人事戦略を実現する世界の「タレントマネジメントテクノロジー」2023-2024人事戦略を強化する最新の「タレントマネジメントテクノロジー」とは?

タレントマネジメント(TM)は一般的に、従業員の能力やスキルなどの情報を集約し、戦略的な人材配置や育成、定着に活用する人事管理の手法を表す。TMを実現する日本の「タレントマネジメントシステム」は、主に人材データベースの構築・管理、目標・パフォーマンス管理、要員計画、後継者管理、報酬管理、アンケート・サーベイなどの機能を持つ。

本コラムでは、米国のTalent Tech Labs(以下、TTL)が2022年5月に公表した「タレントマネジメントエコシステム 1」(以下、タレントマネジメントテクノロジーマップ)を基にタレントマネジメントテクノロジーの一部を解説する。
タレントマネジメントテクノロジーマップでは、サービスを下記の19の領域に分けて整理している。従業員の活躍や貢献を認めるレコグニション、福利厚生制度の利用促進、従業員のパフォーマンスや報酬の管理、身体的・経済的・行動的なウェルビーイングの向上、学習管理など、多様なテクノロジーを網羅し、代表的な事業者として計245社を取り上げている。
連載では、下記の3つのステージ・19領域の中から8つのサービス領域(朱字)の概要と、主要なサービス事業者、製品サービスの特徴、ビジネスモデルを紹介する。

ステージ サービス領域
エンゲージメント オンボーディング(Onboarding)
従業員リスニング(Employee Listening)
社内SNS(Internal Social Networks)
社員割引マーケットプレイス(Perks Marketplaces)
報酬&称賛(Rewards & Recognition)
福利厚生ポータル(Benefit Portals)
行動的ウェルビーイング(Behavioral Wellbeing)
身体的ウェルビーイング(Physical Wellbeing)
経済的ウェルビーイング(Financial Wellbeing)
評価・測定 労働需要&要員計画(Demand & Workforce Planning)
労働力ベンチマーキング&アナリティクス(Workforce Benchmarking & Analytics)
ペイエクイティ&インセンティブ報酬管理(Pay Equity & Incentive Pay Management)
従業員の生産性向上(Employee Productivity)
従業員のパフォーマンス測定(Employee Performance Measurement)
育成 キャリア開発&後継者育成計画(Career Development & Succession Planning)
社内タレントマーケットプレイス(Internal Talent Marketplace)
自律的学習(Self-Directed Learning)
学習管理システム(LMS-Learning Management Systems)
学習体験プラットフォーム(LXP-Learning Experience Platforms)

採用領域のテクノロジーの調査を専門としてきたTTLが2022年に初めてタレントマネジメントテクノロジーマップを発表した背景には、人手不足による採用難と従業員の離職の増加がある。米国の労働市場は逼迫しており、企業にとって人材のマネジメントと定着が課題となっている。多くの米国企業では、「いかに従業員に新たなスキルを身につけさせて、社内で長く活躍してもらえるか」という意識が高まっている。

図 タレントマネジメントテクノロジーマップ(2022)

タレントマネジメントテクノロジーマップ(2022)

出所:TTL "Talent Management Ecosystem 1" 2022.5を基に作成(2023.11)

タレントマネジメントテクノロジーマップでは、19領域を「トータルリワード」「従業員ウェルネス」「従業員エンゲージメント&体験」「ピープルアナリティクス」「パフォーマンス管理」「社内モビリティ」「学習&育成」の7つに大別(7色で表現)している。

横軸は、1)エンゲージメント(従業員のウェルビーイングや意欲の向上)、2)評価・測定(従業員のパフォーマンス・報酬・テレワークの管理、従業員データの測定など)、3)育成(従業員のキャリア形成やスキル向上の促進)の3つのステージがある。

タレントマネジメントテクノロジーのマーケットは、新しい専門サービスが次々に登場し、急速に変化している。現時点でどのようなテクノロジーが存在し、どのように企業の課題解決をサポートしているのかを解説する。

グローバルセンター
杉田真樹(リサーチャー)