「週休3日」で働くイントロダクション 週休3日制は、4つのタイプへと進化

2022年3月に上梓した『「週休3日」で働く-世界各国に広がる週4日勤務制・トライアル事例-』では、「週4日勤務制(週休3日)」(以下、週休3日制)の15カ国のトライアル事例とその評価、また13カ国57社のさまざまなカタチの導入事例について紹介した。
業務の性質によって、全従業員に適用できるとは限らないが、トライアルを経て本格導入した自治体や企業も多い。その後、日本においても、日立製作所、パナソニック、NECといった大手メーカーが制度の導入を検討または決定したことから、広く議論されるようになった。

企業の導入目的は、労働時間の削減、働き方自由度を高める、個人のキャリア支援(能力開発、学位取得、副業)、ワーク・ライフ・バランス(育児・介護・休息・余暇の充実・地域貢献)への対応、シニアの再雇用などさまざまである。
週休3日制はこれまで以下のA・B・Cの3つのタイプに大別していたが、今はDタイプを加えて、4つに大別した(図表1)。

図表1 週休3日制の4つのタイプ週休3日制の4つのタイプ

A「圧縮労働型」は、週の労働時間や業務量の総量は変えず、1日の労働時間を長くする。
B「労働日数(時間)・報酬削減型」は、労働日数や週の労働時間、業務量を削減し、それに給与などを対応させる。目的にもよるが、報酬の削減を補填するために副業を認める企業が多い。
C「労働日数(時間)削減・報酬維持型」は、労働日数や週の労働時間を削減するが、労働生産性を上げて、アウトプットやクオリティ、業績を維持することで、報酬を維持する。
そして、D「フレキシブル労働型」は、月または年単位の上限労働時間内で、業務の繁閑に合わせて自律的に稼働を調整する。個人が、繁閑によって週休何日とするかをフレキシブルに決めるものである。
このほかに、当初から週4日勤務の労働契約をする時短やパートタイムの社員制度がある。

日本企業の事例を見ると、A「圧縮労働型」、B「労働日数(時間)・報酬削減型」、D「フレキシブル労働型」の3つが主流のようである。Aタイプは、テレワーク・フレキシブルワークの導入によってなくなった通勤に費やしていた時間を仕事に充てることで、比較的容易に導入することができる。Bタイプは、1日分の労働時間を副業、または学び、育児、介護、家事、趣味、健康維持、通院、ボランティアなどの生活時間に充てることができる。いずれも平日に休む曜日を固定するものが多いが、固定しないものもある。たとえば、Dタイプは定められた月間労働時間のなかで仕事の繁閑に対応してフレキシブルに休日を設定するというもので、曜日は固定していない。

週休3日制を実現させた国・企業の特徴

2022年にトライアルをする国が増えたのは、周辺国や企業での成功事例によるものと思われる。週休3日制の導入理由は、長時間労働の是正や、働き方の多様性への対応などで、比較的労働時間の長い国や、企業が働き方改革の1つの選択肢として導入している。導入の検討のステップとして、トライアルを実施して、生産性や業績、アウトカムが変わらないことを実証する。仕事のクオリティを落とさないための職場単位でのイノベーションが欧州の各所で起こっているのは、「労働日数が1日減っても報酬は下げさせない」という従業員側のモチベーションが行動につながったものと思われる。
欧州では、労使で協議して、賃金、働く場所、時間、休暇、福利厚生を見直すことは常に行われているが、物理的に不足する労働力に関しては、雇用主側が、新規雇用をして補充する動きもあった。トライアルの結果、本格導入や、人事制度の1つとして希望者に適用する動きが見られた。一方、導入を見送ったところもある。

40年単位の長いスパンで働き方が変わる

歴史を振り返ると、日本は1947年の労働基準法制定で週48時間労働(週休1日)が定められ、その40年後の1987年の改正に伴い週40時間、週休2日制を導入する企業が増えている。そこからさらに35年経過して、労働環境や個人の意識も変わり、「昭和の働き方」からの見直し時期が迫っているようである。きっかけは、コロナ禍によるテレワーク、リモートワーク、ハイブリッドワークが一部の職種で増え、労働時間と生活時間のボーダーラインが変わってきたことである。従業員全員一律に導入するのは難しいが、大きな流れとして、ここから時間をかけてトライアルを実施し、大手企業の成功事例に追随しながら、週休3日制が可能な職種や職場、希望者から導入を検討することになるだろう。
現状では、人材確保のために週休3日制を導入している企業もあるが、中小企業では法定の週1日の休日を定めている企業も多く、また週7日24時間対応のサービス業も多い。有給休暇の取得もままならないなかで、一律の導入にはまだ時間がかかるだろう。

企業側のメリットを見ると、長時間労働への対応、休暇取得増、ワーク・ライフ・バランスへの対応による従業員のリテンションや働くモチベーションの向上、生産性向上、採用候補者の増加などが挙げられる。デメリットは、勤怠管理の複雑化、取引先などへの対応、労働時間減による代替人材採用などのコスト増が挙げられる。
トライアルを実施することで、どのように業務改善をすることができるか、企業や個人それぞれが、見極めをすることが大切である。
日本でもいくつかの企業がすでに週4日勤務制、週3日勤務制などを導入している。政府の後押しもあって、働き方改革に取り組む企業が増えており、働き方の1つの選択肢、メニューとして取り入れる企業は増えると思われる。

村田弘美(グローバルセンター長)