リクルーティングの未来 ~グローバル人事 最前線~ 毎月更新 全21回

Vol.8 グローバル企業の採用戦略 - ロールス・ロイスの場合

グローバル・リソーシング・サービス部門長 ジェフ・ラッキー氏 (Jeff Lackey)

【企業プロフィール】
民間航空・防衛航空・船舶・エネルギーの各市場向けエンジンおよび動力ソリューションの製造・販売・サービスを全世界で展開するグローバル企業グループ。本社は英国ロンドン。全世界の従業員数は約4万人。主な内訳は、米国1万人、欧州2万5000人、その他アジア、中東、一部アフリカに広がる。

「GPOCモデル」導入で事業部門と密接につながる

グローバル・リソーシング・サービス部門は、経験者・未経験者・臨時採用などのリクルーティングサービスのすべてを1つの部門に集約したロールス・ロイスとしては初の組織です。これは採用に限らず、社内の全分野・全機能もグローバル軸の組織へと変更されました。

この部門が目指しているのは、統合された人事部門として優れたリーダーシップを発揮し、俊敏で人材市場にうまくアクセスできるような組織になることです。

また、各現場マネジャーと候補者がともに採用プロセスをしっかり踏めるようにすることが大事ですし、そのためにも、各事業部門の指導部と密接に連携していくことが不可欠です。

そこで、GPOC(Global Point of Contact)というグローバル窓口を導入しました。

GPOCの動きは横断的で、会社全体の事業方針を軸に行動します。地域窓口が地域の業者や人材、予算を担当するのに対し、GPOCは人材採用を依頼してきた部門と直接やり取りを行い、リクルーティングサービスがきちんと提供されるように責任を持って事業部門の指導者と連携します。

これらの活動によって、事業展開にうまく対応する役割や能力は伸びてきたと感じています。

実際、英国では、社内のリーダーたちと連携して戦略的な計画立案を実施することができたおかげで、それまで40~50%あった人材紹介エージェンシーの利用率を15%まで下げることに成功しました。キャンペーンをこれまでよりも効果的に行うことができ、メディアプランニングやソーシングもうまくいった成果だと思います。

今後は、単に求人案内をするのではなく、TaleoのようなATSを活用したりシステムを構築しながら、経営情報やビジネス情報などと密接に結びついた採用マーケティングやマネジメントに重点が置かれるようになると思います。理想はラインマネジャーと連携を深め、オンボーディングの効率を高めることで、従業員が短期間で能力発揮できるようになることです。

地域ごとの市場課題に対する工夫と、基準の明確化が必要

グローバルを軸として、現在多くの変革を行っている最中ですが、地域ごとの市場課題も浮き彫りになってきました。

たとえば中国やインドでは、オファーに対する辞退率が25~50%と高く、オファー通知者1名に対して1~3名の候補者を確保しなければなりません。

また、アンゴラやナイジェリアでは、企業としての存在を確立する必要があったうえに、雇用に関する文化がまったく異なるため、15~30名の採用人数に対してかなりの労力と時間をリクルーティングに注がなければいけない事態になりました。

新興国での採用や、ニッチ的な地域での採用について、もっと工夫が必要だと考えています。

一方で、候補者向けサービスやリクルーティングの手法、委託業者などとの付き合い方など基本的な基盤を確立し、基準レベルのサポート体制をしっかり構築することが大切です。それをベースにして現地のリクルーターが育ち、私たちはそれを支援するという体制にしていかなければなりません。

「post and pray(求人を出して祈るように待つ)」だけから、積極的な「referral(縁故)」へと転換

リクルーティングの手法や戦略についても、大きく変化してきています。

以前は、求人広告を出して祈るように待つ「post and pray」といったアプローチが主で、求人サイトに広告を出して応募者が来るのをひたすら待つという形でした。

しかし現在、社内の進んだチームでは従業員による人材紹介制度ともいえる「employee referral program」というネットワークや、ソーシャルネットワーキングサービスを積極的に活用しています。

サプライチェーンのプロフェッショナルを短期間に大量採用する必要に迫られた際も、マルチメディア、インタラクティブメディア、ラジオ・新聞・雑誌広告、大規模な電子メールの定期的な配信などを駆使したことによって、一時は会社から「雇いすぎ。ペースダウンするように」という指示が出たほど成果を挙げました。

しかし、これらの成功の秘訣は、テクノロジーやキャンペーンにあるのではなく、「バスに乗せるべき人をバスに乗せ、降ろすべき人を降ろし、乗っている人たちをそれぞれ適した座席に座らせる」という簡単な原則に従うことにあります。

当社では、「リソース・アンド・ディベロップメント」というタレントマネジメント組織に、社内の複数のセクターや部門を担当する上級能力コンサルタントがいて、各ビジネスでどのような能力計画が求められており、それはリソーシングやディベロップメントにとって何を意味するのか、また社内の従業員を育成すべきか社外から採用すべきかなどの分析を行います。そういう存在も、大きく貢献していると思います。

リクルーターには、より高度で専門的な知識や経験が求められる

市場の変動が激しい業界なので、一気に採用を行う時期もあれば減速する時期もあります。減速時期に、どう人材とつながり、関心を持ち続けてもらうかということは1つの課題です。

また、グローバルに事業を展開して複数の事業分野を持つ大組織のなかで、需要計画の足りない部分を明確化し調整をいかに図ることができるのか、俯瞰的なイメージを得ていくことが重要です。

そういったことのために、テクノロジーツールをいかに活用していくかも、大きな課題になっています。

今後のリクルーターにとって、これまでのような採用プロセスを管理するアドミニストレーターとしての役割だけでなく、より高度で専門的な知識や経験も必要になってくると思います。

市場を理解し自社のビジネスを理解し、それが人材市場でどのような意味を持つのかを解釈できることも大切になります。

さらに、タレントマーケットにどう対応し、いかに関係を構築して維持していくかを学ぶ必要もあるでしょう。

国際化・グローバル化という点では、シニアレベルの人材には豊富な海外経験も求められます。文化やチームを超えてスムーズに動くことができるコミュニケーションも不可欠でしょう。

そんななかで、今後、雇用バブルとその崩壊を経験することは避けられないと思います。そのような状況をいかに乗り切っていくのか、非常にエキサイティングな展開だと思っています。

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