HR Technology 世界の人事が注目する「HRテクノロジー」2023【まとめ】2023年は技術革新や個人・企業ニーズの多様化で、GPT実装が加速

AIがより身近な存在に

2023年最大のテクノロジーの変化は、高性能の生成AIモデル「GPT-4」の開発といえるだろう。GPT-4が搭載されたことで、ChatGPTは、文章生成や質問応答、翻訳にとどまらず、テキストで上手に指示すればアイデア出しやプログラミングなども瞬時にアウトプットされるなど、使い手によっては高いタイムパフォーマンスを発揮しており、問題なく仕事を任せられるレベルへと成長した。
2023年10月には「マルチモーダル」対応となり、ChatGPTは「見て」「聞いて」「話せる」ツールとなった。このように汎用性が高いため、誰でも簡単に生成AIを使えるようになり、ChatGPTの利用が急増した。

OpenAIのAPI公開により、世界中のHRテクノロジー業界でも、GPTを実装したサービスが続々と発表されている。日本では、企業が求めるポジションに合わせた複数のペルソナ設計や、候補者の性格特性に応じた面接官のマッチングなど、ChatGPTを活用した採用支援サービスが展開されている。

採用関連のデータを統合し、分析の質を向上

AIの普及に伴い、採用におけるデータ活用も進んでいる。「採用アナリティクス」は、ATS(応募者追跡システム)やHCM(人材管理システム)、パフォーマンス管理システムなど、企業内に分散する採用プロセスや成果に関するデータを一元化する。企業は、採用の「量」だけでなく、入社後の活躍や定着率、ハイアリングマネジャーの満足度など採用の「質」も総合的に判断できる。採用アナリティクスの領域でも、予測分析など、AIを活用した機能が増えている。

国外に住む優秀な越境テレワーカーを確保

パンデミック以降、リモートワークが浸透し、国内外を旅しながらリモートで働く越境テレワーカーが世界的に増加している。ドイツ、ノルウェー、ポルトガルなど約40カ国が、「デジタルノマドビザ」を発行し自国で働く機会を提供している。
一方、企業側も人材不足を解消するため、国外に住む優秀な人材の活用を進めている。Deelをはじめとした「コントラクターペイロールプラットフォーム」は、企業に越境テレワーカーとの業務委託契約や報酬の支払いをプラットフォーム上で管理できるサービスを提供する。各国の法規制に沿った契約書類の不備の指摘や、報酬の現地通貨への換算と海外送金などの機能を備える。

臨時労働者をアプリで即時にマッチング、保障は手厚く

「テンポラリーレイバーマーケットプレイス(オンサイト)」は企業と臨時の仕事を求める労働者をつなぐプラットフォームで、デリバリー・製造・小売り・物流・イベントといったスキマ時間に働けるパートタイムの仕事から、看護師やフィールドエンジニアなど専門性の高いフリーランスの仕事まで扱う求人は多岐にわたる。アプリで手早くマッチングできるため、人手不足に悩む企業は、急な欠員や繁忙期に即時に人員を確保できる。
サービス事業者や仕事によっては、臨時労働者は就業期間中にサービス事業者の従業員となり、残業手当や労災保険、医療保険、最低賃金の適用を受けることができる。日本でも、単発の仕事に就く際に企業またはサービス事業者と都度雇用契約を結び、正社員のような保障を受けることができる「雇用型ギグワーク」のニーズが増えている。

採用プロセスにAIを導入する際、アルゴリズム監査が必須に

AIによる判断は、米国のHRテクノロジーのマーケットにも影響を与えており、多くの州で採用選考におけるAIツールの利用を規制している。企業は採用選考にAIを利用する前に、バイアス監査を受けなくてはならない。具体的には、第三者機関がバイアスの有無を判断し、その結果を自社のウェブサイトに掲載することと、応募者へ通知することが義務づけられる。「AI&アルゴリズム監査」ツールはAIやアルゴリズムの公平性を検証し、問題をリアルタイムで検出するプラットフォームである。AI技術の進化とともに、公平性や安全性を証明し、利用者の信頼を高めることは必須となる。欧州議会でも、AI規制法案について年内には合意する動きがあり、世界的に法整備が進められている。

【図表】 2023年HRテクノロジーマップに追加された4領域2023年HRテクノロジーマップに追加された4領域出所:リクルートワークス研究所

2024年のHRテクノロジーマーケット

2024年にはどのような変化が起こるのだろうか。HRテクノロジー企業やコンサルティング会社などは既にトレンド予測を公表しているが、「AIによる採用業務の効率化が加速する」「選考にVRを活用する企業が増加する」という。教育研修や昇進テストにVRを活用する企業もあるが、採用選考に利用する企業はまだ多くない。VRによるアセスメントの領域などが拡大すると見込まれている。
今後AI技術によって、採用支援サービスがどこまで進化するか、スキルや適性やポテンシャルの評価にどこまでAIが対応できるのか、革新的なサービスに注目したい。

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