ジョブ・アサインメントモデルの全貌(1) 目標設定

ステージA 目標設定
本コラムでは、ジョブ・アサインメントモデルの詳細について解説していく。図1のように、ジョブ・アサインメントモデルは「目標設定」「職務分担」「達成支援」「仕上げ・検証」の4つのステージからなる。今回はその最初のステージである「目標設定」の内容を解説する。なお、ジョブ・アサインメントモデルにおいては、行動の主体はマネジャーである。

図1) ジョブ・アサインメントモデル~ステージA 目標設定~

目標設定とは、「当該期に自分の組織が達成すべき目標を設計し、その目標を達成するための職務を設計すること」と定義している。目標設定のステージは、2つのステップからなる。目標を総合的な視点で捉えてより良い目標を設計する「目標設計」のステップと、目標を達成するための職務を洗い出し、それらの職務の要点を明確にする「職務設計」のステップだ。さらに、それぞれのステップにおける重要なポイントを4つずつ抽出している。

ここから、2つのステップとそのポイントについて詳しく見ていこう。

ステップ1 目標設計
目標設定のステージの、第1のステップが「目標設計」である。目標設計の定義と、このステップにおける重要なポイントについては図2を参照してほしい。ここでのゴールは、当該期が終わったときに自身の管轄する組織が何を成し遂げていて、どんな状態になっているかを言語化し、目標の形に落とし込むことである。

図2) ジョブ・アサインメントモデル~ステップ1 目標設計~図2) ジョブ・アサインメントモデル~ステップ1 目標設計~

想像してほしいのだが、ミドルマネジャーにとって、自らが率いる組織が今期成し遂げるべきことは、通常、上部組織から定められた目標として存在する。だが、良いジョブ・アサインメントのためには、まずこの前提を疑うところから始める必要がある。目標“設計”という言葉には、ミドルマネジャーが「上部組織から言われたから」ではなく、自らプロアクティブに、自組織が何をやるべきかを設計するべきである、という意図を込めている。

ミドルマネジャーによるプロアクティブな目標設計を実現するためのポイントになる点として、「先取り・仕掛け」「俯瞰的理解」「期待値調整」「ジョブ・クラフティング」の4つを抽出した。これらを順に説明する。

ポイント1 先取り・仕掛け:組織の中長期的なビジョンに照らし合わせて、自ら目標を設定し、上部組織に提案する
最初のポイントは「先取り・仕掛け」である。これは、上部組織から目標が割り振られる前に実施すべき行動だ。具体的には、組織の長として将来の組織のあるべき姿から逆算して、当期にやるべきことを考えること、そして、自ら上部組織に、そのやるべきことを当期の自組織の目標にしたいと提案することである。正直にいうとこれは難易度の高い行動だ。しかし、「先取り・仕掛け」を実践することにより、普段より高い視点で事業を考えることができる。また、将来より大きな組織を運営するためのマネジャー自身にとっての準備にもなる。

ポイント2 俯瞰的理解:上部組織から課された目標について、経営・事業戦略との関連性から位置づけを理解する
2つ目のポイントは「俯瞰的理解」である。これは上部組織から当該期の目標が言い渡された時の視点・視座に関わるものだ。具体的には、目標を受け取った時に、一段高い視点からその目標の意味や意義を考えることをいう。すべての目標は企業や事業にとって重要であるのだが、企業が巨大化し機能分化が進むにつれて、その重要性を理解することが難しくなる。だからこそ、普段とは異なる視点で目標を捉えて、その事業戦略上の意味を理解する「俯瞰的理解」が重要になる。

ポイント3 期待値調整:上部組織から課された目標であっても、鵜呑みにせず、納得のいくかたちになるよう交渉・調整する
3つ目のポイントは「期待値調整」である。これは常に必要な行動ではないが、上部組織から言い渡された目標に納得がいかない場合に実行するものだ。容易に達成できてしまう目標では、組織は成長しない。かといって、あまりに非現実的に高い目標を引き受けては、結局はコミットできず組織は疲弊してしまう。自組織が納得のいく目標に挑戦できるよう、この段階で上部組織と期待値を調整し、合意形成をしておくことが重要だ。

ポイント4 ジョブ・クラフティング:上部組織から課された目標を咀嚼し、自分の言葉に置き換え、目標を部下に共有する
4つ目のポイントは「ジョブ・クラフティング」である。これは聞きなれない言葉かもしれないが、簡単に言えば上部組織との間で目標が確定した後に、それを自分らしい言葉に置き換えることである。目標はそのままでは、ただの数字であり、ただの言葉である。組織の全員が自分たちのこととして目標の価値を理解するためには、マネジャーが目標を自分なりに解釈し、豊かなストーリーとして語れるようにする必要がある。

 

ステップ2 職務設計
目標設定のステージの、第2のステップが「職務設計」である。ステップ1の目標設計が完了したのちに、目標を達成するために必要な職務を具体的に抽出するのが職務設計である。職務設計の定義と、このステップにおける重要なポイントは図3にまとめたとおりである。

図3) ジョブ・アサインメントモデル~ステップ2 職務設計~図3) ジョブ・アサインメントモデル~ステップ2 職務設計~

このステップのゴールは、目標を達成するために、本当に必要となる職務を考え、それぞれの職務の具体的な手順とゴールまでを想定し終えることだ。その際のポイントとなる「職務リスト化」「職務廃止」「手順想定と根回し」「成功ポイントと障害の想定」の4つについて、その内容を順に解説する。

ポイント1 職務リスト化:目標を達成するための職務をリストアップする
第1のポイントは、「職務リスト化」である。この行動によって、目標を達成するために必要な職務を洗い出す。これは非常に基本的な行動だが、それぞれの職務の本質的な価値は何か、どこまでやれば完了と言えるのか、という点までを明確にすることが大切である。職務の中には、完了の基準が見えにくい性質のものもある。どの水準を達成すればその職務を完了したといえるかまで、この段階で見極めていることがジョブ・アサインメントの土台となる。

ポイント2 職務廃止:ルーティンで続いている職務のうち、不要なものは廃止する
第2のポイントは「職務廃止」である。職務リスト化を終え、それぞれの職務の本質的な意味合いを理解することで、膨大な職務に優先順位をつけることができ、同時に、何を捨てるべきかが明らかになる。職務の中には、惰性で続いているものや、目標達成に対してなんら役割を果たさなくなっているものもある。このような職務がないかを点検し、当該期にはこれをやらなくてよいという意思決定を行うのが職務廃止だ。職務廃止を行うことによって、組織のマンパワーをより意味のある職務に集中させることができるようになる。また効率性や生産性を高めるためにも、職務廃止は重要である。

ポイント3 手順想定と根回し:職務のスケジュール・納期を想定し、他の職務のボトルネックになるものは事前に準備を進める
3つ目のポイントは、「手順想定と根回し」である。職務リスト化と職務廃止が完了すれば、やるべき職務が明確になる。それぞれの職務ごとに、おおよその工程をイメージし、スケジュールや納期を決めておくことが手順想定だ。実際には、それぞれの職務は互いに関連しており、実施するにあたっては、順序が重要になるものも多い。他の職務のボトルネックになる可能性のあるような職務については、部下に職務を割り当てる前であっても、例外的に準備を進めておくことも必要になる。これが根回しである。

ポイント4 成功ポイントと障害の想定:目標を達成するまでの道筋をイメージし、成功のポイントや障害を考える
最後のポイントが「成功ポイントと障害の想定」である。それぞれの職務を達成するために、工程のどのあたりが重要な局面となり、どのあたりが難局となりそうかを、あらかじめイメージしておく。これを実施することによって、部下が各職務を実行する過程で、マネジャーはタイミングよくサポートに入ることができるようになる。また、マネジャー自身が、各部下のサポートにどの程度の時間や手間をかける必要があるかの見通しをつけることも可能になる。

以上がジョブ・アサインメントの第1ステージである目標設定の内容である。ステップ1の目標設計とステップ2の職務設計により、当該期に自分の組織が達成すべき目標と、達成のために何をやるべきかを明らかにすることが可能になる。

次のステージでは、目標を達成するために設計した職務を、誰にどのように任せればよいのかを決めることになる。
次回のコラムでは、ジョブ・アサインメントの中核である第2のステージ「職務分担」について解説する。

 

2017年12月19日