますね」(大坪氏)

時間、場所、組織の枠組みなどの制約を超え、個人の成長機会を提供する同行の試みに今後も注目したい。

ポイント
  • みずほフィナンシャルグループの新人事制度では、社員の成長と会社の成長の「Win-Win」の関係性を重視する。兼業や副業も含め、個人が成長できる機会を提供し、専門性を身に付ける支援をする。そこで得られたスキルを業務に活かすという好循環を目指している。
  • 2020年12月に「週休3日・4日勤務」制度を導入した。これは、希望する社員が、休みたい曜日を決めて利用開始希望の1カ月前までに申請し、1年以内の利用期間(更新可能)の中で、週休3日・4日で働ける制度。
  • 制度の利用目的は問わない。傾向をみると若手は学び、中堅は育児、介護、健康管理など、ライフイベントなどに合わせて有効利用しており、社内でも好意的に受け止められているようである。管理職が制度を利用ケースもある。

プロフィール

大坪恭佑氏
株式会社みずほフィナンシャルグループ
人事業務部企画チーム 調査役
略歴
・2008年 みずほ信託銀行株式会社 本店営業第三部入行
・2020年 みずほフィナンシャルグループ グローバル人事業務部 調査役
・2022年 同 人事業務部 調査役