対談タイトル
未来予測ロゴ   海外での道路づくりも積極的に推進
     
大久保  

次に、これからのお話を伺いましょう。御社は、「『つなぐ』価値を創造」という2020年に向けたビジョンを定めています。これに関連した課題を教えていただけませんか。

 

萩原  

技術の高度化とコストの低減、イノベーション・マインドの醸成、新たな事業への進出、という3つの経営課題があります。そこに向かって、どんな人材を採用し、どこに投入していくか、技術やモチベーションをどう高めていくか、というのが人事課題です。

 

大久保  

最初の2つの課題をクリアするには、人材育成が欠かせませんね。

 

萩原  

その通りです。まずはしっかりとした技術力を持ち、高速道路の建設管理の経験を積んだ先にこそ、イノベーションがあると考えています。ですから、とくに入社後数年間に、道路の建設から管理まで意識的にローテーションさせ、そうしたさまざまな職場において、先輩から技術を引き継ぐことを重視しているのです。もちろん、専門性を高める研修も大切で、つい最近、人材育成の基本プログラムをつくりました。

 

大久保  

イノベーションを大切にしている会社ほど、ジョブ・ローテーションに力を入れています。物事を複数の視点から見ることがイノベーションにつながりやすいからでしょう。一方、専門性の深掘りも大切で、御社のやり方は理にかなっています。

 

萩原  

専門性にも2つあります。1つは論文になるような学術的なもの、もう1つは現場に精通した実務的なもの。若いうちからその2つをバランスよく高めていく必要があります。

 

大久保  

先ほどの、3つ目に話された新たな事業というのは海外進出ですか。

 

萩原  

はい。道路公団時代も国際協力機構(JICA)などを通じ、事業ではなく協力という形で、新興国などにおける道路建設や管理に従事していました。2年前にインドに当社の事務所を設けましたが、今後は単独ではなく、ほかの高速道路会社と手を組んだオールジャパンという形での進出が増えるでしょう。5社で共同出資して、そのための株式会社も立ち上げました。先方からも非常に期待されています。設計から建設、管理、有料高速道路の運営や災害復旧のノウハウ。それぞれ個別にできる会社はありますが、すべてをパッケージで請け負うことができる組織が世界にはあまりないのです。ここに、私たちの優位性があるのだと思います。

 

大久保  

どんな人たちを海外に派遣させるのでしょう。

 

萩原  

海外への進出で期待されていることは、日本の最高水準の技術、ノウハウを海外でも展開することです。ですから、日本で育成したトップの技術力を持つ人材、あるいは高速道路の管理能力の高い人材を海外に出していかなければなりません。

 

大久保  

道路をつくるだけでなく、技術や技能の伝承まで行うと現地の人からもっと喜ばれるでしょうね。

 

萩原  

既に、インドやスリランカおいては、土木技術を学びたいという人を日本に招くこともしています。これからは海外への貢献という意味で、事業と絡めながら技術移転や教育も積極的に進めたいと思っています。

     
未来予測ロゴ   どんな社員にも必要な専門性とリーダーシップ
     
大久保  

そのほかに中長期的な課題があったら教えてください。

 

萩原  

今後は、2種類の人材の育成に力を入れていきます。1つは、将来の経営を担う管理職層です。もっと分厚く、重層的にそろえたい、と思っています。もう1つは、高度の専門性を持った人材です。育成が難しいのは後者で、最初から領域を絞って育てては駄目でしょう。管理職も含めた多様な経験をさせてから、ある時点で腹を決めさせるようにしなければ、と思っています。

 

大久保  

同じような問題でさまざまな企業から相談を受けることが多いのですが、もうスペシャリストかゼネラリストか、という議論は古びていると思います。すべての人は何らかの領域でプロを目指さなければならない。エンジニアだってリーダーシップがなければ成果をあげられないわけですから。その人なりの専門性とリーダーシップ、この2つはどんな人にも必須だと思います。

 

萩原  

おっしゃる通りです。道路公団時代は、予算要求をはじめ、関係省庁への説明などが重要でしたので、特に深い専門性がなくても、何でも知っていて、話術などのコミュニケーション力に長けた人がゼネラリストとして評価され、出世の階段を上っていきました。でも、そういう能力だけの人はもういりません。

 

大久保  

1980年代に、日本企業は軒並み大失敗をしました。中高年の処遇に困り、マネジメントには向かない人を専門職とみなし、処遇する制度を特別につくったのですが、みごとに機能しませんでした。最近はプロフェッショナルという言葉が使われ、同じような議論が起こっていますが、ラインから外れた人に、プロフェッショナルたれ、と連呼するだけでは、昔と同じ轍を踏んでしまうと思います。

(TEXT/荻野 進介 PHOTO/刑部 友康)

 

     
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