Global View From USA第7回 4割のZ世代が倫理観を理由に業務拒否 変われない職場と乖離する価値観

w183_usa_main.jpgアメリカではZ世代が中心となり、各地で気候変動問題への積極的な取り組みを求めるデモが行われている。
Photo=津山恵子

アメリカのZ世代とミレニアルは、上の世代よりも「ライフ・ワーク・バランス」を重んじることで知られている。仕事を進めるうえで、環境や倫理の問題で上司や業務内容が自分の価値観と合わなければ、業務を拒否したり、転職したりする傾向も顕著だ。

子どもケア最大手の米ブライト・ホライズン・ファミリー・ソリューションズの調査(2022年、1003人対象)によると、Z世代の44%、ミレニアルの37%が、倫理上の懸念から業務を拒否したことがあるという。同じくZ世代の39%、ミレニアルの34%が、自分の価値観と合わないという理由で、雇用主が要求した仕事を断っている。

企業が環境や社会に与える影響も、両世代の大きな関心事だ。Z世代の48%、ミレニアルの44%が、企業は社会に良いインパクトを与えると思うと回答する一方で、それぞれの50%、46%が気候変動問題に取り組むように企業に圧力をかけているという。

この2つの世代では半数以上の人が、採用のオファーを受けるかどうかを決める際には、その企業ブランドが環境問題に与える影響力や取り組みについてリサーチするという。リサーチにはYouTubeなどを多用するため、企業は環境問題への取り組みをYouTubeやSNSで伝えるなど情報発信を強化している。

仕事に対する価値観も、旧世代のように「仕事が生き甲斐」ではなく、「自分のスタイルに合ったより良い生活のために働く」という傾向が強い。企業はこの価値観に対応するため、コロナ収束後も自宅勤務を可能にし、居住地域を縛らないなど柔軟な働き方を認めざるを得なくなっており、それほど両世代は企業に影響を与えている。

一方で依然としてこの世代が、女性や性的マイノリティであることを理由に職場で嫌がらせや差別を受けている実態も別の調査では明らか
になっている。Z世代は、小中学生の頃から同級生に性的マイノリティがいる環境で育ち、企業でも「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」が人事のキーワードになった時代に入社している。それでも実際の職場ではD&Iが完全に浸透しているとはいえない。

変われない職場とZ世代の価値観との乖離がさまざまな職場で問題となっている。

Text=津山恵子

津山恵子氏
Tsuyama Keiko
ニューヨーク在住ジャーナリスト。元共同通信社記者・ニューヨーク特派員。著書に『現代アメリカ政治とメディア』(共著)など。海外からの平和活動を続けている長崎平和特派員。

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