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人事は戦略実現のパートナーである。このことはミシガン大学のデイビッド・ウルリッチ教授をはじめとして、人事の重要な役割の1つとして広く知られている(Ulrich, 1997)。人事が経営戦略の策定へ積極的に関与し、部門を超えたコミュニケーションの促進や外部資源活用によるイノベーションの喚起、そして、アウトソーシングによる社内リソースの最適化など、社員のパフォーマンスを最大限発揮してもらうために、人事が主体的に経営や組織体制の構築に関わっていくことが求められる。
「Works 人材マネジメント調査2015」の結果を分析すると、人事が戦略実現のパートナーとして活躍できているかどうかが、新卒や中途採用の成果に大きな影響を及ぼすことが読み取れた。
調査では、人事の経営への関わり方について、4つのアプローチで質問をしている。

経営戦略への関与:人事が組織改革の推進者として影響力を発揮し、中期経営計画の策定に主体者として関わっているかどうか
外部資源の積極活用:オープンイノベーションや新事業を展開するためにM&Aを志向するなど、積極的に外部資源を取り込む方針を持っているか
部門横断:事業横断的な交流や部門横断的なプロジェクトが多いか
アウトソーシング:給与計算などの管理部門は極力、社内に置かない方針を持っているか

これらのアプローチが、どのように新卒採用者や中途採用者の定着と評価に影響を与えるのかについて、パス分析を行った。分析の結果は、下図にまとめられている。

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図 人事の経営への関わり方が採用の成果に及ぼす影響

はじめに、採用評価をみてみよう。人事が経営戦略の策定に大きく関与して、外部資源を積極的に活用している企業は、新卒も中途も採用の評価が統計的に有意に高いことが見て取れる。人事が経営のパートナーの役割を果たし、外部から経営戦略実現のために必要な人材を獲得することに前向きなことが、採用活動の精度を高め、優秀な人材獲得に大きく貢献すると推察される。また、新卒採用の評価については、部門横断的な関わり方も有意な影響力を持っていた。新卒採用では、ニーズのヒアリングや面接官の調整など、関係者が全社規模に及ぶため、横断的な関わり方ができているかどうかが関係してくると考えられる。
定着に関しては、新卒採用の定着には外部資源の積極活用が、中途採用の定着には人事の経営戦略への関与が有意に影響を与えていることが読み取れる。外部資源を積極活用する企業は、大学との共同研究やM&Aによるビジネス拡大を通して外部の知見を活用することにノウハウを持ち、若手のうちから外部組織との共同プロジェクトなど、挑戦できる環境や成長機会に恵まれていることが、新卒の定着を促していると推測される。その反面、外部との接点の多さや成長機会に恵まれていることが、中途採用者にとっては新たな環境で挑戦することのハードルを下げ、人材の流動性を高めているために、中途採用の定着とは有意な関係性を見出すことができなかったと考えられる。

また、中途採用の定着においては、人事が経営の意図を把握し、経営戦略との整合性を確認していることで、中途採用者と長期的ビジョンを共有することができ、中途採用者の定着を促すのではないかと考えられる。

【まとめ】
採用を成功させるためには、人事は戦略パートナーとして、3つのアプローチによって、経営との関係性を深め、外部資源を積極的に活用し、部門横断的な活動を促進していく志向性を持つことが鍵となる。

参考文献
Ulrich, D. (1997). Human Resource Champions: The next agenda for adding value and delivery results. Boston: Harvard Business School Press.

2017年01月30日